ERP(Enterprise Resource Planning)は、企業の経営リソースを適切に分配し、基幹業務を統合的に管理する仕組みで、部門ごとに分散しがちなデータを一元管理し、業務効率化を図ります。
システム統合には課題も多く、選定や導入に失敗したという事例も後を絶たないため、自社のニーズとERPパッケージの特徴をよく分析して選定にあたることが必要です。今回はERPパッケージの種類や特徴について解説していきます。
ERPパッケージとは
ERPパッケージとは、販売、生産、人事、会計など企業経営に必要なシステムを一括して提供するシステムです。
部門ごとに異なったシステムやデータベースを利用している場合でも、最終的には会計業務へ統合する必要があります。それらを一つのシステムに統合することで、リアルタイムにデータが連携され、企業活動の見える化が図れます。
また、全部門で統一のマスタを参照するなど、統一基盤での運用により、人的コストの削減やデータの不整合を防ぐことができるようになります。
クラウドERPが注目される
ERPといえば、従来は企業内でサーバーを持ち、セキュリティを強化してオンプレミスで運用していくものでした。
近年では、インフラ技術の進化によってクラウド型のERPが主流となってきています。ERPパッケージとインフラ環境をセットで利用するSaaSでは、ユーザーは必要な機能だけを月額課金などで利用することができ、APIにより自社の既存システムと連携させることも可能です。
自社向けにカスタマイズしたい場合は、ミドルウェアもセットで利用可能なPaasや、ハードウェア構成も含めて自由に選択して利用できるIaasなど提供形態はさまざまで、各企業に合った仕組みを選定することが可能になっています。
コロナ禍により、リモートワークが推奨されていることで、インターネット環境があれば利用可能なクラウドERPの需要はますます高まっていくでしょう。
ERPパッケージの機能
ERPパッケージはそれぞれに強みや特徴がありますが、基本的には、生産管理、会計管理、販売管理、品質管理、サービスなど多くのモジュールを保有しそれぞれが連携できるようになっています。
そこから、自社で必要とする機能を選定して利用しますが、代表的な機能について解説します。
生産管理機能
とくに生産管理機能は、製造業にとって重要な役割であり、自社製品を製造する工程だけでなく、需要予測からの生産計画の策定、部材の仕入れ、工順や品質管理までを網羅的に管理します。
仕入れ先ごとのリードタイムを整備し、ERPパッケージに含まれるMRP(資材所要計画)やMRP2(製造資源計画)機能を使うことで、納期や在庫数などを計画的に管理することができるようになります。
生産工程の進捗管理や、品質管理もあわせて行うことで、トータルして生産管理業務が効率化されます。
会計管理機能
会計には、自社の業績を把握し評価するための管理会計と、決算などで社外に報告するための財務会計があります。
ERPパッケージでは、この両方を実現することが可能です。
管理会計では、予算と実績からPDCAサイクルを把握していきます。また、原価管理をすることで適切な販売価格の策定や計画の見直しなどを常に判断していくことが可能となるのです。
財務会計としては、試算表、貸借対照表などの財務諸表を定期的に生成して出力し、決算時に利用することができます。
販売管理機能
販売管理は、自社製品やサービスを販売するための計画立案や、生産または発注、受注から出荷、回収までの一連の販売活動を管理します。
リアルタイムに在庫やリソースを把握することで、顧客に対して効率よく納期回答をすることができ、また、顧客によってさまざまな請求タイミングや回収計画を、自動的にERPの会計モジュールと連携して実現します。
CRM(顧客管理・営業支援)を内包するERPパッケージも存在し、販売計画の段階から実績までを管理することができるため、ニーズによっては非常に有効です。
ERPパッケージの種類
ERPパッケージは大きく3種類に分けることができます。企業活動において必要な機能が網羅的に統合されたオールインワンのタイプと、特定の目的に特化したタイプ、もしくは必要な機能だけを選定して組み合わせるタイプなどです。
導入目的や用途、予算などによって、自社で必要なタイプを選定することができます。
完全統合型
全部門で共通のデータを一元管理し有効活用していくことができる完全統合型は、ERPと聞いてイメージするシステムに近いものではないでしょうか。
全体最適化を目指し、サプライチェーンマネジメントを目指すのであればこのタイプを選定することをおすすめします。
導入コストは大きくなるため、経営層や利用部門が共通の認識を持って導入を検討することが必要となります。
コンポーネント型
最初から全体統合までを目指すのではなく、必要な機能だけを選定して利用を開始することができるコンポーネント型は、柔軟性が高くスタートしやすいERPです。
最終的にはすべての業務に適用していくこともできるため、予算やプロジェクト体制によっては、拡張できる前提でのスモールスタートが有効なこともあるでしょう。
その場合、ある程度先を見据えてマスタ整備などを行っていくことが失敗しないためのポイントとなります。
業務ソフト型
会計管理、生産管理など、特定の機能だけを選んで導入したい場合は業務ソフト型のERPを選定します。導入期間が短く、プロジェクト体制も小さく済むでしょう。
ERPの一部を切り取ったような形になり、拡張性のないコンポーネント型のようにも見えますが、比較すると低価格で、特定業務の効率化は図れるため、小規模企業やあまり多くの予算を想定していない場合には適しています。
ERPパッケージ導入のメリット
導入には時間とお金がかかると思われがちなERPパッケージですが、クラウド化が進みサービス化されてきている現在ではそれほどハードルの高いものではありません。
ERP導入によるメリットをシミュレーションし、自社での導入を検討していきましょう。
情報の一元管理
ERPパッケージ導入のメリットは、なんといっても情報の一元管理です。各部門や営業所などでそれぞれが管理していた情報を、会計システムに取り込むために統一フォーマットに変換していたような場合、二重処理が行われていたり、ミスが発生したりすることもあるでしょう。
業務データが会計に自動連係されることで、業務効率が大きく高まり、データの整合性も保たれるようになります。
リアルタイム情報共有
リアルタイムに情報共有ができることも、ERPパッケージ導入のメリットです。他部門や離れた拠点で、同じ製品やサービスのデータベースを別々に管理している場合、生産部門には販売計画がわからず、営業部門ではいつ在庫が入ってくるのかわからないということも多々あります。
ERPによって統合されたデータをどこからでも参照することができ、自部門ではなく会社全体としての動きが見えるようになります。
結果的に、迅速な経営判断にも大きく役立つのです。
内部統制の促進
J-SOX法の施行により、企業の透明性が求められるようになってきています。企業内のデータが一元管理されることにより、企業の経営状況が透明化され、ミスや不正が起きにくくなることから、ERPは内部統制のツールとしても有効です。
部門ごとに異なるシステムを利用し、最後に会計システムへの連携を行っているような場合、監査対応にも多くの時間や費用がかかるため、コスト削減にも役立ちます。
まとめ
ERPパッケージの機能や種類について解説しました。統一されたデータ基盤で、企業の重要なリソースである業務データを管理し共有していくことはビジネスにとってとても有効的だといえます。
CRMやSFA、マーケティングなど機能ごとにアプリケーション化されたMicrosoft Dynamics 365は、フィールドサービスまでを含めて業務システムを幅広い領域でカバーするクラウド型ERPパッケージです。
各アプリケーション間のデータ連携も容易で、Microsoft365とも連携できるため、既にMicrosoftアカウントを所有している企業ユーザーでは、導入のハードルが低いため、導入を検討してみてはいかがでしょうか。