ERP

企業はERPをクラウド化するべきなのか。2つの種類を同時に理解。

皆さんの会社ではERP(Enterprise Resource Planning)が稼働しているでしょうか?ちなみにERPとは、基幹系システムを複数統合した大規模なシステム製品であり、企業全体の情報活用を促進するためのソフトウェアの総称です。昨今ではこのERPをクラウド化することに注目している企業が多く、多くの企業では自社にとって最適な“クラウドERP”とは何か?を模索してます。

そもそも、企業はERPをクラウド化すべきなのでしょうか?クラウドERPへ移行することで、どのようなメリットがあるのか?本稿ではその点についてお話します。

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クラウドERPってなに?

クラウドERPは文字通り「クラウド・コンピューティング上で提供されるERP」のことです。ちなみにクラウド・コンピューティングとはインターネット経由で提供されるサービスの総称であり、サービスに種類によってIaaS・PaaS・SaaSという分類があります。

IaaSはシステム構築に欠かせないインフラ(CPU・メモリ・ストレージなど)を提供するもので、PaaSはIaaS上にOSやミドルウェアなどの開発環境を整えています。そしてSaaSは、ソフトウェアそのものをインターネット経由で提供するものです。

  • IaaS→Infrastructure as a Service(サービスとしてのインフラストラクチャー)
  • PaaS→Platform as a Service(サービスとしてのプラットフォーム)
  • SaaS→Software as a Service(サービスとしてのソフトウェア)

本来、システム構築に必要なインフラやプラットフォーム、ソフトウェアは社内ネットワークに導入するものでした。これを「サービスとして」提供しているのがクラウド・コンピューティングというわけです。

2つのタイプのクラウドERP

ただし、クラウドERPが単純に基幹系システムの集合体をインターネット経由で提供しているサービス化といえば、そうではありません。海外ではSaaSで提供されるクラウドERPを利用するのが一般的ですが、日本では2つのタイプのクラウドERPが存在します。

タイプ① SaaS型

海外で主流になっているSaaS型のクラウドERPです。米ガートナーで提唱されている「オフプレミス(構外)で稼働し、サービスとして提供されるもの」の定義に該当しています。月額課金が基本であり、ユーザー1人あたり毎月いくらというサブスクリプションや従量課金で利用するのが一般的です。

タイプ② IaaS、PaaS型

そしてもう1つのタイプが、従来オンプレミスで運用してきたERPのインフラ部分だけをクラウド化し、プライベート・クラウドのように稼働するクラウドERPです。IaaSやPaaSを利用してERP稼働に必要な環境を整えて、その上にソフトウェアをインストールします。使用するリソースやその時間による従量課金制が多く、単純なユーザー数でコストが変動することはありません。

それぞれのメリットとデメリットを簡単に説明すると、タイプ①のSaaS型ではコストを最小限に抑えることができるものの、カスタマイズ性が低く業務要件に合わせることが難しくなります。もちろんDynamics 365などは、そのような欠点はありません。それに対してタイプ②では、カスタマイズ性が高く業務要件に合わせることが簡単な反面、IaaSまたはPaaSの利用コストとERPのライセンスコストなどがかかり、高コスト化とコスト構成の複雑化といったデメリットがあります。また、運用自体を自社で行う必要があることも大きな負担となるでしょう。

どちらも一長一短あるので環境ごとに最適なクラウドERPを構築することが重要です。一般的には、タイプ①は中小企業での採用が多く、タイプ②は中堅企業・大企業で採用されることが多いと考えられますが、現在はタイプ①のSaaS型でも大企業やグローバル企業での採用が加速しています。

クラウドERPのメリット

企業がERPをクラウドに移行するべきか否か?という問題の答えを見つけるためには、まずクラウドERPのメリットを知ることが大切です。そのメリットの共感し、利用価値が高いと感じればERPのクラウド移行で得られる効果が大きいと考えられます。

1.いつでも好きな時にシステムを利用できる

インターネット経由で提供されるクラウドERPは、他のインターネット・サービス同様に外出先や異なるデバイスからでも同じように利用することができます。たとえばOutlook.comやGmailなどのWebメールサービスは、ログイン画面にてアカウントIDとパスワードを入力すればいつも同じ環境にアクセスできます。クラウドERPもこれと同様に、アカウントIDとパスワードによって利用する環境を選択できるため、システム利活用の幅が大きく広がるでしょう。

2.環境によってセキュリティが強化される

タイプ①のクラウドERPでもタイプ②のクラウドERPでも、システムの基盤となる部分はクラウド・ベンダーが運用しています。従ってクラウド・ベンダーのセキュリティ環境に依存することになり、これがかえってセキュリティ強化に繋がるケースが意外と多いのです。特に、社内で特別なセキュリティ対策を講じていないという場合は、クラウドERPを採用することでセキュリティが強化されます。

3.従来よりも安いコストで運用できる

オンプレミスで運用しているERPの場合、インフラの監視やパフォーマンスのチェック、必要に応じて障害への対処等を行わなければいけません。そこには多額の人件費が投じられていますし、インフラを稼働し続けるための電気代等もかかります。一方で、クラウドERPではインフラ運用をクラウド・ベンダーが行いますし、企業はERPの構成管理やアカウント管理だけに集中すればよいため、従来よりも安いコストで運用できるというメリットがあります。

4.アップデート状況が気にならない

ERPを運用するにあたって重要なポイントが「常に最新の状態を維持すること」です。ベンダーが提供するアップデートへ迅速に対応し、新しい機能やプログラムの改善、セキュリティ更新を受けることができます。しかし、このアップデートに対してタイムリーに対応できない企業も多く、それ故にたくさんの問題を抱えていました。クラウドERP(タイプ①)では、インフラもソフトウェアもすべてクラウド・ベンダーが運用しているため、アップデート状況を気にすることなく、常に最新の状態が保たれます。一見些細なことですが、情報セキュリティ担当者にとって大きなストレスを軽減することになるでしょう。

5.拡張運性が高くビジネスの成長や衰退に合わせられる

タイプ①のクラウドERPの場合、必要な規模に合わせたサブスクリプションを取得したり、プランを変更したり、カスタマイズ性は低くても多様な環境に合わせられるというメリットがあります。また、サブスクリプションやプランは月単位で自由に変更できるというクラウドERPが多いため、ビジネスの成長や衰退に合わせて常に最適なサービスを利用し、コストの適正化を図ることも可能です。

時代は徐々にクラウドERPへ!けれども慎重性を持って

ITR Market View:ERP市場2019によれば、SaaS型のクラウドERP市場は2017年度に前年度比38.7%増という成長を遂げており、2018年度においても同様の水準で成長する見込みです。更に、2022年度にはSaaS型のクラウドERP市場が、ERP市場全体の半数近くに達すると予測されています。

時代はクラウドERPへ流れつつあると言えますが、慎重性を欠いてはいけません。自社環境にとって本当に必要なシステムとは何か?を十分に検討した上で、最適なERPの形を見つけることが大切です。

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