原価管理は経営活動においてとても重要な管理項目の1つですが、徹底して管理できている企業はそう多くありません。
そもそも原価管理とはなんでしょうか?
財務省の定義によれば、原価管理とは次のような目的を持っています。
「原価管理とは、原価の標準を設定してこれを指示し、原価の実際の発生額を計算記録し、これを標準と比較して、その差異の原因を分析し、これに関する資料を経営管理者に報告し、原価能率を増進する措置を講ずることをいう」
具体的に説明すると製品1個を製造するためにかかる原価や、サービス提供にかかる原価の標準(標準原価)を設定します。これと実際に発生した原価を比較してその差異での原因を分析し、適正な原価金額を算出すると共に、原価能率を向上するための対策を取ることです。
本稿ではこの原価について、分かりやすく解説します。
原価管理はなぜ必要なのか?
日本経済が好調だった(ように見えた)1980年代から1990年代にかけて、原価管理を重視する企業は多くありませんでした。しかしバブルが崩壊し、利益確保のためのコスト削減が重視されるようになってから、原価管理へ真剣に取り組む企業が増えたのです。
原価管理を行う理由をもっとシンプルに考えると「利益を向上するため」です。一つ一つの商品やサービスの原価を正確に把握し、それに応じた価格設定を行うことで、利益率を確保することができますし、原価を低減することは売上を増加させることよりもはるかに高い利益を生みます。
たとえば年間100億円の売上高と、利益率3%の企業があります。この場合、会社にとっての純利益は3億円ですので、②販売量の増加によって売上高を10%と拡大すると、売上高は110億円になり純利益は3,000万円アップします。
次に売上高が拡大するのではなく、原価が10%低減すると純利益はどうなるか考えてみましょう。100億円の売上高は変わらなくても純利益は12億7,000万円になり、なんと9億7,000万円も増加します。
同じ10%の努力でも売上増加よりも原価低減の方が、より多くの利益を創出できるのです。
原価管理のもう1つの役割は「リスクマネジメント」です。原価とは常に一定のものではなく、製造業においては原材料や部費の仕入れ価格が様々な要因で変動するため、原価も常に揺れ動いています。海外から輸入している場合では為替の変動によってさらに原価の変動は激しくなるでしょう。
もしも原材料や部品の仕入れにおいて価格高騰などが起きれば、原価が上がり利益が下がります。それでも従業員の給与や設備費等は変わらないので、企業収益を圧迫する原因になります。
原価管理はこうした原価変動のリスクを予測して、それに応じた別のプランを用意しておくことも大切な役割の1つです。
原価管理と原価計算の違い
よく混同される原価管理と原価計算には明確な違いがあります。簡単に説明すると、原価計算とは製造原価や販売原価等を計算するためのツールであり、これを用いて原価を適正管理するための手法が原価管理です。
もっと見る:原価計算って何?その目的と種類について
そもそも原価とはなにか?
さらに掘り下げて「原価とはなにか?」について説明します。製造業の場合、原価には「仕入原価」と「製造原価」という2つの原価があります。仕入原価とは製造に必要な原材料や部品を仕入れるためにかかる費用のことです。原材料や部品ごとにかかる費用はもちろん、輸送費なども含みます。
一方製造原価とは、商品を製造するためにかかった労務費や設備費などが該当します。製品1個あたりの原価はこれらの原価を集計し、製造した商品総数で割ることで算出できます。
原価管理システムに求められるもの
原価管理は計算式が複雑なためExcel台帳で管理するには難易度が高すぎます。そのため、どんぶり勘定になってしまいがちで正しい原価把握が難しいでしょう。これを情報システムの力で実現するのが「原価管理システム」です。原価管理や原価計算に必要な機能を備えることで、効率的かつ正確な原価把握が行えます。
そんな原価管理システムにとって欠かせない要件が「基幹系システムとの連携」です。基幹系システムと連携することで正確なデータ把握を行い、適正原価の維持ができます。たとえば原価管理システムと調達管理システム間で連携が取れていると、仕入れデータを自動で反映できるため、正確な仕入れ原価を算出することができます。
人事管理システム、生産管理システム、調達管理システムといった基幹系システムと連携することでも、製造原価や仕入原価を正確に把握することが可能です。原価管理システムには何よりも正確なデータの把握が必要であり、そのデータをもとに標準原価を設定し、実際の原価を計算・記録していきます。そうして適正原価を維持したり、原価低減を実現するための施策を考えていくのです。
原価管理システムを単独で導入した場合、基幹系システムとの連携が難しくなります。APIを使ってデータ連携を行ったり、独自のカスタマイズを加えるアドオン開発によってシステム改修が必要になり、運用管理においても問題が発生する可能性があります。こうした課題を解決するための提供されているシステム製品がERP(Enterprise Resource Planning)です。
ERP(Enterprise Resource Planning)とは
ERPは日本語で「企業資源の計画を立てる」という意味で、もともとは企業全体のヒト・モノ・カネ・情報といった経営要素を統合的に管理し、各要素での最適化を図りながら経営全体をコントロールするという概念や手法を指します。1980年代に流行したMRP(Material Resource Planning:資材所要量計画)から発展しました。
こうした経営手法の実現をサポートするのがシステムとしてのERPです。具体的には基幹系システムと情報系システムを統合することで、各システム間でシームレスなデータの受け渡しを行い、かつすべての情報は単一データベースで管理されます。
これがどういうことかというと、従来は原価管理を行うために各基幹系システムから必要な情報を抜き出し、統合できるようにフォーマットを統一してから原価管理システムに転記していました。しかしこうした環境では、原価管理に多くの手間があり正確な原価計算も難しい状況です。
ERPがある環境では各基幹系システムで生成されたデータはすべて単一データベースで管理されるので、原価管理システムはその情報を抜き出すことで自動的に原価計算が行えます。そのため原価管理の手間が多く省け、かつ正確な計算ができます。
このため原価管理が促進し、原価維持や原価低減に効率良く務めることができ企業の利益創出に大きく貢献するのです。
マイクロソフトのDynamics 365
マイクロソフトが提供するDynamics 365はクラウドERPといって、ERP構築のために特別なインフラを構築する必要はありません。Dynamics 365を利用するにはサービス使用端末とインターネット環境さえあればよいのです。そのため情報システム部門が不在の企業でもERPを運用できるというメリットがあります。
さらに、Office 365やWindows 10といったマイクロソフト社製品とシームレスに連携するため、業務効率を大幅に高めることができます。もちろん原価管理および原価計算可能です。原価管理のためにERP導入を検討の際は、ぜひDynamics 365をご検討ください。