ERP(エンタープライズリソースプランニング)は、基幹系業務システムを統合的に導入し、相互連携の取れたシステム環境を導入するためのシステムです。全社的な業務最適化、経営資源の一元管理など様々な導入効果を持ちます。
近年ではクラウドサービスとしてのERP市場も活発化したことで、中小企業でのERP導入が拡大しました。今では、統合的なシステム環境を導入することは企業規模を問わず重要な経営課題となっています。
まだERP導入を行っていない企業には2つのパターンがあります。一つはそもそもERPを必要としていないパターンを。そしてもう一つは、ERPの全体像をまだ掴めていなかったりERP選定方法が曖昧なために導入に踏み切れないパターンです。
今回は後者のパターンに該当する企業に対し、ERPの基本機能を解説しつつその全体像を紹介していきたいと思います。Microsoftが提供する新しいクラウドサービス「Dynamics 365」についても紹介していくので、ぜひご注目ください。
ERPが持つ基本機能
ここで紹介するERPの基本機能は営業支援、販売管理、生産管理、会計管理、人事管理、マーケティングの6つです。それ以外にも多くのERPが特長的な機能を取り揃えていますが、まずは基本的な部分に関して、それぞれのどのような特徴があるのかを確認していきましょう。
営業支援
SFA(セールスフォースオートメーション)とも呼ばれる営業支援は、営業活動の効率化と商談管理など活動を支援する機能が盛り込まれたシステムです。顧客情報管理、商談管理、レポート管理など様々な機能で日々の営業活動を支援し、効率的にセールスを行っていくためのツールを提供します。
よく顧客管理システム(CRM)と同一視されますが、実はしっかりとした区別があり、ERPでは顧客管理システムがカバーされている製品は多くありません。従って、ERPを導入しつつ顧客管理システムを導入するケースが大半です。
販売管理
仕入れから出荷、さらに在庫管理まで商品の流れを管理するのが販売管理です。ERPの販売管理で着目すべき点は、自社のビジネスモデルに最適な販売管理を提供しているかを判断することです。
一口に販売と言っても企業によってそのプロセスは変わります。顧客からの要望により、柔軟な出荷対応を行っている企業も多いでしょう。そんな場合、ERPによりシステム化することで従来の柔軟性を失ってしまうケースがあります。
従って、「如何に既存業務を変更せずに導入できるか?」を考慮することが重要です。
生産管理
製造業の場合必要になるのが生産管理であり、ERPによってはサポートされていない可能性もあるので注意が必要です。反対に製造プロセスを持たない企業では、生産管理が省略可されたERPを選ぶといいでしょう。
または、将来的な新規事業を見込んで生産管理モジュールを組み込めるようなERPを選ぶのも一つの選択方法です。
会計管理
財務会計、管理会計など経営上重要な経理業務機能を提供します。会計管理で重要なのは使いやすいインターフェースが提供され、仕分けの自動化などの機能がサポートされているかどうかです。
入力作業が多い会計管理では、如何にその作業を効率化するかが業務最適化の鍵となります。
人事管理
人事管理で重要なのは社内リソースをわかりやすく可視化できるかどうかです。適材適所や各社員のスキルを上げることで収益性をアップさせていく「タレントマネジメント」を実現するためには、まず社内リソースを細かく可視化できる環境が必要になります。
誰がどの部署で従事しているのかだけでなく、誰がそのようなスキルを持っているかまで管理できるとよいでしょう。
マーケティング
近年多くのERPでサポートされるようになった機能がマーケティングです。主にデジタルマーケティングを中心に、ソーシャルメディア連携やメール配信などの機能が提供されています。
一般消費者の購買行動の大部分がデジタル化したように、企業が決裁に至るまでのプロセスもデジタル化しつつあります。あるソリューションを検討する際、SNSなどで情報収集する企業もいるほどです。
従って、マーケティングや今や統合的なシステム環境に欠かすことのできない機能になりました。
以上がERPの基本機能になります。もちろん、ERPによって提供している機能は多岐に渡るのでこの限りではありません。このため業務課題を整理しつつ自社にとって最適なERPを選ぶことが第一に大切なことです。
Dynamics 365の特徴
2016年11月より提供開始されたMicrosoftの新しいクラウドサービスである「Dynamics 365」は、ERPとCRMを統合しかつブラッシュアップした総合ソリューションです。Microsoftでは従来よりERPの「Dynamics AX」とCRMの「Dynamics CRM」を提供してきましたが、SAPやOracleに並ぶ大手ERPベンダーとしては、ERPとCRMの統合は初となります。
ここでは、Dynamics 365の特徴について紹介しつつ、導入するメリットについても触れていきたいと思います。
フィールドサービスを最適化
Dynamics 365ではERPとして数少ない「フィールドサービス」を提供しています。フィールドサービスとは修理や保全などを目的にした現場作業で、企業が最も顧客と関わる部分でもあります。
フィールドサービスを最適化することは顧客満足度や対応時間の短縮にもつながり効率的な収益性アップが狙えるポイントです。Dynamics 365ではフィールドサービスを最適化する機能が提供され、管理者と現場作業員のコミュニケーを強力にサポートします。
シームレスな営業管理
Dynamics 365が持つ強みはやはり、数あるMicrosoft製品をシームレスに連携が取れる点でしょう。例えば皆さんが普段から使い慣れているOutlookからメール、スケジュール、タスク、連絡先などをDynamics 365の営業レポートに反映させることができます。
また、Dynamics 365上で作成したスケジュールやToDoリストがOutlookに反映されるなど、営業活動の効率化を支援します。
マルチチャネルなカスタマーサポート
カスタマーサポートは企業の信頼性とブランド力を強める上で重要な要素です。そして近年カスタマーサポートに強く求められているのが、マルチチャネル的なサポートでしょう。
メール、Webサイト、チャット、電話など複数のサポートチャネルを統合することで全体最適化を図ることができ、サポート情報を共有することもできるので顧客対応が迅速化します。
ビッグデータを活かした経営戦略
Dynamics 365の各モジュールから生成されるデータをBI(ビジネスインテリジェンス)に取り込めば、ビッグデータ解説も容易になります。Microsoftが提供しているPower BIとシームレスに連携できる点も重要なポイントでしょう。
まとめ
いかがでしょうか?今回ERPの基本機能について紹介しましたが、今後導入したいという企業では、本稿での情報だけでなく様々な情報収集を行い、ERPに対する理解をまずは深めていただきたいと思います。
また、ERPが持つメリットだけでなくデメリットにもしっかりと目を向け、正しい導入検討を行えるよう心がけてください。