ERP

原価計算とERP

企業収益を上げるために取り組みは主に3つあります。①売価の値上げ、②販売量の増加、③原価の低減です。

①の売価の値上げによって収益増加を狙う企業は少ないでしょう。なぜなら売価を値上げすればその分顧客が離れていく可能性があり、有効な打開策には成り得ないからです。多くの企業が取り組むのは恐らく②販売量の増加です。営業力の強化やマーケティングの展開によって販売量を増加すれば、自然と企業収益は上がります。

しかしながら、これらの中で最も収益増加効果が高い施策は③原価の低減です。たとえば年間100億円の売上高で利益率が5%の企業があります。固定費率を40%とします。すると、当初の会社の利益は5億円ですが、②販売量の増加によって売上高を10%と拡大すると、売上高は110億円、原価は100.7億円で、利益は9.3億円となり4.3億円アップします。

次に売上高が拡大するのではなく、原価が10%低減すると利益はどうなるか考えてみましょう。100億円の売上高は変わらなくても、仮に変動費だけが10%低減できるとすると、95億円の原価が89.3億円となり、利益は10.7億万円になり、5.7億円も増加するのです。つまり②販売量の増加と③原価の低減では、同じ10%の努力でもそこに生じる効果は30%以上違うのです。

さらに固定費の低減にも取り組めば、その効果はさらに大きくなるのです。直接的な原価を低減する取り組みよりも営業力強化やマーケティング展開のような間接的な活動の方がより多くの投資を必要とします。これを考慮すれば変動費、固定費両方の原価低減が優先的に取り組むべき課題ということは明白でしょう。

今回ご紹介するのは原価管理ERP(Enterprise Resource Planning)の関係です。原価管理になぜERPが有効なのか?その理由を説明していきます。

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原価管理とは?

原価管理は1962年に財務省(当時の大蔵省)が発表した原価計算基準において、次のように定義されています。

“原価管理とは、原価の標準を設定してこれを指示し、原価の実際の発生額を計算記録し、これを標準と比較して、その差異の原因を分析し、これに関する資料を経営管理者に報告し、原価能率を増進する措置を講ずることをいう。”

要約すると、収益確保のためのボーダーラインである原価基準を設定し、それに応じた販売計画・生産計画・購買計画を立てる。さらに実際に生じた原価と標準原価の差額を記録し、差異分析を講じることで適切な標準原価の設定と原価低減を目指すという意味です。

このことから原価管理には2つの目的があると考えらえます。「標準原価の維持」と「原価の低減」です。

原価とは一つの製品を作ったり、サービスを提供するにあたってかかった材料費や人件費、および販管費などを指します。当然ながら原価が高いほど利益は下がり、原価が低いほど利益は上がります。ただし、原価がどのラインにあれば十分な利益を確保できるのかというのは事業ごとに違います。そのため標準原価を管理し、維持することで原価のボーダーラインを決めるのです。

標準原価から低い原価で製品やサービスを作れれば、収益がアップしたことになります。なので標準原価を維持しつつ原価低減を目指すことこそ原価管理の本質です。

もっと見る:原価計算って何?その目的と種類について

ERPとは?

ERP(Enterprise Resource Planning)は1980年代に製造業で浸透したMRP(Materials Requirements Planning)を流用し、経営資産全体に拡張したものです。

MRPは日本語で「資材所要量計画」をいって、主にBOM(部品表)から生産に必要な部品数や原材料数を割り出し、生産計画に応じた調達を行うことです。様々な情報を統合管理し、適切なタイミングで適切な供給を行うことで生産コストのダウンと生産能力向上を目指します。

このMRPから派生して生まれたのがERPであり、日本語で「企業資源計画」といいます。MERPのように企業が持つ経営資源を統合管理し、それらの情報を適切なタイミングでシステム同士が受け渡すことで業務効率をアップしようという取り組みおよびシステムです。「統合基幹業務システム」とも呼びます。

ERPはいわば部門ごとに分断されていた業務システムに、いくつもののパイプを通すようなものです。営業支援システム、顧客管理システム、在庫管理システム、生産管理システム、購買管理システム、人事管理システムなど経営上不可欠な業務システムがつながり一つのネットワークを形成しています。

それらの業務システムから生まれる情報は一つのデータベースで管理されるため、各業務システムの情報を共有します。そのため営業が在庫管理状況をリアルタイムに確認したり、経理が請求情報をシステムで確認してそのまま請求書を発行するなど、部門と業務システムの垣根を越えた業務形態が可能になります。

たとえばマイクロソフトが提供する「Dynamics 365」は、セールス(営業支援)、カスタマーサービス(顧客管理)、フィールドサービス、タレント(人事管理)、ファイナンス&オペレーション(財務と生産)、リテール(小売管理)、プロジェクトサービスオートメーション(プロジェクト管理)、マーケティングという8つのアプリケーションから構成された統合業務システムです。

各アプリケーションは円滑に連携し、かつクラウドサービスなので導入にあたってインフラ調達を必要としません。

原価管理とERPの関係

なぜ原価管理はERPで行うのが良いのか?その理由はいたって単純で、多くのERPが組織内の情報を一元的に管理するとともに原価管理のために様々な機能を提供し、複雑かつ負担の大きな原価管理業務を効率化できるからです。たとえばDynamics 365では在庫や製造の会計を含めて、原価管理を総合的に管理するための機能が備わっています。

原材料、半完成品、完成品、および進行中の作業資産の評価および会計処理も使用できるため、複雑な製造プロセスを持つ企業であっても適切に原価を管理できるでしょう。

原価管理は一見シンプルな業務ですが、その実かなり複雑なプロセスを持っています。その上極力誤差がないように原価を求めなければならないため、負担も大きいのです。これをExcelを駆使して人手で行うのには限界があるため、ERPのような統合的なシステム環境があることで原価管理は圧倒的に効率化され、さらにすべての業務システムで原価情報を共有することが可能です。

皆さんの会社では原価管理を徹底できているでしょうか?原価はいわば企業の生命線であり、管理によって可能な限り標準原価を維持したり低減することが大切です。モノが売れづらくなりさらに競争が増した現代社会では、いかに原価管理を徹底して利益を創出するかが大切です。この機会に自社の原価管理について見直すとともに、Dynamics 365の導入もぜひ合わせてご検討ください。

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