今回は知っているようで意外と知らない、購買管理の概要や役割についてご紹介します。
日本規格協会(JIS)では購買管理を次のように定義しています。
“生産活動に当たって,外部から適正な品質の資材を必要量だけ,必要な時期までに経済的に調達するための手段の体系。”
「Z 8141 : 2001 生産管理用語」より抜粋
つまり購買管理とは生産管理の一環として、生産に必要な原材料や部品の品質を確認しつつ必要量を必要な期間までに調達するための業務および取り組みを指します。
購買管理の機能とは
JISではさらに購買管理の機能を次の13項目にわけて紹介しています。
- 内外製区分
- 購買計画
- 仕入先開拓と選定
- 取引契約
- 発注管理
- 価格管理
- 原価低減活動
- 納期管理
- 品質管理
- 検収支払管理
- 仕入先管理
- リスク管理
- 購買業務規定の整備
それぞれの内容について解説していきます。
内外製区分
部品というのはその種類によって内製するか外注するかに分かれます。価格や技術、設備に条件によって内外製区分を決定します。
購買計画
生産計画に応じて必要な原材料や部品をどこから、どのくらいの量で、いくらで購入するかを計画します。多数の部品を要する製品に関しては生産計画との調整を密に行って購買計画を立てていきます。
仕入先開拓と選定
原材料や部品は仕入先によって価格や納期、品質が違います。そのため工場見学などを通じて生産のキャパシティーなどを把握し、最適な仕入先の開拓と選定を行います。
取引契約
仕入先と購買に関する取り決めをして契約します。
発注管理
仕入先に発注した原材料や部品の管理をします。主に発注資材の種類や量を確認したり、発注品の追跡を行って購買計画を調整します。
価格管理
購買に関する価格設定から仕入先との折衝などを行います。
原価低減管理
原材料や部品の価格は製品原価に直結する要素です。そのため購買価格を下げて原価を低減させる取り組みが必要です。
納期管理
購買計画に基づいて購入した資材が納期通りに納品されるかを管理します。
品質管理
品質規定にもどついて納入した資材の品質をチェックします。品質に問題がある場合、仕入先に連絡して対処を仰ぎます。
検収支払管理
購入した資材を納入し、検収してから支払いまでの流れを管理します。
仕入先管理
同じ仕入先から継続して資材を購入するために、原材料や部品ごとに仕入先を管理します。
リスク管理
原材料や部品の価格が高騰したり、資材供給がストップするなどの問題に対応すべく対策を立ててリスクを管理します。
購買業務規定の整備
購買部門における業務マニュアルや規定を整備します。
以上が購買管理の主な機能です。これらを作業に落とし込んだのが購買管理の業務であり、生産のQCD(品質、コスト、納期)を維持するために欠かせません。
購買管理はなぜ重要か?
では、生産において購買管理はどういった役割を持つのでしょうか?
少し古いデータになりますが2007年に発行された「中小企業白書」によると、売上原価に占める資材費の割合は52%です。現在もおおむねこの水準をキープしているため、資材原価は売上高の過半数を占めます。では、この資材原価を下げるためには何をすればよいでしょうか?
それは資材原価をできるだけ下げるために仕入先を適切に選定して、最適なコストで資材を調達します。資材は安ければいいというわけではなく、製造するものによって一定の品質が必要です。かといって品質を追求し過ぎるとコストは上がってしまうので、品質とコストのバランスを考慮して最適な仕入先を選定します。仕入先を選ぶのは購買管理の仕事です。
資材費だけで仕入先を判断するのではなく、品質は基準に達しているか、生産能力は足りているか、流通に問題はないかなどを監査することで自社にとって最適な仕入先を決定していきます。
もう一つ購買管理の重要な役割は、サプライチェーンの起点として仕入先を徹底管理してリードタイムを削減することです。
サプライチェーンとは資材の仕入れから製造、販売、出荷までの全体の流れを表す言葉であり、それぞれが鎖のように繋がっています。仕入れに時間がかかればその分顧客に製品が届くまでの期間が長くなりますし、逆に仕入れが早ければ納期を短縮することもできます。購買管理はまさにサプライチェーンの起点です。
しかし、製造・販売・出荷に比べて購買には管理を難しくしている点があります。それは仕入先が関わるという点です。仕入先という他社が加わることで管理は一気に難しくなります。自社が徹底した管理を行っても仕入先の管理がずさんなものなら、納入が遅くなったり発注した資材とは別のものが届いたりと様々なトラブルが発生するでしょう。そのためサプライチェーンにおいて購買管理は非常に重要な役割を持ちます。それは購買管理を徹底できれば仕入れから出荷までのトータルのリードタイムを大きく短縮できるということです。
購買管理システムについて
購買管理を正しく機能させたり、先述した役割を果たすためには購買管理システムの導入が欠かせません。ただし一般的に購買管理システムを単体で稼働することはありません。生産管理システム、在庫管理システム、販売管理システム、財務会計システムと連携しているのが通常であり、これらのシステムを統合した製品もあります。
購買管理システムは主に次のような機能を備えています。
発注機能…仕入先ごとに発注内容を管理したり発注書を発行します
納入管理…仕入先から納入した資材を検品したり、発注と相違ないかを確認します
支払管理…納入を確認してから仕入先への支払い情報を管理します
仕入先管理…仕入先情報を管理したり新しい仕入先を登録します
原価管理…適正原価を維持するために原価情報を管理したり原価の変動リスクを管理します
実際はそれぞれの項目にさらに細かい機能があり、購買管理の業務を支えています。
ERP(統合基幹業務システム)について
購買管理システムはその他システムとの連携が重要なので、各システムを個別に導入するのではなくERPという形で統合環境を構築する方法もあります。ERPには購買管理をはじめ生産管理、在庫管理、販売管理、財務会計、営業支援、顧客管理、人事管理、マーケティングなど様々な業務をカバーするための機能が備わっており、それぞれの領域が連携し合っています。
そのため、二重作業が発生せず組織全体の業務効率化を実現できるのが特徴です。
ERPで購買管理システムを導入する最大のメリットは情報資源の管理です。各領域から生成されたデータは一つのデータベースで管理されるため、組織全体の情報資源を一元管理できます。通常データは各システムに分断しているため、データを活用したい際はデータ収集から加工など様々なプロセスを経由しなくてはならず、リアルタイムなデータ分析が難しいのが現状です。
その点ERPは構造的にデータが一元管理されているので、データ分析などを通じて経営にデータを活かすことができます。これから購買管理システムを導入しようと考えている企業は、ERPの導入もぜひご検討ください。購買管理システム単体では不可能なシステム連携を可能にして、データ分析をもとにした経営活動を支援します。