近年、顧客満足度向上のために保守業務(カスタマーサポート)の改善に取り組むという会社が増えています。
それらの企業の多くはカスタマーサポート機能を備えたCRMやモバイルデバイスの導入に加えて、最近では、IoTや人工知能(AI)を活用したデータ活用により将来のトラブル発生を予測し、フィールドサービスにあたる「予防保守」などにも取り組んでいます。
今回は、企業の業績を左右させる顧客満足度向上のための保守サポート業務についてお話します。保守業務には設備の点検作業なども含まれますが、今回は顧客サポートという観点でご紹介します。
保守業務のシステム化で顧客満足度は向上するのか?
製造業やソフトウェア企業などでは、製品を導入した顧客に対して長期的な保守業務にあたるのが通常です。
「買って終わり」ではなく、その後のサービスやコミュニケーションの質によって、継続的に利益をもたらしてくれるかどうかが分かれます。
従って、保守業務をシステム化して顧客満足度を向上させれば、利益拡大につながるはずです。
しかし、保守業務をシステム化すると顧客満足度を本当に向上するのでしょうか?
保守業務に対する顧客満足度には「障害受付対応」「復旧作業」「平時の対応」「サービスメニュー」「コスト」という5つの要素が強く関係すると言われています。
そして、それぞれがおおよそ次のような比率で顧客満足度に影響を与えるとされています。
- 障害受付対応:7%
- 復旧作業:12%
- 平時の対応:34%
- サービスメニュー:27%
- コスト:21%
最も影響度が高い要素が「平時の対応」、2番目に「サービスメニュー」、次いで「コスト」という順番です。
企業の保守業務をシステム化する目的は、障害発生時の対応を早めたり復旧作業を早めるためです。
しかし、それらの要素が顧客満足度に与える影響は上記から合計でも19%(障害受付対応と復旧作業)しかなく、むしろ平時にどのような対応をするかやサービスメニューの豊富さの方が重視されています。そして、コストも重要ということになります。
従って、少々強引ではありますが、保守業務をシステム化して障害発生時や復旧作業を早めるだけでは、一要素にすぎず顧客満足度は向上しないと言えるのかもしれません。
顧客満足度の難しさはコストとの兼ね合い
「顧客満足度が上げれば売上が増える」と信じている方は多いのではないでしょうか?
本稿を読まれている方の中にも、「顧客満足度向上=売上増加」と考えている方がいるかもしれません。
そこで、次の一例について考えてみてください。
多くの飲食チェーンでは、各テーブルに顧客満足度調査のためのアンケート用紙が置いてあります。味の評価は?、店員の接客態度は?、料理の提供時間は?など細かくお客様に評価してもらうことで、業務改善に役立てるためのものでしょう。
「業務改善とは」の詳細はこちらでもっとご参考にしてください。
ある飲食チェーンではスタッフの人員不足から、料理の提供時間が遅いという認識はありました。実際にお客様が記入したアンケートの多くにも、そうした不満が書かれていました。
スタッフを増員して、料理提供時間を早めれば、顧客満足度は確実に上がることはわかっています。しかし、多くの経営者はスタッフを増員することに躊躇するでしょう。なぜなら、スタッフを増員すればその分コストは増し、料理価格を上げざるを得ず、結果として売上増加に繋がらない可能性もあるからです。
この一例からも顧客満足度を向上させることの難しさをおわかりいただけるのではないでしょうか。
顧客満足度とブランド価値
では会社はなぜ、売上増加に直結しない顧客満足度を追求するのでしょうか?
多くの場合は先述した「顧客満足度向上=売上増加」という神話を信じているからでしょう。
顧客満足度の話ではよく、オリエンタルランドが運営する東京ディズニーランドおよび東京ディズニーシーの話題を聞きます。
リピート率が98%を超えるなど、「顧客満足度向上=売上増加」を信じる人にとっては夢のような話でしょう。
しかし最近では、東京ディズニーランドおよび東京ディズニーシーの顧客満足度が低下したにも関わらず売上が伸びたというニュースが話題になっています。
もしかしたら「顧客満足度向上=売上増加」ではないのかもしれません。
それ以外の理由で顧客満足度を追求する会社には「ブランドとしての価値を高める」という目的があります。オリエンタルランドが顧客満足度を追求する理由は、売上増加ではなくむしろこの目的が大きいのではないかと思います。
売上が増加したというのはあくまで結果であり、顧客満足度は間接的な要因でしかありません。しかしブランドの価値が高まれば、東京ディズニーランドおよび東京ディズニーシーなどの顧客満足度低下といった危機に瀕しても、顧客が付いてきてくれます。
つまり、少々遠回しな言い方になりましたが、顧客満足度を向上させるとブランド価値が高まり、その結果として売上向上に繋がるということなのです。
保守業務をシステム化する際も顧客満足度向上で売上増加を狙うのではなく、ブランド価値を高めるという目的を持つ方が、効果の高い取り組みが行えます。
ジョン・グッドマンの法則によれば、素晴らしい体験をした顧客はそれを4~5人の知人に話し、残念な体験をした顧客はそれを9~10人の知人に話すとされています。つまり、悪い口コミほど広まりやすいという法則です。顧客満足度向上への取り組みは、良い口コミを増やして悪い口コミを減らすための施策とも言えます。
保守業務で顧客満足度を向上するためには
冒頭で説明したように、IoTやAIを活用して「予防保守」を行うのはよい選択肢です。
顧客満足度に影響を与える要素として「障害受付対応」「復旧作業」は割合が大きくないかもしれません。しかし、障害自体が発生しないことが最も重要な顧客満足ですから予防保守を上手に活用すれば顧客満足度は確実に向上するでしょう。
ただしここで注意していただきたいのが、予防保守を展開しようとした場合に保守費用が上がるという問題です。IoTやそれを活用するためのITソリューションの導入は、保守業務を行う企業にとっては大きな負担なため、保守費用が増加し結果として顧客満足度が下がってしまう可能性があります。
それではどうすれば良いのでしょうか。
そこで、クラウド型のITソリューション導入で保守費用増加の抑制を狙うことをおすすめします。たとえばクラウドサービスとして提供されているMicrosoft Dynamics 365は、インフラ設備を必要とせず、IoTや人工知能(AI)を活用するための情報基盤が事前に組み込まれたカスタマーサポート機能を提供しています。
Dynamics 365はその他にもセールスやカスタマーサービスなど、多様かつ連携の取れたビジネスアプリケーションを提供することで、組織全体の業務効率をアップさせ、高い生産性をもたらします。
まとめ
Microsoft Dynamics 365のカスタマーサービスを活用することで、情報の一元化による効率性を確保することが可能になります。そして、それらはブランド価値を向上させて売上に貢献してくれるのです。こうした効果をもたらすためにも、顧客満足度について十分に理解した上で、保守業務というアプローチで何ができるかについて考えてみましょう。そこで、現状課題を解するためのカギがあるはずです。