企業として利益を上げるということは最も重要なことの一つですが、それと同等に「無駄にかかっているコストを下げる」ということも重要な作業です。企業によっては売上拡大よりも、最優先で取り組むべき事項かもしれません。
そして、日々の職務の中では、上司からいきなり「業務改善案を出すように」と言われることが少なくありません。定期的な改善案提出を求められる環境もあるでしょう。
しかし、業務改善がそう簡単なものではないということを、皆さんご存知かと思います。
お昼休憩時の消灯やコピー時に裏紙を使用するなど、目の前の「節約」などはイメージしやすくすぐに実行できますが、「業務改善」となるとなかなかピンとこないという方が多いのではないでしょうか?
そこで今回は業務改善について、促進する上で知っておきたいポイントなどを紹介していきたいと思います。
業務改善とは?
業務改善を始める上で、まず大切なのは業務改善についてしっかりと理解しておくことです。前述した消灯や裏紙コピーなどはあくまで節約ですが、実は業務改善案にこうした節約を記入する方も少なくありません。
業務改善には様々な方法がありますが、つまるところ業務の「ムリ、ムダ、ムラ」を排除することにあります。この「ムリ、ムダ、ムラ」の3つは、トヨタ生産方式のコスト削減原理として一般的に知られているものでもありますね。
上記3つの要素を業務から排除することができれば、業務時間が短縮され、それがコスト削減にも繋がります。
例えば、業務改善によって従業員1人あたり1日15分の時間短縮に成功すると、1年間で12万円ものコスト削減になります(1時間あたりの人件費2,000円として)。
従業員数が100人なら120万円、それ以上ならさらに大幅なコスト削減が見込めるのです。
そして、これまで上手く業務改善に取り組めていたなかった企業では、業務改善により1日15分の時間短縮を行うことは、そう難しいことではありません。まずは、次項で紹介する3つのポイントをしっかりと念頭に起きましょう。
業務改善を進める上で考える3つのポイント
すぐにでも業務改善に取り掛かりたいという気持ちもありますが、まず下記3つのポイントについて考えてみましょう。
無くす
業務改善の最初に考えることは、業務を無くす、やめることで。ルーティンのように毎日行っている業務の中にも、やる必要のない業務というのが隠れていることがあります。
例えば、ほとんど確認されることがなく形式的に行われている日報業務、どこで利用されているかも分からないデータの入力など、思い当たる節がいくつかあるのではないでしょうか?
それらの業務は、確実に業務改善を阻んでいる原因です。皆さんが日々行う業務の中で、無くせるものはないかを考えてみましょう。
減らす
次に考えるべきは、業務を減らすことです。無くす、やめることは出来なくとも、中には処理回数や頻度を減らせるものはあります。
例えば前述した日報業務も、無くせないものであれば週報にして作業効率性をアップさせたり、データ入力処理を都度行うのではなく毎月末に行うのど、工夫することで処理回数や頻度は確実に減らせます。
たとえ1日1~3分程度の時間短縮であったも、それは間違いなくコスト削減につながっています。
変える
最後に業務を変えることについて考えます。業務を無くすことも、処理回数を減らすことも難しいというのであれば、業務を変えることで改善に繋がるケースは少なくありません。
主に業務手順を変更したり、担当者を変更するなど、各業務の何かしらを変えることで時間短縮に繋げていきます。システムを導入して、業務効率化を狙うという「変える」も友好的なので、幅広い視野で考えてみましょう。
業務改善の進め方
前項では業務改善を進める上でのポイントについて紹介したので、ここでは具体的な業務改善委進め方について解説します。
業務の見える化
まず初めに行うことは業務の見える化です。各部署ごとにどのような業務が発生するのか、つまりは棚卸をしてすべての業務を洗い出します。
この時、日常的に行っている業務だけでなく、イレギュラー的に発生する業務についてもしっかりと洗い出しておきます。
業務を整理していない状態で業務改善に取り組んでも、確実な改善を行うことは不可能です。
また、業務の種類、担当者、発生頻度、難易度といったいくつかの項目で業務を分類していくことも大切です。
優先順位を付ける
次に、率先して業務改善に取り組むべき業務を明確にするため、各業務に優先順位を付けていきます。順位付けは業務の棚卸時に整理した分類情報をもとに行っていくと、スムーズに進めることができるでしょう。
優先順位を付けたら前述した3つのポイントで改善案を出していきます。この時、「改善の難易度」と「改善後の効果」という評価まで盛り込むと、さらに的確な業務改善を行うことができます。
改善の難易度:費用、時間、手間など改善にかかるトータルコスト
改善後の効果:コスト削減、時間短縮など改善によって得られる効果
マニュアル化する
最後に、改善した業務をしっかりとマニュアル化することで、担当者ごとのムラを排除します。こうすることで、業務改善効果を全社的に反映させることが可能です。
また、可能ならば業務改善の方法もマニュアル化しておくことをおすすめします。
従業員が主体的に業務改善を行う、さらにそれを評価する環境が整えられていれば、業務改善がさらに促進します。
ERPを導入し企業全体の見える化と生産性を向上
ここで、業務改善を行う上でのERPについて紹介します。
ERP(エンタープライズ・リソース・プランニング)とは、企業に必要な複数の業務システムを統合的に提供し、基幹システムとして経営戦略の迅速化や生産性向上のために導入するソリューションです。
日本では1990年代後半から普及し、当時は海外の商習慣と日本企業が合わないということで、一旦は下火となったソリューションです。
しかし、近年日本におけるERPの需要が拡大しています。その背景として、グローバル化を目指す企業が多くなったことや、ERPのコモディティ化が進んだことなど様々な理由がありますが、その中の一つに「業務改善のためにERPを役立てる」というものがあります。
ERPを導入することで、既存の業務の多くはシステム化されます。このため企業全体の業務を見える化しやすく、さらにはシステム同士でシームレスな連携が取れているため、全体的な業務改善を促すことが可能なのです。
今まで「経営のためのソリューション」として認識されてきたERPですが、近年では現場での業務効率化を目指す企業が導入するケースも増加しています。
まとめ
最後に、本稿を通じて心に留めていただきたいことは「業務改善は一日にして成らず」ということです。業務改善に取り組み始めて、すぐに効果が出るということはありません。実際に改善してみて、その後の効果を検証することで初めて業務改善の効果が分かります。
従って業務改善を短期的に行うのではなく、継続的に取り組むことで高い改善効果を狙っていきましょう。