生産管理システムとは何か?日本規格協会のJIS(日本工業規格)Z8141:2001によれば、「生産管理を系統的に行うために,生産に伴う現品,情報,原価(価値)の流れを統合的,かつ,総合的に管理するシステム。」と定義されています。
ただし、この定義だけで生産管理システムの全体像を掴むことは難しいですね。そこで本記事では、生産管理システムとは一体何を指すのか?これを分かりやすく解説していきます。生産管理システムとして欠かせない機能についても説明しますので、生産管理システムの何たるかを知りたいという方は、ぜひ参考にしてください。
生産管理システムとは?
製造業において、需要予測を行い生産量を管理し、生産スケジュールを管理して計画通りに生産を進めることは、最終的なQCD(品質・予算・納期)基準を満たすために欠かせない活動です。そしてQCDを維持するための諸々の活動を「生産管理」と呼び、これをITで実現したものを生産管理システムと呼びます。
では、製造業に生産管理システムが必要とされる理由は何か?それは「情報の一元化」であり、生産現場では仕入れ、検品、在庫、供給、製造、仕掛品管理、販売、原価、梱包、出荷、配送とった多岐にわたった業務が複雑に絡み合っています。以上の工程は1つのサプライチェーン(供給の連鎖)として繋がっているので、各工程で生成される情報を一元的に管理することが、製造業における生産性向上と生産コスト低下を実現します。
ところが、生産現場では長らく「ITのサイロ化(分断化)」が進められた経緯があり、仕入れには仕入れの、在庫には在庫の、そして販売には販売のといった具合に専門的なシステムが分散している状況にありました。サイロ化は「情報の一元化」を阻害する大きな原因であり、故に製造のQCD基準を満たしづらくなるという問題が深刻化していました。
そこで各システムや業務プロセスを一元的に管理するために登場したのが生産管理システムです。製造にかかわる幅広いシステムと業務プロセスから生成される情報を一元的に管理することにより、効率的な生産活動へと取り組めるようになりました。
生産管理システムに欠かせない機能
生産管理システムといっても実態は多岐に渡り、ソフトウェアベンダーごとに提供する機能が大きく異なります。また、導入形態も多様化しているため、固定的な考えにとらわれず柔軟な発想で生産管理システムの導入について考えることが大切です。ここでは、生産管理システムに欠かせない機能を紹介します。
調達・購買管理システム
生産活動の起点となる調達および購買業務は、近年効率化の重要性が叫ばれている分野です。部品や原材料、間接資材を効率良く調達して、適切に管理できれば生産コスト削減や生産効率化を実現し、競合優位性を強化できます。また、仕入先管理も同時に行うことで仕入先同士の競合を促し好条件で取引が行えるようにし、仕入リスクのマネジメントとしても活用できます。
在庫管理システム
直接資材の在庫は多すぎるとコストを圧迫しますし、少なすぎると生産スケジュールに対応できず機会損失を招くことになります。意識すべき「常に適正在庫を維持する」ことであり、そのためには在庫情報だけでなく仕入情報、生産情報、販売情報をすべて連携し、適正在庫の維持に努める必要があります。生産管理システムの統合された在庫管理機能は、一元的な情報管理から正しい在庫管理に必要な数量を算出したり、適切な在庫リードタイムを管理したりするのに欠かせません。
工程管理システム
製造工程における進捗チェック及び品質チェックは、最終的なQCD基準を満たす上で欠かせない管理業務です。工程管理システムでは各生産ラインにおける工程を細かく管理し、かつ工程ごとに配置されている要員管理も行えます。アプリケーションを開発することで工程ごとのパフォーマンス管理も実現するため、生産性向上に欠かせな機能です。
販売管理システム
製品の見積もり、受注、売上、在庫、出荷といった情報を一元管理にできます。製品を受注したタイミングで在庫情報を更新し、顧客ごとの販売価格を管理することによって利益計算などにも活用できます。また、販売管理システムの重要な機能が「会計管理システムとの連携」です。生産と会計のつながりを強化することで、全社最適された業務プロセスの構築も実現します。
原価管理システム
製造業の中で意外と取り組まれていないのが原価管理です。生産システムが無い環境であらゆる情報を統合し、原価情報を可視化した上で価削減に取り組める企業はほとんどいないでしょう。それほど原価管理は複雑なので、生産管理システムの一部として導入し、様々な情報を一元管理しながら原価情報に反映させるという取り組みが必要です。
出荷管理システム
製品の出荷状況を正確に管理することも生産のQCD基準を満たす上で欠かせない業務です。そのためには製造部門と出荷部門が密に連携を取ることが大切であり、出荷管理システムそのハブとして機能するものです。
配送管理システム
製品配送を内製化している製造業の場合、配送管理システムを使って製品の配送状況を逐一チェックすることが大切です。1分1秒の納期を大切にするためにも配送管理システムによる監視を実施し、さらには配送ドライバーのコンプライアンスを維持するためにも活用できます。
品質管理システム
顧客に納品した製品に不良があった場合、信頼を損なうだけでなく対応コストも膨らみ経済的損失も生じます。そのため、あらゆる工程における製品品質を管理するために、品質管理システムが欠かせません。
顧客管理システム
生産管理システムの一部ではないものの、連携が必要とされるのが顧客管理システムです。生産情報と顧客情報を連携させることで、顧客分析を促進して生産効率性を高めたり、マーケティングや営業活動へと情報を受け渡したりすることも可能です。
生産管理システムはクラウドERPで!
生産管理システムを導入するにあたり、近年注目されているのが「クラウドERP」です。クラウドERPとは、基幹系システムを事前に統合したERP(Enterprise Resource Planning)をクラウドサービスとして提供するもので、製品によって生産管理システムや会計管理システム、営業支援システムなどが幅広く統合されています。そのうちマイクロソフトが提供するDynamics 365はERPとしては珍しく顧客管理システム(CRM)を統合していることから、生産と顧客、会計、営業といった企業の基幹業務を横つなぎに統一できる数少ないクラウドERPです。
クラウドERPは「インフラ構築不要」という強力なメリットがあるため、中小企業でも導入が進んでいます。クラウドERPによって生産管理システムを導入することで、事前統合されたシステム環境が構築されるので、生産管理システムを導入される際はぜひクラウドERPをご検討ください。