企業のデジタルトランスフォーメーションの流れはさまざまな部門に拡大し、近年は経理部門においても改革が求められるようになっています。しかし、経理部門になぜデジタルトランスフォーメーションが必要なのか、どうやってDX化を進めればいいのかといったことがわからないと、スムーズな改革は難しいでしょう。
この記事では経理部門のデジタルトランスフォーメーションについて、導入が必要な理由や導入方法を紹介します。この機会に経理部のDX化計画を立案し、業務改善を進めてみてはいかがでしょうか。
デジタルトランスフォーメーションとは
デジタルトランスフォーメーション(DX)とは「Digital Transformation」をそのまま日本語で発音したものです。英語圏でTransを略すときにXが使われることから、日本でもDXと省略されます。
DXは、2004年にエリック・ストルターマン教授によって提唱された概念で「進化した情報技術(IT)の浸透が、人々の生活をあらゆる面でよりよい方向に変化させる」という意味を持ちます。
経済産業省でも製品やサービスといったビジネスモデルのほか、業務や組織などを変革することをDXの定義としています。
経理部門にデジタルトランスフォーメーションが必要な理由
企業の経理部門にも、DXは必要とされています。なぜなら経理部門は、会社の金銭に関わる重要な業務に携わっているからです。
もし経理部門に何か問題が起きて業務がストップしてしまえば、給与の振り込みや取引先への支払いなどが滞り、会社の信用を落とす結果にもつながってしまいます。そのため企業は早急に経理部門のDX化を進め、IT技術による効率的かつ安定した業務を定着させるべきだと言えるでしょう。
経理部門は以下の理由からDXの推進が難しいと考えられています。
- 特定のExcelでしかできない業務が経理の中で定着してしまっている
- 業務が属人化して代わりがきかない
- 紙書類の押印が習慣として残っている
近年は新型コロナウィルスの影響で企業のテレワーク化が推進されていますが、経理部門は上記の理由からDX化が進んでいなかったため、結局出社をして業務をしたという話がよく聞かれました。
しかし、近年はそんな現状を変えるために、多くの企業が経理部門を含めたDX化を推し進めています。その背景には、総務省が平成30年に発表した「DXレポート~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~」で取り上げられた「2025年の崖」が関係していると考えられます。
2025年の崖とは、企業を支えている既存システムの複雑化・老朽化を克服してDXを推進しなければ、2025年以降に最大で年に12兆円もの経済損失が生じる可能性を指摘する考えです。
このような指摘が行われたことから、競争力の維持・強化のために多くの企業がDXを進めています。経理部門も既存システムの維持や保守ができる人材は今後さらに減り、セキュリティ上のリスクが高まると予想できるため、スピーディなDX化が求められるでしょう。
経理部門DX化|行程
経理部門のDX化を進める際には、以下の流れが基本的な行程になります。
①デジタル化
経理に役立つアプリやクラウドなどを導入し、既存業務をデジタルに置き換えていく段階を指します。業務に関するデータをソフトに蓄積し、DX化によって不要となる業務やコストを明確にします。
②効率化
DXによってデジタル化したことで蓄えられたデータを活用し、より業務の効率化を目指す段階です。基本的にデータの活用は、それぞれの部門ごとに行われます。
③共通化
蓄積されたデータを部門内だけでなく、会社全体に共有して活用する段階です。
「KPI(評価項目)の設定→仮設の立案→施策の実施→データ検証」を一つのサイクルとし、DXによるさらなる業務改善を目指します。
④組織化
ここまでに検証したデータを上手く活用するための組織を設立し、DXに適した環境を構築する段階です。DXを主体とした新たな業務フローを明確にし、効率的な運用体制を確立します。会社の規模や状況によっては、デジタル専門の部署を作ることも考えられるでしょう。
⑤最適化
最後にこれまでのデータを事業活動に反映させ、デジタルテクノロジーによるビジネスモデルの再構築を実施します。事業のイノベーションを引き起こし、今後の企業の事業基盤として確立されます。
上記の流れが、経理部門を含めたあらゆる事業のDX実現につながります。それぞれのステップで経理部門の問題点や改善点を検証し、少しずつDX化を進めていくことがポイントです。
経理部門DX化|デジタルトランスフォーメーションの方法
経理部門のDX化においては、いくつか重要となるポイントがあります。具体的にデジタルトランスフォーメーションを実施する方法を把握することで、何をするべきなのかが明確になります。
漠然と「DXを進めたい」と考えている状況から一歩踏み出し、今後の事業計画を決めるきっかけにもなるでしょう。
以下で、経理部門におけるDX化の方法を三つ解説します。経理部門のDX化が本格的に考えられる際に、参考にしてください。
証憑類を電子化する
紙として保管していた証憑類の電子化が、経理部門のDXにおける最初のステップです。
証憑類をデジタルデータとして保存するシステムを導入することで、紙の保管に使っていた置き場所やコストの削減につながります。企業において紙媒体での管理が多いものとして、レシート、請求書、伝票などがデジタル化すべき証憑類にあたります。
最終的には社内だけでなく取引先の企業などにも働きかけ、紙を使ったやり取りをデジタル化して省略していくことが、経理部門におけるDXの最初の目標になるでしょう。
会計ソフトでデータを自動連携
会計ソフトでデータ連携を行い、各種データの取得を自動化することもDX化の方法です。
経理に欠かせない銀行の出入金による会計入力や債券管理の工数が省略できるので、業務の効率化が実現されます。一度ソフトへの連携を済ませてしまえば、その後の作業もすべて自動化されるため、長期的に見たメリットは非常に大きいです。
早期に取りかかれば取りかかるほど今後の手間が省かれ、受けられる恩恵も大きくなるので、DX化の際にはまずデータ連携が行える会計ソフトの導入を進めてみましょう。
システムでの経営状況の確認
企業の経営状況を確認できるシステムを導入することも、経理部門のDX化において重要なポイントです。
会計ソフトの中には、企業の予算と実績を管理している経営資料のデータを確認できる機能を備えたものもあります。このような会計ソフトを導入することで、経営状況のデータを簡単に比較・検証できるようになります。
経理が手作業で経営資料を作成していた場合には、資料作成の負担を軽減して別の業務にリソースを割けるようにもなるでしょう。
Dynamics 365|「PowerApps」の活用
経理部門のDX化を進めるためには、「Dynamics 365」のようなITソリューションを導入して効率的に環境変革を促すことが推奨されます。
Dynamics 365はさまざまなアプリケーションの導入を自由に行えるITシステムで、経理部門のDXに必要な機能をいくつも有しています。
例えばDynamics 365にはMicrosoftが提供する「PowerApps」というソリューションがあり、活用することでローコード開発が行えます。
ローコード開発とは簡易的な画面と関数だけでアプリを開発できる手法のことで、プログラミングの知識がなくとも本格的な経理システムを構築可能です。
PowerAppsはパーツを組み合わせるだけの簡単製作、Microsoftサービスとの連携、「Microsoft PowerAutomate」との連携によるワークフローの実装など、さまざまなメリットがあります。
さらにコベルコシステムが提供する「HI-KORT365会計テンプレート」を導入することで、経理業務のDX化がよりスムーズに進みます。
HI-KORT365会計テンプレートは、260件以上のERP導入事例のノウハウを凝縮したサービス群です。低コストで導入が可能で、スムーズなユーザー教育を促すドキュメントが配布されているためすぐに活用することができます。経理における仕分け情報は自動で連携されるため、経理業務をシームレスに進めることが可能です。
HI-KORT365会計テンプレートは経理部門だけで使う限定的なものではなく、そのほかの業務にも活用できます。最終的に組織全体の最適化も進められるのが、HI-KORT365会計テンプレートの導入における大きなメリットになるでしょう。
まとめ
経理部門におけるDXは、企業の将来を大きく変容させるきっかけの一つになります。この機会に具体的なDXプランを立て、経理部門の業務を変革することを目指してみてはいかがでしょうか。
DX化によってデータの有効活用が実現されれば、顧客行動の変化へ迅速に適応したビジネス展開が可能になります。DXおよびデータの有効活用を行うには「Dynamics 365」の導入がおすすめです。Dynamics 365を使った新しい業務形態をシミュレートして、これから加速していくDXの時代に備えることもぜひご検討ください。