以前にも増して「デジタルトランスフォーメーション」というワードを見聞きするようになりました。これはつまり「デジタルへの変革」を意味し、我々は新しい産業革命の真っ只中に立っているとも言えます。
産業革命が始まったのは18世紀後半。ワットが開発した蒸気機関は、その後にこれを動力源にした織機・紡績機の改良によって軽工業が発展しました。これが第一次産業革命です。19世紀から20世紀にかけて電力による電動機、石油による内燃機関の発明はエネルギーの輸送コストを大幅に引き下げ、科学工業では肥料や医薬品に飛躍的な発展をもたらしました。
20世紀後半にはコンピューターの発明などテクノロジーが大きな発展を遂げて、我々の私生活や社会環境を大きく変化させました。そしてその波は次第に大きくなり、圧倒的なスピードでさらなる激動を起こそうとしています。
デジタルトランスフォーメーションとは?
「デジタルの変革」を意味するデジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation)は、いろいろなモノやコトがアナログからデジタルに置き換えられていくことを指します。我々の周囲ではすでにたくさんのモノがデジタル化されており、スマートフォンはその代表格でしょう。スマートフォンの登場によって携帯電話は単なるコミュニケーションの手段ではなく、生活の知恵を身に付けるためのものだったり、ショッピングを楽しんだりするためのものとして生活に溶け込んでいます。しかしこうした未来を誰が想像していたでしょうか?
このように、これまで誰も想定していなかったモノやコトがデジタルと繋がることで、我々の生活や社会環境にとてつもなく大きなインパクトを与える現象もデジタルトランスフォーメーションだと言えます。
そして現代企業に求められていることは、このデジタルトランスフォーメーションを能動的に引き起こし、ビジネスを変革させることです。
新しいプラットフォーム
ITにおける改革は第一のプラットフォーム(メインフレームの開発と汎用機)、第二のプラットフォーム(クライアント/サーバーシステム)と発展してきました。現在では新しいプラットフォームが誕生し、それらのプラットフォームに対応することがデジタルトランスフォーメーションを成功させるために重要なことの1つだと言われています。
第三のプラットフォーム
モバイル
日本人のスマートフォン保有率は2016年時点で56.8%、人口の過半数がスマートフォンを所持していることになります。2011年では14.6%だったのに対し5年間で4倍以上も成長しています。さらに、50代60代のミドルシニア世代でもスマートフォンは爆発的に普及しており、従来の携帯電話(ガラケー)だけを使用しているという人はかなり少ないでしょう。
ソーシャルメディア
スマートフォンの普及と同時に拡大したのがSNS人口です。2004年にサービスが開始されたFacebookは2018年時点で22億3,000万人もの月間アクティブユーザーを持ちます。2006年に開始されたTwitterは、2018年現在3億3,500万人までユーザー数が拡大しています。つまり世界人口の3人に1人はSNSを使用しているということです。
ビッグデータ
2014年頃に多くのメディアに取り上げられたビッグデータは一過性のものだと考えられていましたが、最近になってデータ分析基盤が整えられてきたことでその注目度が盛り返しています。企業内外で蓄積されたデータはすべて大切な資源であり、事業に役立つ知見を見出すためのデータでもあります。デジタルトランスフォーメーションが進むごとに、世界のデータ量は爆発的に増加していきます。
クラウド
クラウドは今やITシステムの中心にある技術です。サーバーリソースやインフラ、あらゆるソフトウェアをインターネット経由で提供することで、ユーザーの利便性を劇的に向上し、さらには初期投資や運用負担まで抑えて提供することができます。クラウドが登場したことで企業のITシステム環境は劇的に変化し、さらに複雑になっています。
この4つのプラットフォームはデジタルトランスフォーメーションを目指す企業にとって無視できないものであり、早急な対応が求められています。
デジタルフィードバックグループの重要性
新しいプラットフォームへの対応はもちろん、デジタルトランスフォーメーションへ取り組むためにはもう1つ重要なことがあります。それが「デジタルフィードバックグループ」の構築です。
デジタルトランスフォーメーションに取り組むことによって「お客様とのつながり」「業務最適化」「製品やサービスの変革」「社員力の向上」という4つの分野で改革を行います。そのためにはあらゆる情報を格納するための「データ」と、そのデータを処理するための「インテリジェンス」が必要です。
デジタルトランスフォーメーションは「データ(情報収取)」「インテリジェンス(分析)」「アクション(実行)」というステップで行っていきます。その結果をフィードバックしながら継続的に取り組むことが大切です。
例えば英Metro Bankでは銀行員がクリップボードを持って顧客を出迎え、自席に戻ってCRM (Dynamics 365) から関連する顧客情報を入手するという手順をふんでいました。そこでPowerAppsを活用してアプリを開発し、クリップボードからSurfaceタブレットを手に取っての顧客対応に切り替え、タブレット上ですばやく顧客情報を特定し対応できるようにしています。
さらに顧客の来店後の対応について、これまでは顧客が自分の順番を席に座って待つ、というオペレーションでしたが、アプリの開発により、混雑状況に応じた適切な窓口の案内、および推定待ち時間を提示し、顧客が携帯電話へのテキストメッセージと電話のどちらで通知を受け取るか選ぶことができるオペレーションへと変えることに成功しています。
これらの取り組みによって店舗内顧客エクスペリエンスに関するNPSが上昇しています。さらに、これらの情報を既存の顧客管理システムのデータと連携させることにより、様々な課題の把握・改善、また、お客様に求められるサービスの発掘などにもつながり、顧客満足度向上につながるのみならず、集積したデータから得た気づきを次の戦略に生かしていく、といったことに発展させていました。
デジタルトランスフォーメーションに欠かせないツール
マイクロソフトが提供するDynamics 365、Office 365などのクラウドサービスは業務プロセスをデータと統合するための機能が多数用意されています。たとえばDynamics 365には複数の業務アプリケーションが統合されており、データベースを1つに管理することで、データ統合を行い分析までの時間を圧倒的に短縮してくれます。
もう1つ欠かせないのがBIツールです。マイクロソフトではセルフサービスBIとしてPower BIを提供しています。Power BIはDynamics 365やOffice 365との親和性が非常に高く、データのやり取りをスムーズに行えます。
デジタルトランスフォーメーションを目指すにあたってこれらのツールを欠かすことはできません。データ分析をもとに経営全体を最適化して、デジタルへの変革を目指すことができます。この機会にデジタルトランスフォーマーションに着目し、Power BI やDynamics 365等の導入をぜひご検討ください。