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ローコードとは?メリット・デメリットやノーコードとの違いも解説

ローコードとは?メリット・デメリットやノーコードとの違いも解説

従来から利用されている超高速開発ツールは、GUI(グラフィカル・ユーザー・インターフェース)による操作でプログラムを生成し、ソフトウェア開発における工数を大幅に削減するためのものです。そして現在、 ソフトウェア開発を効率化するための手段として注目されているのが「ノーコード/ローコード」 です。

ただし、ノーコードに関してはなんとなく理解できるもののローコードについて知らないという方も多いでしょう。本稿ではローコードの基本を説明しつつ、ノーコードとの違いを紹介します。後半では、ローコードのメリットやデメリット、ローコードの導入が適しているケース、導入時のポイントについて詳しく解説していきます。

Microsoft PowerApps はじめてのアプリ開発

ローコードとは何か?

ローコードとは何か?

ソフトウェア開発・運用では仕様・要件変更が頻繁に発生します。これらの変更に対して、如何に柔軟に対応するかによってビジネススピードが大きく変わるでしょう。それはつまり日々変化する市場への対応力を示しており、ビジネススピードが速い企業ほど市場のニーズに素早く応えることができ、継続的に成長していくための基盤を持っていることになります。

こうしたビジネススピードを高めたいというニーズに応えるITツールがローコードです。ローコードはソースコードを書かずに、あるいは最小限のソースコードでソフトウェア開発を高速化するためのITツールであり、2014年にForrester社がソフトウェアを分類するためのカテゴリとしてこの言葉が使われ始めました。

ローコードが登場する以前にもCASEツール、4GL、RAD、MDAといったソフトウェア開発を高速化するためのITツールは存在しています。GUIを中心にソースコードの自動生成を行うという点はローコードと共通しています。しかしながら、ローコードには以下のような相違点が従来のITツールとの間にあります。

  • 開発可能なソフトウェアの自由度が高く、必要に応じて細かな拡張が可能
  • 単なるソースコード生成ツールではなくロジックやUI(ユーザー・インターフェース)を含めたソフトウェア全体の自動生成およびラウンドトリップ開発が可能

ローコードと従来の開発との違い

従来型の開発では上流工程で要件定義を行い、そこから設計書を作成します。そこから下流工程で詳細な設計書を作成しプログラマーがコーディングを行います。こうした方法は工数がかかるため開発者にとっても負担がかかります。アップデートがある度にこのような工程を踏むためスピーディーに対応することができない難点があります。

一方でローコードは予め書かれたソースコードを組み合わせて開発する方法となるため、臨機応変に対応ができ、開発者の負担を軽減できるメリットがあります。

ローコードとノーコードの違い

ローコードとノーコードの違いを簡単に説明すると「ソースコードを記述するか否か」です。 ローコードと従来のITツールの相違点について前述しましたが、ローコードは拡張性が高く、ほかのソフトウェアとの統合機能も豊富なので広範囲なシステム環境を考慮しています。

一方ノーコードは、ローコードのようにGUIベースでアプリケーションを構築するものですが、細かな仕様には対応していない場合もあります。そのツールの仕様次第になるため導入前に何ができるのかを確認することが重要です。

★詳しくはこちら:
ノーコード・ローコードとは?メリット・デメリットやツールも解説
【ノーコード開発】メリット・デメリット・人気のツールを事例付きで紹介

ローコードが求められている理由

ローコードが求められている理由

日本市場はもちろん世界でもローコードへの需要が急速に拡大している理由はいくつかあります。それを知れば、ローコードにどんなメリットがあるのかを理解できます。

DXの推進

DXとはデジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation)から来ている言葉です。DXは広義ではデジタルによる業務の効率化や経済活動の推進を意味します。DXが企業において積極的に導入されるようになってから、プログラミングに関する知識がない人材でもアプリやソフトウェアを開発することが求められるようになりました。こうした状況が後押しし、ローコードが注目され始めました。

予算の縛り

ソフトウェアの開発や運用ではつねに予算が限られています。IT活用に十分な理解を持っている企業でもない限り、情報システムに潤沢な予算があるというケースは少ないでしょう。しかし情報システムはその予算の中で顧客や従業員が求めるものに応えなければいけません。ローコードを利用して最小限の工数でソフトウェアを開発することで、限られた予算の中でも顧客や従業員の要求へ最大限に応えることができます。

時間、人材的制約

予算と同じように情報システムでは時間と人材にも制約があります。特に日本は現在、慢性的なIT人材不足にあるため多くの情報システムは人材の制約に悩まされており、顧客や従業員の要求に応えきれていません。ローコードはそうした制約から情報システムを開放し、非常に柔軟な開発環境を作ります。

業務部門の高度な要求

業務部門から寄せられる要求は日々高度化しています。テクノロジーの発展によって業務効率を大幅にアップできる時代になりましたし、業務部門もそれを理解しているため、より高い生産性を生み出すために高い要求が飛び交うのです。しかし、情報システムがその要求に対応するだけのリソースを持っておらず、生産性が現状維持を続けている企業は多いでしょう。 ローコードによって業務部門の高度な要求に応えることができれば、生産性が飛躍しビジネススピードのアップに繋がります。

IT/業務部門の協業

IT部門と業務部門が協業すれば、それほど強い組織はありません。お互いを信頼し、お互いの要求に最大限応える姿勢があればどんなビジネスも成功へと導けるでしょう。しかし多くの企業では両部門が対立していたり、IT部門が業務部門の要求に辟易しているという様子が見受けられます。ローコードを取り入れて両部門が協業すれば、これまでにないパワーを生み出せるはずです。

レガシーシステムの保守

事業年数が増えるほどシステムはレガシー化(古い遺産になってく)します。「古くなれば新しくすればよい」という考え方は非常に安直で、レガシーシステムが業務プロセスと深いかかわりを持っているほど刷新は難しくなります。しかしレガシーシステムの保守には労力と時間、それとコストがかかります。ローコードによってレガシーシステムを保守するための拡張ソフトウェアを開発すれば、コストをグッと下げてシステムを延命できます。

ローコードのメリット

ローコードのメリット

ローコードは従来の開発が抱えていたさまざまな問題をクリアし、これまでに実現できなかった新しい価値を生み出しています。ローコードにはどのようなメリットがあるのでしょうか。

シャドーITの減少に効果的

シャドーITとは企業が認めていないITツールのことを指します。シャドーITを活用するとバグが発生した際に対応できる人材が限定されることや、セキュリティの脆弱性によって思わぬ情報漏洩につながるリスクがあります。ローコードはあらかじめ用意されたフレームワークの中で開発を進めるため、開発前にどのような機能が提供されているのか分かります。非エンジニアでも開発でき、バグが発生した際に原因を特定しやすいため、迅速に対応できるというメリットがあります。

品質の向上

ローコード開発の場合、既に開発された既存のプログラムを組み合わせて開発を進めます。あらかじめデバッグされた状態のプログラムが動作保証されている状態で提供されます。そのため、その既存プログラムはバグがない状態で利用でき、フルスクラッチの開発と比較するとバグが発生する頻度が少ないことが特長です。フルスクラッチの場合、バグが発生するとどこにその原因があるのか特定に時間がかかりますが、バグが少ないローコードはそれだけ高い品質を保つことができます。

開発コストの削減と開発時間の短縮

従来型の開発は要件定義からシステム設計、コーディングに至るまでの工程が多く、工程毎に工数がかかるのが難点です。コーディングする段階でバグが発生すると原因特定のためにシステム設計書に出戻ることがあります。ローコードは既に開発してある機能を組み合わせるため、工数を効率的に削減できます。このように、短時間で開発できるためスピード感のあるサービス開発をするのに適しています。

ユーザ主体の開発を実現

ローコードでは非エンジニアのメンバーが主体となって開発ができます。現場の課題点や要望点をそのまま開発に取り込むことができる点が容易です。課題点や要望点の解消に向けた開発を外注化している企業においては、開発会社が実際の現場におけるニーズを汲み取ることが困難なケースがあるでしょう。一旦納品されたシステムを改修するには追加コストがかかることもしばしばあります。開発の内製化に適したローコードはその意味でユーザー主体のツールといえます。

ローコードのデメリット

ローコードのデメリット

エンジニア人材が不足している現状においてローコードは企業に様々な価値を提供してくれる一方でデメリットもいくつか存在します。ここではローコードにおけるデメリットについて説明します。

従来型の開発よりも制限が多い

ローコードは従来型の開発と比較するとコーディングできる範囲が狭いため、自由度が低く制限事項が多いです。ローコードではツール上であらかじめコーディングされたパーツを組み合わせるか、ツールが提供するウィンドウ内で最小限のコーディングで開発を進めるのがその作業の中心です。ローコードは希望する機能が利用できない可能性もあるため、事前に要件を満たすことができるのか確認することが重要です。 

ツールコスト増大のリスク

エンジニアに頼らない開発が可能なローコードは、エンジニアにかける人件費を削減できる反面、ツールを使用するための料金が別途発生します。ローコードで発生する料金が利用するユーザー数をベースとする場合、ユーザー数が増えるとツールコストが増大してしまうリスクがあります。ツールを利用するユーザー数を予め想定し、どれくらいのツール使用料が発生するのかシミュレーションすることをおすすめします。

システムのブラックボックス化

ローコードはツール上で操作して開発を進めるため、そのツール内でどのようにプログラムが動いているのか直接目にすることはできません。その結果、開発が完了した後にバグが発生した場合、どこに原因があるのか掴みにくいケースも少なくありません。このような事態を防ぐため、開発した目的やその開発手順についてドキュメントに残し、担当者以外の人間が後から振り返ることができるようにすることが重要です。

ある程度の専門知識が必要

非エンジニアでも馴染みやすいローコードですが、ある程度の専門的知識が要求されるのも事実です。どのようなフローでシステムを動作させたいのかシーケンス図を描き要件を定義することやデータを適切に保持するためのデータベースの設計が最低限必要となります。それらを含めた開発工数を算出することもスケジュール通りに開発を進める上で重要です。ローコードを導入する際は、そのような専門性を持った人材をあらかじめ確保するようにしましょう。

ローコードが向いているケース

ローコードが向いているケース

従来型の開発からローコードに置き換えることによって業務効率化や大幅なコスト削減を図ることができます。それでは具体的にローコードはどのようなケースに適しているのでしょうか。ここではローコードがその威力を発揮するケースについて解説します。

スピード重視の開発

ローコードは規模がそれほど大きくなく短期間で完了させる開発に向いています。ローコードはツールが提供するダッシュボード上で操作し開発を進めるのが主な作業内容となるため、小人数での開発に向いています。必要な機能が既に分かっていてローコードで十分対応できる場合や新たな人材を確保する予算や時間がなく1からコーディングする知識もないケースではローコードが適しているといえます。

定型的な業務の開発

複雑な条件処理やデータ処理を要求しないルーティンワークに近い業務はローコードを通じてシステム化するのがよいでしょう。社内メンバー向けのアンケート集計や決まった時間に送るメール、アラートが発生した際に送る社内共有メールなど、あらかじめ形式や内容が決まっているものはローコードによる開発が適しています。

ローコード開発ツール導入時のポイント

ローコード開発ツール導入時のポイント

ローコード開発ツールを導入する際にはいくつか確認するポイントがあります。以下に解説するポイントに基づきツールをいくつかの候補に絞り、最終的に予算条件と共に決定するようにしましょう。

導入する目的の明確化

ローコード開発ツールを導入する際は、事前に目的と達成したいゴールを明確にしましょう。それを怠ると、社内の部署によって目的とゴールはまちまちであるため、ツール導入後に要求と異なるアウトプットになってしまう問題が発生します。

例えば、人事部にとっての目的は開発部門に頼ることなくスピーディーに新規プログラムを開発すること、開発部門における目的は高度な開発に集中するために定型的なプログラムの開発は各部門に任せることなどです。

機能・セキュリティ対策の確認

ローコード開発ツールは、自由にコーディングできる環境ではありません。できることは制限されています。導入後に、やりたいことが実現できないという事態が発生しないよう、どのような機能を提供しているのか事前に確認しましょう。例えば、セキュリティ対策はローコード開発ツールのベンダーが対応する方が自社のリソースを使うよりも効率的です。

サポートの内容

自社でローコード開発ツールを開発しているわけではないため、自社内で解決できないことがしばしば発生します。ツールを使用していて分からないことを質問できるようなサポート体制を、ローコード開発ツールのベンダーが提供していると便利です。サポートの仕方も電話、メールなど、ベンダーによって異なるため確認するポイントです。

Microsoft Power Appsについて

Microsoft Power Appsについて

Microsoftが提供するノーコード/ローコードソリューション、それが「Microsoft Power Apps」です。Power Appsとはビジネスアプリケーションをプログラミング無しで作成するためのサービスです。「開発ではなく作成」というのがこのサービスの特徴で、ユーザーはプログラムを記述することなく、Power Pointのような直観操作とExcelと同じような関数を入力すれば、誰でも簡単にビジネスアプリケーションを作成できます。

Microsoftの公式ブログによれば、Power AppsはDynamics 365ではカバーしきれない業務アプリケーションを作成する、補完的役割を持つサービスだとしています。SFAやフィールドサービス、プロジェクトマネジメントなど多彩な機能を持つDynamics 365でも、すべての顧客要件に対応できるわけではありません。要件が特殊になればなるほどカスタマイズやアドオン開発が必要になります。

そのためDynamics 365では企業ごとに存在する無数の業務をシステム化できるよう設計されており、それを実現するのがPower Appsなのです。

組織の中にPower Appsがあることで情報システムはソースコード生成を自動化し、ソフトウェア開発に必要な工数を大幅に削減できます。さらに、Power Appsは業務部門での運用も可能です。情報システムがない企業でも少ないトレーニングでIT人材を育てることができ、企業のビジネスニーズを満たすソフトウェアを瞬時に開発できます。

ちなみにPower Appsを利用するためには、以下のMicrosoftクラウドソリューションの契約が必要です。(2023年7月現在)

  • Dynamics 365 for Sales, Enterprise edition
  • Dynamics 365 for Customer Service, Enterprise edition
  • Dynamics 365 for Operations, Enterprise edition
  • Dynamics 365 for Field Service, Enterprise edition
  • Dynamics 365 for Project Service Automation, Enterprise edition
  • Dynamics 365 for Team Members, Enterprise edition
  • Dynamics 365 for Financials, Business edition
  • Dynamics 365 for Team Members, Business edition
  • Office 365 Business Essentials
  • Office 365 Business Premium
  • Office 365 Enterprise E1
  • Office 365 Enterprise E3
  • Office 365 Enterprise E5
  • PowerApps スタンドアロンプラン
  • Microsoft 365 E3
  • Microsoft 365 E5
  • Microsoft 365 F3
  • Microsoft 365 A1 for devices
  • Microsoft 365 A3
  • Microsoft 365 A5
  • Office 365 A1
  • Office 365 A3
  • Office 365 A5

★詳しくはこちら:
「PowerApps」入門編!機能一覧や使い方を画像付きで徹底解説

ローコードの需要はこれからも拡大

ローコードの需要はこれからも拡大

プログラミングができるIT人材が不足している現況において、システム開発の全てをベンダーに外注したり自社の開発部門へ依頼するのはスピードや効率の観点で適切ではありません。一定の知識があれば開発できるローコードはこれからも拡大していきます。調査会社ガートナーの報告によると2024年にはアプリ開発の半数以上がローコードによって提供されると推測しています。

まとめ 

ローコードはITのバックグラウンドがない方でも活用できる開発ツールとして身近になっています。特に本記事でご紹介したPowerAppsは、Microsoftが提供するSharePointやOneDriveを利用している企業であれば既に利用できるケースもあります。PowerAppsはプログラミングの知識がなくても比較的容易に業務用アプリを開発できる手軽なローコード開発ツールです。まずは身近にあるそのようなツールからローコード開発に挑戦してみるのもいかがでしょうか。

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