今、私たちの周りには一昔前には考えあれないほどにデジタルデータが溢れかえっています。このデジタル化の波を日々実感しているビジネスパーソンは多いかと思います。
昨日までアナログで処理されていた業務がシステム化されたり、営業用に新たなモバイル端末が導入されたりと、デジタル化は企業規模を問わず進化しています。
そのような中、頻繁に耳にするようになったデジタルトランスフォーメーションは単なるデジタル化を指す言葉なのでしょうか?それとも違った意味を持つのでしょうか?
「デジタルトランスフォーメーションとは何か?」今回はこのテーマをもとに話を進めていきます。
デジタルトランスフォーメーションとは?
「DX」と略されることも多いデジタルトランスフォーメーションですが、元々は2004年にスウェーデンのウメオ大学のエリック・ストルターマン教授が提唱し始めたビジネス概念の一つです。
日本語訳では「デジタルへの変革」。変革とは「物事を変え、新しい物事を生み出すこと」、つまりデジタル化によって既存のビジネスモデルや様々な業務を、今までとは違った新しいものに変えるという意味になります。
デジタルトランスフォーメーションを体現している企業として有名なのが米Microsoftや米Amazon.comです。世界最大のECとしても知られるAmazon.comは、同社が最初に展開した書籍ネット販売ビジネスは、まさにデジタルトランスフォーメーションの典型でした。「書籍の購入」と言えば、書店へ足を運び、数ある棚から目的の書籍を選んで購入するというのが当たり前の常識でした。
しかしAmazon.comの登場により、書籍はインターネットで簡単に、そして安く購入できる商品へと変化したのです。検索の利便性はもちろん配送日数も短く、品ぞろえも豊富です。さらには購入履歴情報などを活用したレコメンデーション機能を搭載するなど、書籍販売の常識を大きく変革させました。
今では、同社は成功したサービスモデルを他の分野にも応用し、書籍に限らず様々な分野で成功を収めています。世界で最もデジタルトランスフォーメーションを成功させた企業と言ってもいいでしょう。
第3のプラットフォーム、SMAC、Nexus of Forces
デジタルトランスフォーメーションを語る上で欠かせないものが、時代と共に変革したデジタルプラットフォームです。
米IDCではこれを「第3のプラットフォーム」と呼び、例えば米IBMでは「SMAC」、そして米ガートナーでは「Nexus of Forces(力の結節)」を提唱し、いずれも下記4つの要素を含んだ概念です。
- Mobile(モバイル)
- Social(ソーシャル)
- BigData(ビッグデータ)
- Cloud(クラウド)
モバイルとはスマートフォンやタブレットなど、いわゆるモバイルデバイスおよびそれを取り巻く環境変化を指しています。モバイルが重要性を増した理由やスマートフォンやタブレットなどの普及もありますが、最も大きな要因やユーザーのデジタル行動の変化です。
ニールセンの調査によると、ECサイトに対するアクセス状況では、スマートフォン経由が全体の70%とすでにPC経由でのアクセスを上回っています。
そしてソーシャルとはFacebookなどのSNS、ビッグデータは近年注目が集まっている大量の情報分析、そしてクラウドとはIaaS/PaaS/SaaSなどデジタルを新たに牽引するプラットフォームです。
デジタルトランスフォーメーションでは、これら4つの要素を絡ませ、新たなビジネスを創出するという試みが重要になります。
デジタルトランスフォーメーションが必要な背景
デジタルトランスフォーメーションが必要とされる背景として、新たなビジネス価値の創出以外にも、既存のビジネスの再構築など様々な理由があります。
デジタルトランスフォーメーションを行いビジネスの在り方を再構築することで企業は利益の拡大を図るのです。
スタンフォード大学のブライアン・アーサー教授が提唱する「収益逓増(ていぞう)」と「収益逓減」という法則があります。
収益逓増とは、例えば生産規模が2倍になると生産の効率性が上がり、生産量は2倍以上に増加するという法則です。逆に収益逓減とは生産規模が拡大するたびに調達や物流などの複雑性が増し、投資効率が下がっていくという法則です。
では 収益逓増と収益逓減の分岐点とはなんでしょうか?その一つは、社内プロセスやビジネスモデルを「デジタル化しているか否か」です。
デジタルサービスの分野では、収益分岐点を一度超えてしまうと、追加コストがあまり増えないため利益率が徐々に拡大していくという特徴があります。つまり、デジタルトランスフォーメーションによってデジタ的変革に成功すると、収益逓増の法則にのっとって利益率を拡大していくことができます。
もちろん、この他にも他分野へのサービスモデル適用など、デジタルトランスフォーメーションには様々なメリットがあります。
デジタルトランスフォーメーションとMicrosoft Dynamics 365
デジタルトランスフォーメーションを実現させるソリューションとして、Microsoft Dynamics 365を紹介します。
Microsoft Dynamics 365とは、これまでMicrosoftが提供してきたERPとCRMであるDynamics AXとDynamics CRMを統合し、さらにクラウドサービスとしてブラッシュアップしてものです。
サービスは営業支援、顧客サービス、オペレーション、フィールドサービス、プロジェクトサービスの自動化、マーケティング、カスタマーインサイトといった8つのシステムから成り、企業のデジタル化による変革を支えます。
これまでERPとCRMは個別で提供されることの多かったソリューションですが、Microsoft Dynamics 365では2つのソリューションを統合したことにより、全く新しい価値を皆さんに提供しています。
マイクロソフト社が主催したWorldwide Partner Conference2016で公開された上下水道企業を想定したDynamics 365のデモンストレーションでは、Azure IoT Suiteで漏水情報などを自動収集し、機械学習機能を持つCortana Intelligence Suteで分析し、Dynamics 365が現場担当者用の対応画面を自動生成しています。
このように単なるERPやCRMの枠を超えたMicrosoft Technologyの結晶がDynamics 365であり、企業はDynamics 365を導入することでデジタルトランスフォーメーションを加速させることができるのです。
まとめ
各企業のデジタルトランスフォーメーションへの取り組みは、まだ始まったばかりです。しかし、だからといって遅れを取っていると、あっという間に時代の波に置いて行かれてしまうことになります。
まずはデジタルトランスフォーメーションの理解を深め、自社への取り組みについて考えてみましょう。