Microsoft 365には4つのプランがあります。
その中で上位プランに位置するのがMicrosoft 365 E3とMicrosoft 365 E5です。
この2つのプランは提供している機能に類似している点も多いのですが、価格はE3が¥3,910ユーザー/月(税抜)、E5が¥6,200ユーザー/月(税抜)と価格面に大きな差があります。
価格面だけを考慮すればE3の方がお得なのは当然ですが、E5はE3に無い機能を備えています。そのため、ユーザーにとって「結局どちらのプランを選ぶのが良いの?」という悩みが生じがちです。
本稿ではこの悩みを解消するために、Microsoft 365 E3とMicrosoft 365 E5の違いを明確にしつつ、E5を中心としてそれぞれに適した環境などを説明します。
Microsoft 365 E5とは?概要や機能を紹介
Microsoft 365 E5は、Microsoft 365 のプランの中で最も高性能かつ、高価なプランです。
そんな高性能なMicrosoft 365 E5について、他のプランと比較しつつ、どんな機能が利用できるのかに絞って紹介していきたいと思います。
Microsoft 365の最上位プラン「Microsoft 365 E5」
大企業向け Microsoft 365には、F3、E3、E5の3つのプランが存在します。
まず、F3はビジネスプランの中でも現場担当者向けとなっており、一部機能が制限されてますが、他プランに比べコストが抑えられることが特徴です。
そして、E3のプランは、費用と機能のバランスが取れているプランと言われています。
最後のMicrosoft 365 E5は、高度なセキュリティとコンプライアンス機能、さらに分析機能を組み合わせた最上位プランです。
Microsoft 365 E5ならではの機能は?
Microsoft 365 E5が最上位プランと解説しました。
しかし、導入によって何ができるようになるのかを知りたいところだと思います。
ここからはE5ならではの機能について紹介していきます。
Azure Active Directory Premiumプラン2
Microsoft 365 E5ならではの機能1つ目は、Azure Active Directory Premiumプラン2です。
AzureADのP2プランという略され方もします。
多要素認証やIDとアクセス保護の機能で、企業のMicrosoftアカウントのセキュリティ向上が可能です。
「Azure AD Application Proxy」を使用することで、社外のユーザーがビジネスアプリケーションにシングルサインオンでアクセスできるようになります。
E5は高価ですが、ハイレベルなセキュリティ機能とアクセス管理ができるため大企業向けのプランといえます。
Microsoft 365 Defender
「Microsoft 365 Defender」は、Microsoftが提供するエンドポイント(PCやスマホなどの端末)のセキュリティ対策ツールです。
PCやスマホなどデバイスのウイルス脅威検出や保護機能、メールのスパムや不正な添付ファイルの検出機能、クラウドアプリケーションの保護などを行います。
このツールは、エンドポイントのセキュリティを一元管理できることが特徴です。
Power BI Pro
Power BI Proは、Microsoftが提供する「さまざまなデータを視覚化して分析する」ためのクラウドサービスです。
Power BI Proの主な機能を3つ紹介します。
- ダッシュボード:データのダッシュボードを作成し、グラフや表をダッシュボード上に置き、リアルタイム更新が可能です。
- レポート:グラフや表などをレポートに配置、分析しデータの傾向やトレンドを確認することができます。
- データの接続:Power BI Proでは、Excel、SharePoint、Salesforce、Azureなどのさまざまなデータに接続することができます。
その他の機能
Microsoft 365 E5は、さらに多くの機能を利用可能なためいくつか紹介します。
- SharePoint Online: インターネットや社内のポータルサイトとして使用し、文書や画像資料の共有が可能です。
- Yammer: ソーシャルネットワークプラットフォームで、企業内でのコミュニケーションやコラボレーションを支援します。
- Stream: ビデオ共有可能で、動画をアップロードしてストリーミング再生することができます。
- MyAnalytics: 個人の生産性を向上するためのツールで、時間の使い方やメールの取り扱い方法を分析し、アドバイスを提供します。
Microsoft 365 E5を導入する3つの効果・メリット
Microsoft 365 E5の機能や概要の紹介で、ざっくりとしたイメージがついたのではないでしょうか。
さらに導入後の具体的なイメージを持っていただくために、効果とメリットを3つわかりやすく解説していきます。
業務効率化や生産性の向上につながる
Microsoft 365は、OutlookやExchangeを使用して、ビジネスメールの送受信やスケジュール管理を簡単に行えます。
またTeamsやSharePointを使用して、社内コミュニケーションやドキュメント管理を効率化することが可能です。
これらのツールを利用する際は、セキュリティの確保も必要ですが、Microsoft365 E5の導入でセキュリティ対策やアカウント管理も可能です。
生産性向上については、Microsoft 365 E5にAI(人工知能)やBI(ビジネスインテリジェンス)の機能を使い、データ分析や自動化を行うことができます。
さまざまな働き方に柔軟に対応できる
Microsoft 365 E5の導入は、柔軟な働き方をもたらします。
Teamsは、インターネット上でビデオ会議、チャット、ファイル共有が可能で、リモートワークを支援しています。
また、OneDrive for Businessもデータの安全性とアクセス性を高めるためのクラウドストレージサービスで、ファイル共有も可能なため、リモートワークの際に利用可能です。
情報漏えいなどのリスクを軽減できる
Microsoft 365 E5には、情報漏洩などのリスクを軽減するための機能が含まれています。
Azure Information Protectionが代表例で、機密情報を自動的に分類し、暗号化することが可能です。
また、Data Loss Prevention(DLP)を使用することで、機密情報を含むメールなどの送信を自動的にブロックします。
Windows Defender Advanced Threat Protection(ATP)を使用し、不正アクセスやマルウェアなどの脅威の検出も可能です。
Microsoft 365 E3とMicrosoft 365 E5の違い
そもそもMicrosoft 365とは、Office 365とWindows 11、それとEMS(Enterprise Mobility+Security)を包括的に提供するクラウドサービスです。従来、それぞれのサービスや製品は個別に提供されてきましたが、Microsoft 365の登場によって統合的な利用が可能になっています。
Office 365
ExchangeやSharePoint、Skype for Businessといったお馴染みのサーバー製品をオンライン版で提供し、かつ組織のコミュニケーションが促進される多数の機能を提供するコラボレーションツールです。さらに、ExcelやPowerPointといったMicrosoft Officeのライセンスをサブスクリプションタイプ(定期購買型)で提供し、各Officeアプリケーションを最大15台の端末にインストール可能です。
Windows 11
マイクロソフトが提供する最新OSです。2021年11月に、前のバージョンから6年ぶりにリリースされました。Windows 10からの大きな変更点はデザインの一新です。また、Android端末用のアプリをWindows上で使用できるようになっています。Windows 11 Proといった法人向けのエディションも用意されています。
EMS(Enterprise Mobility+Security)
オンラインでモバイルデバイスセキュリティ管理を実現するツールであり、デバイスの多様化が進むビジネスシーンにおいて、異なる端末の総合的管理が行えます。
Microsoft 365 E3もMicrosoft 365 E5も提供する機能の基本構成は同じです。違いは、プランに含まれる各サービスのエディションが異なることです。
Microsoft 365 E3にはOffice 365 Enterprise E3、Windows 10/11 Enterprise E3、それとEMS(Enterprise Mobility+Security)E3が含まれています。一方Microsoft 365 E5にはOffice 365 Enterprise E5、Windows 10/11 Enterprise E5、EMS(Enterprise Mobility+Security)E5が含まれています。
各サービスにおけるエディションの違いを確認していきましょう。
Office 365 Enterprise E3とOffice 365 Enterprise E5の違い
Office 365はExchange OnlineやSharePoint Online、Skype for Business OnlineといったコラボレーションツールとOfficeライセンスを中心に、上位プランになるほど高度なセキュリティ保護機能やデータ分析ツールを備えています。まずは、Office 365 Enterprise E3の機能を一覧で紹介します。
Office 365 Enterprise E3の機能
- Word、Excel、PowerPoint、Outlook、OneNote、Access、Publisherを5台のPC、5台のスマートフォン、5台のタブレットにインストール
- オンラインで利用するWord、Excel、PowerPoint
- ユーザーごとに100GBのメールボックスが付いたExchange Online
- 容量無制限のクラウドストレージが付いたOneDrive for Business
- ファイル共有スペースとサイト作成機能を備えたSharePoint Online
- 遠方の相手とも対面でのコミュニケーションが取れるSkype for Business
- 最大10,000人に向けたブロードキャスト会議の開催
- チームごとに各機能の集中管理を実現するMicrosoft Teams
- チームのプロジェクトとタスク単位で管理するMicrosoft Planner
- Outlook 内で顧客関連情報管理が行えるOutlook Customer Manager
- ビジネスの管理を効率化するMicrosoft Booking
- スケジュールとスタッフの日常管理を実現するMicrosoft StuffHub
- Office 365の検索性を高め素早い情報アクセスを行うMicrosoft Graph
- 通知の受信、ファイル同期等のワークフローを自動化するMicrosoft Flow
- 組織内のフラットなコミュニケーションを実現するYammer
- Webアプリまたはモバイルアプリを素早く構築するPowerApps
- インプレース検索、ホールド、エクスポートを備えたeDiscovery(電子情報開示)
- 稼働率 99.9% 保証と返金制度を持ったSLA(Service Level Agreement)
- シングルサインオンの実装やActive Directoryとの統合
- 最大ユーザー数無制限
- 24時間年中無休の優先的な電話/Webサポート
Office 365 Enterprise E5の機能
Office 365 Enterprise E5はE3をすべて包括した上で、さらに次のような機能を持っています。
- Exchange OnlineのAdvanced Threat Protection(標的型攻撃保護)で悪意のあるリンクや添付ファイルからメールボックスを保護
- 自分のメールボックスにサポート担当者がアクセスする方法をカスタマーロックボックスで制御
- 自動分類、スマートなインポートなどが可能なアドバンストデータガバナンス
- リスクを評価し、潜在的な脅威に関する情報が得られるOffice 365 Cloud App Security
- 個人や組織の高度な分析を実現するMyAnalyticsとPower BI Pro
- さまざまなデバイスでの電話発信、受信、転送を可能にするクラウドPBX
- 会議のダイヤルイン番号に電話をかけて参加できる電話会議
Windows 10/11 Enterprise E3とWindows 10/11 Enterprise E5の違い
Windows 11 は通常、ボリュームライセンスとして購入するOS製品ですが、Windows 10/11 Enterprise E3はこれをサブスクリプションタイプで組織に配布できるクラウドサービスです。Windows 11がサブスクリプションとして提供されることで、これまで問題になりやすかったライセンス管理を管理センターから集中的に管理でき、情報システム担当者の負担を大幅に軽減します。
さらに、Windows 11は常に最新の状態が保たれるのでアップデートへの対応等の負担も軽減し、全体的に効率良く運用が可能なOS製品です。もう1つのメリットは1つのサブスクリプションでWindows 11を数台の端末に展開できることです。
Windows 10/11 Enterpriseならば、1つのサブスクリプションで複数台の端末に展開できるため、ライセンスコストを最小限に留めつつ、異なる端末でも同じデスクトップ環境を構築できるという利点があります。
Windows 10/11 Enterprise E3とWindows 10/11 Enterprise E5の違いは、E5に追加のセキュリティ機能が備わっている点です。Windows 11 Enterprise E5には「Windows Defender 脅威保護」が含まれており、Windows 11 Enterprise E3に比べてより強力なセキュリティを実現します。
EMS(Enterprise Mobility+Security)E3とE5の違い
EMSはマイクロソフトが提供するエンタープライズモビリティ管理の製品であり、その中のデバイス管理サービスの機能によって、パソコンやスマートフォン、タブレットといった多様なデバイスを総合的に管理します。管理するデバイスがWindowsを搭載しているかどうかは関係なく、OSに依存しない管理が可能です。EMSの機能について下記にまとめました。
- モバイルデバイス管理
- モバイルアプリケーション管理
- Office 365の高度なデータ保護
- 統合的なパソコン管理
- 統合的なオンプレミス管理
- 多要素認証
- 条件付きのアクセス
- セキュリティレポート
- 永続的なデータ保護
- 標的型攻撃からの保護
EMS(Enterprise Mobility+Security)E3とE5の違いとしては、提供するセキュリティ機能の範囲です。E3にはAzure Active Directory Premium P1、Microsoft Intune、Azure Information Protection P1、Microsoft Advanced Threat Analytics、Windows Server CALの権利が含まれています。一方E5はE3が提供するすべてのセキュリティ機能に加えて、 Microsoft Cloud App Security)やプレビューとして提供されていた機能 (Azure Active Directory [AD] Identity Protection、Azure AD Privileged Identity Management、Azure Information Protection)が搭載されています。
Microsoft 365 E3とMicrosoft 365 E5選択のポイント
ここまでMicrosoft 365 E3とMicrosoft 365 E5の違いを一気にご紹介しましたが、最終的にどういった視点からこれらのプランを選べばよいのか?一般的にMicrosoft 365 Enterpriseラインナップは中堅・大企業向けに提供されているプランですが、近年では中小企業からのニーズも増えているかと思います。
その理由としては「中小企業にも高度なセキュリティが求められている」ということでしょう。従来、サイバー攻撃の対象は中堅・大企業だと考えられてきましたが、最近ではセキュリティ対策が甘い中小企業への侵入を入り口として、その取引先である中堅・大企業へのサイバー攻撃を試みます。
さらに、近年ではサイバー攻撃を簡素化するツールも流通していることから、中小企業を対象としてサイバー攻撃が劇的に増加しています。そのため、選択のポイントとしては「中小企業でも優先的に検討すべき」がまず挙げられます。
Microsoft 365 E3とMicrosoft 365 E5のどちらが良いかに関しては、そこに求めるセキュリティ機能と分析ツールについて選択しましょう。Microsoft 365 E5には高度なセキュリティ機能やビジネスインテリジェンス等のツールが含まれていますが、Microsoft 365 E3ではそれらの機能の一部が提供されていません。
もちろん、その分Microsoft 365 E3の方が低価格で提供できていますが、ビジネス上の目標達成を考慮すると必ずしも価格だけでは判断できない部分もあるでしょう。本稿でご紹介したMicrosoft 365 E3とMicrosoft 365 E5の違いを掘り下げて情報を整理して、より具体的な検討をしていただきたいと思います。
- ミッションを実現するYammer
- Webアプリまたはモバイルアプリを素早く構築するPowerApps
- インプレース検索、ホールド、エクスポートを備えたeDiscovery(電子情報開示)
- 稼働率 99.9% 保証と返金制度を持ったSLA(Service Level Agreement)
- シングルサインオンの実装やActive Directoryとの統合
- 最大ユーザー数無制限
- 24時間年中無休の優先的な電話/Webサポート
まとめ
今回は、Microsoft365 E5とE3のどちらを選ぶべきかというテーマで、E5の概要や導入メリットを解説してきました。
E5とE3を比較した時、一番の決め手となるのが価格になります。
大企業はE5、中小企業はE3がおすすめといわれています。
しかし、Microsoft 365 Defenderなどでセキュリティ対策を行い、Power BI Prを利用して分析が行えるなど、E5ならではの魅力があるため価格だけで決定することはできません。
自社でどの機能が必要かしっかりと考慮し検討する必要があります。