最近いたるところで“サブスクリプション”という言葉を見聞きしますね。これは、日本語でいうところの“定額制”と同じ意味があります。
サブスクリプションを辞典で調べてみると、大辞林第三版では「製品やサービスなどの一定期間の利用に対して、代金を支払う方式。」と説明されています。まさに定額制を意味した言葉ですね。
今回はこのサブスクリプションについて、より詳しく解説していきたいと思います。
なぜ、あえてサブスクリプションなのか?
サブスクリプションと言うよりも定額制と言った方が、直感的に意味を理解できますし、日本人にとっては後者の方が圧倒的に親しみやすい言葉です。しかし最近では、定額制よりもサブスクリプションという言葉の方がよく見聞きするようになったのではないでしょうか。
IT業界ではしばしば、あえて日本語ではなくカタカナ語のビジネス用語を使用することがあります。その理由は「カタカナ語の方が響きが良いし話しやすい」という単純なものと、「日本語ではその本質を捉えきれなくなったから」という理由があります。サブスクリプションはどちらかというと後者でしょう。
定額制と聞くと、決まった金額を支払えば何でも使い放題というイメージを持つ方多いかと思います。恐らくこれは、日本の携帯業界では長らく“パケット放題”などのサービスを提供しており、自然とこのサービスに触れることが多くなっていたからでしょう。
しかしサブスクリプションとは決まった金額を支払えば、何でも使い放題というわけではありません。一般的には複数のプランが用意されていて、プランごとに出来ることと出来ないことが違います。決して何でも使い放題という意味ではないため、定額制という言葉を使用してしまうとユーザーに誤解を生ませてしまう可能性があるでしょう。
定額制という言葉のイメージを払拭するためにも、新しい言葉を使用するのが最適であり、こうした理由もあってサブスクリプションという言われ方が普及したのではないかと考えます。
様々なサブスクリプション
サブスクリプションと定額制はイコールであってイコールではない。ならば、サブスクリプションは一体どういったサービスが提供されているのか?と疑問を持たれる方も多いかもしれません。サブスクリプションとして提供されているサービスは色々とありますし、特定のサービスも指すものではありません。ここでその一部をご紹介します。
Office 365
Office 365はマイクロソフトが提供する、Officeライセンスを含むコラボレーションツールサービスです。Office 365のサブスクリプションを契約すればExcelやPowerPointといったOfficeアプリケーションを最大15台のデバイスにインストールできたり、この他にもExchange OnlineやSharePoint Onlineといった人気のコラボレーションツールをオンラインで使用できます。
サブスクリプションプランは全部で7つあり、上位プランにいくほど高度な管理機能やセキュリティ機能、データ分析機能などを備えており、零細企業から大企業まで世界4万社以上が利用しているサービスです。
NOREL
NOREL(ノレル)は中古車買取・販売チェーンのガリバーを運営するIDOMが提供する、サブスクリプション型の自動車乗り換えサービスです。プランに応じた金額を支払えば、好きな車種にいつでも乗り換えられます。取り扱い車種はトヨタ自動車のクラウンや日産自動車のエルグランドといった国産車から、メルセデスベンツのB180やシトロエンのDS5 Chicなどの輸入車も揃えています。
90日間の最短利用期間を過ぎればいつでも好きなタイミングで乗り換えられるので、季節ごとに自動車を乗り換えたいというユーザーや、家族を持つ30代~40代のクルマ好きユーザーから人気を集めています。
Dollar Shave Club
Dollar Shave Clubは米国の10代~20代の男性から絶大な人気を集めている髭剃りの定期お届けサービスです。毎月1ドル(Dollar)から髭剃(Shave)をお届けるする会員制サービス(Club)であり、その斬新なサービスからGilletteやShickといった大手が支配する寡占市場において、2012年の創業からわずか4年で220億円の売り上げをマークし、会員数は320万人以上にのぼっています。
こうした今までは存在しなかった新しいサービスを提供する際も、やはり定額制ではなくサブスクリプションという言葉を使用した方が、そのイメージを捉えているのではないかと思います。
この他にも毎月1本好きな映画が観れるというサブスクリプションサービスや、月額料金を支払うことで高速道路に好きなだけ乗れるというサブスクリプションサービスも提供されています。
Office 365について
ここで、マイクロソフトが提供するOffice 365をピックアップしてそのサブスクリプションについて詳しく解説したいと思います。
前述のようにOffice 365はクラウドサービスとしてOfficeライセンスや多数のコラボレーションツールを提供するものです。サブスクリプションとして提供され、全部で7つのプランを容易しています。各プランの特徴は次の通りです。
プラン |
特徴 |
ユーザーあたりの月額料金 |
Business Essentials |
Exchange Online、SharePoint Online、Skype for Businessなど複数のコラボレーションツールを提供。Officeライセンスは無し。 |
540円 |
Business |
最大15台のデバイスにインストールできるOfficeライセンスと、ユーザーあたり1TBのクラウドストレージを提供。 |
900円 |
Business Premium |
Business EssentialsとBusinessを統合し、かつチームのコミュニケーションを強化する機能を搭載。 |
1,360円 |
ProPlus |
最大15台のデバイスにインストールできるOfficeライセンスと、ユーザーあたり1TBのクラウドストレージ、それとSkype for Businessを提供。 |
1,310円 |
Enterprise E1 |
Exchange Online、SharePoint Online、Skype for Businessなど複数のコラボレーションツールを提供し、最大1万人に向けたブロードキャスト会議が可能。Officeライセンスは無し。 |
870円 |
Enterprise E3 |
Enterprise E1のすべての機能に加えてOfficeライセンスや容量無制限のクラウドストレージ、それと高度な管理機能を提供。 |
2,180円 |
Enterprise E5 |
Enterprise E3のすべての機能に加えて高度なセキュリティ保護機能とデータ分析機能を提供し、ビッグデータ分析にも活用できる。 |
3,810円 |
このようにOffice 365のサブスクリプションプランは、それぞれに違った特徴があり、企業ごとのニーズに合わせて最適なプランを選ぶことができます。
サブスクリプションのメリットとは?
では、サブスクリプションサービスを利用することのユーザーとしてのメリットとは何でしょうか?
決まった金額でサービスが利用できる
サブスクリプションはサービス利用した分だけ料金が発生するのではなく、決まった金額を支払うことでプランに含まれる内容を利用できるというサービスです。そのためコストが一定化し、月々の予算取りが行いやすくなります。
いつでもプラン変更できる
複数のプランを提供しているサブスクリプションサービスは、大体のものが途中でのプラン変更を可能にしています。サービスによって条件の違いはあるものの、環境の変化に応じて変更できるのは大きな利点でしょう。
手間がかからない
たとえばIT製品をクラウドサービスとして提供している場合(Office 365のように)、ユーザーはそのシステム運用やアップデートに関わることなく常に最新のシステムを利用できます。そのため運用の手間がかからず、IT人材のいない企業でも利用できるでしょう。
今後もサブスクリプションは拡大する
サブスクリプションサービスの波は、IT業界を中心にあらゆる業界にその範囲を拡大しています。今後もサブスクリプションビジネスを主体として斬新なサービスが登場していくことでしょう。皆さんも、今後のサブスクリプションサービスの動向にご注目ください。