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デジタルガバメントとは?基本概要や実行計画を詳しく解説

デジタルガバメント」とは、少子高齢化や生産年齢人口の減少といった国の課題に対処すべく、政府が注力している取り組みのひとつです。本記事ではデジタルガバメントの概要や、デジタルガバメントの推進によって国民や企業にどのような恩恵がもたらされるのかを解説します。

デジタルガバメントとは?基本概要や実行計画を詳しく解説

デジタルガバメントとは?

「デジタルガバメント」とは、デジタル技術を活用しながら行政サービスを見直し、国が抱える社会問題の解決や経済成長を実現するための改革を指します。「行政サービスを利用者にとって便利で使いやすいものにすること」「官民の生産性を低下させる要因を取り除くべく、行政の縦割りや官民の垣根を超え、行政の在り方さらには社会全体をデジタル技術によって作り変えていくこと」を目的としています。

デジタルガバメントが実現すれば、すべての行政手続きがインターネットを経由して24時間いつでもどこでも申請できるようになり、国や企業の利便性が飛躍的に向上するとされています。

デジタルガバメントが推進される背景

少子高齢化の進行に伴う生産年齢人口の減少や、都市圏への人口集中などにより、消滅の危機に瀕している地方都市があります。こうした状況下において、従来のような単一的な行政サービスでは、国民一人ひとりのニーズに応えられなくなっています。社会構造の変化に伴って生じた様々な課題を解決するためには、デジタル技術を活用し、必要な行政サービスを時間や場所にとらわれず受けられるようにする仕組みが必要なのです。

デジタルガバメントの目的

これまでも、紙で行っていた行政の手続きをオンラインにて完了できるようにするなど、従来の手続きをデジタル化する取り組みは進められてきました。

それに対しデジタルガバメントは、単に情報システムを構築したり、手続きをオンライン化したりするだけではありません。既存の手法をゼロベースで見直し、デジタル技術を活用して、官民の生産性を低下させる要因を取り除きます。その結果、捻出された時間や労力をより良質なサービスの提供に振り向け、新たな社会基盤を構築していくことを目指しています。

デジタルガバメントの現状

各種手続きをデジタル化する取り組みは進んでいるものの、オンラインによる申請はまだ少なく、分野も限定的です。中でも地方自治体においては、オンラインによる行政手続きの利用率は、全体の半数程度に留まっています。

その要因としては、窓口への来訪や紙での申請を前提とする各種規制、申請書の書式や様式が機関ごとに統一されていないこと、システムの使い勝手の悪さなどが挙げられます。

デジタルガバメントを推進していくためには、オンラインでの手続きを利用した際にインセンティブを付与する、制度・法令・情報システムを見直すなど、オンライン化を阻む要因を取り除いていくことが必要です。

デジタルガバメント実行計画とは?

政府は2017年5月、行政の在り方をデジタル前提で見直すことを示した、「デジタルガバメント推進方針」を策定しました。その後2018年1月に策定され、2019年12月に閣議決定された「デジタルガバメント実行計画」は、この推進方針で示された方向性を具現化するための計画です。

さらにデジタルガバメント実行計画は、新型コロナウイルス感染症への対策を進める中で明らかになった課題を踏まえ、2020年12月に改定されています。

実行計画の中には、行政手続きのデジタル化をはじめ、個人や法人関係の手続きのワンストップサービス推進、マイナンバーカードの普及促進などについての方針が示されています。

デジタルガバメントによってどう変化するのか?

デジタルガバメントの実現により、国民や企業にはどのようなメリットがもたらされるのでしょうか。

ワンストップ化の実現

ワンストップサービスとは、一度の手続きで複数の行政手続きが完了できるサービスです。従来はサービスによって窓口がそれぞれ分かれており、いくつもの窓口をはしごする必要がありました。ワンストップサービスが実現されれば、個人と企業の双方の利便性が向上し、各種手続きにかかる負担を大幅に減らすことが可能です。

デジタルガバメントにおいては、個人の子育てや介護、引越し、死亡・相続のほか、法人の設立や登記変更、企業が行う従業員の社会保険・税といった手続きのワンストップ化が計画されています。

Society5.0の実現

デジタルガバメント実行計画を推し進めていくうえでは、「Society5.0」という考え方が前提となっています。Society5.0とは、仮想空間と現実空間を最先端のデジタル技術を活用して高度に融合させ、社会課題の解決と経済発展の両立を目指す社会を指します。これまでの情報社会(Society4.0)では、情報や知識の共有が十分にできておらず、特に過疎化地域などでは情報を得るための環境整備にも制約がありました。

それに対しSociety 5.0が目指す社会では、IoTによってすべての人とモノとをつなげ、さらにAIを活用することで、必要なタイミングで必要な情報を得られるようになります。人がインターネットを経由して情報にアクセスするのではなく、現実空間にあるセンサーから仮想空間へと膨大な情報が集積されます。そして、仮想空間に集められたビッグデータをAIが解析し、その結果の情報を現実空間の人間へとフィードバックする仕組みです。

Society 5.0が実現すれば、社会問題となっている少子高齢化や地方の過疎化、貧富の差などの解消が期待できるとされています。

行政自身のDX推進

行政自身がDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進することは、結果として日本全体の労働生産性の向上や、働き方改革の促進につながります。

中央官庁においても、対外的な業務に関しては年々デジタル化やオンライン化が進んでいますが、行政の内部は未だに紙文化が根強く残っています。そのため、行政と連携する民間企業は、打ち合わせでの資料や提案書などを紙で用意しなければならないのが実情です。行政機関でペーパーレス化やリモートワークが浸透すれば、民間企業の生産性を保ちつつ、これまで以上にDXが後押しされることになるでしょう。

行政サービスの利便性向上

デジタルガバメントの実現にあたり、行政サービスは国民や企業にとって「すぐに使えて」「簡単で」「便利」なものでなければなりません。政府は、そのベースとなる指針として「サービス設計12箇条」を標榜しています。各項目は以下の通りです。

  • 第1条 利用者のニーズから出発する
  • 第2条 事実を詳細に把握する
  • 第3条 エンドツーエンドで考える
  • 第4条 全ての関係者に気を配る
  • 第5条 サービスはシンプルにする
  • 第6条 デジタル技術を活用し、サービスの価値を高める
  • 第7条 利用者の日常体験に溶け込む
  • 第8条 自分で作りすぎない
  • 第9条 オープンにサービスを作る
  • 第10条 何度も繰り返す
  • 第11条 一遍にやらず、一貫してやる
  • 第12条 情報システムではなくサービスを作る

こうした観点から、政府は利用者の利便性を向上すべく、デザイン思考を導入しています。行政サービスのフロント部分をデジタル化するだけでは不十分と考え、サービスを受ける必要性が生じてからサービス提供後までの行動様式を踏まえ、最良なUX(ユーザーエクスペリエンス)の提供を重視しています。

まとめ

デジタルガバメントが実現されれば、単に行政手続きの負担が減るだけでなく、企業の労働生産性の向上や、少子高齢化に伴う過疎地域の消失防止も期待できます。制度や法令の整備など課題は残るものの、日本が抱える社会問題を解決し、経済を発展させていくためには、デジタルガバメントの推進は政府にとって喫緊の課題といえるでしょう。

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