スプレッドシートは計算や分析に使われる最も身近なツールです。実際に、多くの企業で業務用アプリケーションとして採用しています。一方で、入力業務を効率化したい、スプレッドシート以外での情報管理に移行したいといった需要も少なくありません。この点を解決できるのがスプレッドシートのアプリ化です。ただし、一般的にアプリを開発するためにはコストがかかります。そこで、できるだけコストを抑えるためにローコード・ノーコード開発が可能なソリューションを選定していきましょう。
スプレッドシートのアプリ化とは
まず、スプレッドシートのアプリ化の概要やできること、メリットなどを解説します。
スプレッドシートアプリ化の概要
スプレッドシートのアプリ化とは、「スプレッドシートをデータソースとして、データの入出力や簡易的な分析を行うアプリを作成する」ことです。スプレッドシートのアプリ化では、「データ管理アプリ」や「PWAアプリ」の開発などが可能です。
データ管理アプリとは、データを蓄積しておく簡易的なデータベースと、データの管理・操作を行う機能が合体したアプリです。業務で頻繁に使用するデータを入力・編集したり、呼び出して表示したりといった操作が簡単に行えます。例えば顧客名簿や在庫一覧表などをスプレッドシートで管理している場合は、アプリ化によってより便利なツールに生まれ変わるでしょう。
また、PWAアプリとは、OSなどの環境に依存しないクロスプラットフォームでありながら、ネイティブアプリのような使い勝手を持つWebアプリです。「環境に依存しないWebアプリ」と考えるとイメージしやすいかもしれません。PCやスマートフォン、タブレットなど異なるOSが混在する環境では、PWAアプリの利便性を体感しやすいでしょう。
スプレッドシートアプリ化のメリット
スプレッドシートのアプリ化による最大のメリットは、「無理なく自然に業務効率化が進む」ことです。使い慣れたスプレッドシートの情報管理をそのままアプリに移行するため、学習負荷が小さくて済み、スムーズに業務効率化が達成されます。
また、スプレッドシートのアプリ化はノーコード・ローコードで進められることが多く、エンジニア以外の人材でも開発が可能です。社内にエンジニアがいない企業や、いわゆる「一人情シス」のような体制であっても容易に開発することができます。さらに、業務に携わる担当者が直接アイディアをアプリにできるため、使いやすく実用性の高いアプリになることもメリットのひとつです。
ローコード、ノーコード開発の強み
前述したように、スプレッドシートのアプリ化は、ノーコード・ローコード開発で進められることが多いです。ノーコードの場合はコーディング作業が一切発生せず、ローコードではごく少量のコーディング作業で開発が完了します。ノーコード・ローコード開発はエンジニアの確保が難しい企業にとって、デジタライゼーションやDXのきっかけになる施策と言えます。そこで、ノーコード・ローコード開発の強みについても理解しておきましょう。
開発作業が身近になる
ノーコード・ローコード開発は、要件定義や設計、コーディングといった工程を大幅に短縮して開発できるため、場合によっては数時間~数日という短期での開発が可能です。当然のことながら、コストも最低限で済むことが多いでしょう。このことから開発作業が身近になり、社内に「必要な業務アプリは自分で造ってみよう」という風潮を生み出します。
業務と仕様のミスマッチが起こりにくい
ノーコード・ローコード開発は、プログラミング言語に対する知識を持たない人材でも開発を進めることができます。それまではプログラマーやSEに委託していた開発業務を、業務担当者が独自に進められるため、「要件を熟知している人間が直接開発する」ことが可能です。このことが業務とアプリ仕様のミスマッチを防ぎ、業務適合度の高いアプリを短期間で製造できるようになるでしょう。
デジタイゼーションが進む
ノーコード・ローコード開発が浸透していくと、アナログな業務が徐々に効率化されていきます手入力で行われていたデータがデジタル化されやすくなるため、デジタイゼーションが進むのです。デジタイゼーションは、DXの準備段階のひとつと考えられるため、将来的にDXを目指すのであればノーコード・ローコード開発に親しんでおくのが得策かもしれません。
アプリの乱立に注意
ただし、ノーコード・ローコード開発にも課題はあります。それは、業務アプリの製造が身近になることで社内にアプリが乱立し、管理しきれなくなることです。また、スタンドアロンなアプリが増えることで連携が難しくなり、徐々にサイロ化が進んでしまうリスクも考慮しなくてはいけません。こうしたリスクを回避するために、あらかじめ統合された環境での開発を進めたいところです。
PowerAppsで実現するスプレッドシートアプリ化
スプレッドシートのアプリ化は、クラウドプラットフォームが提供するアプリ開発ツールで進める方法がおすすめです。Microsoft社が提供するアプリ開発ツール「PowerApps」は、スプレッドシートのアプリ化を含めたノーコード・ローコード開発をサポートします。
業務のデジタル化をサポートする「Power Platform」
Power Platformは、業務アプリ開発や外部サービスとの連携、機械学習、BIを用いた分析、RPAなどを含むツール群です。PowerAppsはPower Platformのいち機能であり、次のような強みを持っています。
PowerAppsの特徴と強み
低コスト、短期間で業務アプリ開発
PowerAppsでは、事前に構築されたテンプレートにしたがって、ドラック&ドロップを基本とした操作を進めることでアプリ開発が完了します。技術的な専門知識を持たない人材でもアイディアを素早く形にすることが可能です。また、エンジニアとの間に発生する要件定義や設計といった工程を省略できることから、低コストでのアプリ開発につながります。
外部サービス、データとの柔軟な連携
Dynamics365やOffice365を使用している場合は、データ連携を考慮したアプリ開発が可能です。また、Google Calendarなどの著名なサービスとの連携も含めることができます。
使い慣れたUIで進められる
PowerApps は、PowerPoint の UI と Excel 関数のイメージを踏襲しながらアプリ開発を進めることができます。使い慣れたUIで作業を進められるため、長時間の専門的な学習を必要としません。
まとめ
今回は、スプレッドシートのアプリ化に関する基礎知識やノーコード・ローコード開発の利点などを解説しました。スプレッドシートのアプリ化は、社内にノーコード・ローコード開発の潮流を広めるきっかけになるでしょう。また、業務効率化だけではなく、デジタイゼーションを進めることでDXへの布石にもなり得ます。こうしたメリットを享受するために、PowerAppsのような学習コストの小さいサービスの活用がおすすめです。