業務効率化を実現したいとき、RPAの導入は非常に魅力的な選択肢のひとつです。RPAとは、時間のかかる単純な定型作業を自動化し、従業員の負担を減らしつつ、迅速な業務遂行を可能にするITツールです。本記事では、RPAの基本を学びたい方向けに、RPAの種類やできることなどについて分かりやすく解説します。
RPAとは
RPA(Robotic Process Automation)とは、コンピューター上で実行される比較的単純な定型作業を自動化するロボット(ソフトウェア)のことです。これにより、定型作業に従来要していた労力および人件費を大幅に削減するとともに、コンピューターならではの処理速度と正確さで業務のスピードアップとヒューマンエラーの大幅な低減が見込めます。つまり、RPAの導入によって、企業は生産性を何倍にも向上させることができるということです。
RPAが注目を集める理由
RPAが注目を集めている背景として、深刻な労働人口不足や働き方改革の促進などが挙げられます。
現在、日本では少子高齢化が進行しており、労働人口の不足が年々深刻化しています。厚生労働省の『令和2年版 厚生労働白書』によれば、日本の就業者数は2019年時点で6,724万人というデータですが、この数字は2040年までに5,245~6,024万人まで減少すると予測されています。つまり、この予測によると、日本の労働者はこの先20年以内に最低でも10%以上減少してしまうということです。
こうした深刻な状況に対応するために厚生労働省が掲げているのが、働き方改革の推進です。働き方改革では、長時間労働の是正やテレワークの推進など、労働者が働きやすい労働環境を整備することを目指しています。来たる少子高齢化社会に備えて、多様な人材が働ける社会を築くことが狙いのひとつです。
RPAをはじめとするITツールの活用は、この働き方改革を実現するための重要な手段です。人手を要していた作業をRPAにより自動化することで、従来と同じかまたはそれ以上の生産性を確保しつつ、従業員の労働負荷や労働時間を削減することができます。つまり、RPAは人手不足が社会的全体で深刻化する中、少ない人数や時間で従来以上の成果を生みだすためのツールともいえるでしょう。
RPAの種類
一口にRPAといっても、そこにはさまざまなタイプの製品が存在します。そこで以下では、RPAの主だった種類や、それぞれのメリット・デメリットについて解説していきます。
サーバー型RPA
サーバー型RPAとは、PCが接続されている専用のサーバーとロボットを接続する方法です。大きな括りとしては、オンプレミス型RPAに分類されます。サーバー型RPAは、そのサーバーと接続されている全てのPCで自動化作業を実行できるため、社内に広くRPAを導入し、一元管理したい場合に適しています。また、後述するデスクトップ型RPAとは異なり、RPAの稼働中もPCで他の作業を同時並行で行える点もメリットです。
さらに、自社サーバー内に構築するため、セキュリティ性が高い点もサーバー型RPAの特筆すべき点だといえます。RPAで自動化する作業の中には、従業員や顧客の個人情報など機密性の高い情報が含まれることもあるため、サーバー型RPAのこの性質は大きなメリットといえるでしょう。ただし、サーバー型RPAは他の種類と比べてコストがかかってしまう点はデメリットといえます。また、技術的な難度も高くなります。そのため、基本的には大企業に適した種類のRPAといえます。
デスクトップ型RPA
デスクトップ型RPAは、個々のPCに直接RPAソフトウェアをインストールする方法です。サーバー型RPAと同じく、オンプレミス型RPAに分類されます。デスクトップ型RPAは、それぞれのPCにソフトを導入するだけで利用できるため、段階的あるいは限定的にRPAを導入したい場合に適しています。
また、デスクトップ型RPAはプログラミングスキルがなくても簡単に自動化できる機能が搭載されていることも多いため、現場主導でRPAの活用を進めたい場合にもおすすめです。さらに、安価に導入しやすいため、同じオンプレミス型のサーバー型RPAと比べてRPA入門者に適しているといえるでしょう。
ただし、デスクトップ型RPAはサーバー型とは異なり、自動化作業を実行している際に他の作業を行えません。また、PCの性能によって動作の安定性が左右されたり、Windows OSにしか対応していない製品が多かったりと、個々の端末に依存する部分が多い点もデメリットといえます。
クラウド型RPA
クラウド型RPAは、インターネットを経由してロボットを使用し、Webブラウザ上で実行する作業を自動化するタイプのRPAです。クラウド型RPAは製品の提供元であるベンダー企業のサーバーを利用しているため、ユーザー側は自分でサーバー環境を構築する必要がありません。そのため、導入コストを抑えられます。RPAの実行中に他の作業を並行することも可能です。
クラウドサービスは基本的に従量課金制で提供されるため、必要に応じてコスト調整ができる点も魅力です。また、RPAの保守管理やバージョンアップもベンダー企業が行ってくれるため、ユーザーは余計な労力を払うことなく、最新のシステムを快適に利用できます。これらの点からクラウド型RPAは、資金や技術力に不安があるスタートアップの企業や中小企業にも適しているといえるでしょう。
ただし、インターネット接続を前提としたクラウド型RPAは、オンプレミスのシステムやファイルを使った作業には適用できないというデメリットもあります。また、セキュリティ機能もベンダー企業によって左右されるため、特に重要な情報をRPAで扱う予定がある場合は、その製品が自社のセキュリティ要件を満たしているかどうかを慎重に確認しなければなりません。
RPAにできること
RPAで自動化するのに適している主な業務は、単純な定型業務やシステムの管理、データの収集・分析や業務時間外の業務などです。
たとえば、大量のデータを一定の手順でシステムに登録するような作業は、RPAが得意とする典型的な領域です。こうした登録作業はコピー&ペーストの単調な内容になることから、ヒューマンエラーが発生しやすい業務でもあります。そのため、RPAの活用を進める際の手始めに適しているといえるでしょう。給与や経費の計算処理などの正確さが要求される業務も、RPAの正確さが活かされやすい作業です。
また、複数のシステム間でデータを収集・集計・分析する作業もRPAによる自動化が活かされやすいものだといえます。たとえば、自社のECサイトにリアルタイムに蓄積されていく顧客情報をマーケティング分析したいときは、適宜更新されるデータの収集・反映作業をRPAで自動化することで、分析作業の工数を大きく削減可能です。
さらに、業務時間外の対応などもRPAを活用したい分野です。深夜や休日にまで及ぶような単純作業をRPAに代行させることで、時間外労働に伴う人件費を大きく削減しつつ、業務を遅滞なく完了できます。RPAの導入による時間外労働の削減は、従業員のワークライフバランスの改善にも役立つのはもちろん、先に紹介した働き方改革の実現にもつながるでしょう。
まとめ
RPAとは大量のデータを扱うような、単純かつルーティン的な作業を自動化するソリューションです。RPAを導入することで、ユーザーは従業員の業務負担を軽減しつつ、業務の正確さや迅速さを確保できます。
「Microsoft Power Automate」はMicrosoft Azure上で提供されているクラウド型RPAです。Power Automateのテンプレート機能や直感的な操作性は、ITスキルがない方でも自動化フローを簡単に作成することを可能にします。RPAを導入する際は、ぜひMicrosoft Power Automateを利用してみてはいかがでしょうか。