「古い業務システム」を使い続けることに意味はあるのか?いわゆるレガシーシステムと呼ばれる業務システム達は、長らく企業ビジネスを根底から支え続けてきました。しかし、果たしてこれからも同じようにビジネスを支えらえるのでしょうか?答えは「NO」です。
レガシーシステムを運用し続けることには想定以上のリスクがあり、さまざまな弊害が予測できます。本稿では、現在もレガシーシステムを運用している企業に向けて、それが企業に与える影響についてご紹介します。
21年以上運用している基幹系システムが6割に?
経済産業省が2018年9月7日に発表し、話題になった資料が『D X(デジタルトランスフォーメーション) レポート~ITシステム「2025年の崖」の克服とDXの本格的な展開~』です。この資料では、昨今の社会問題やビジネス課題から、2025年に顕在化する深刻な問題について示唆しており、同時にDX推進の必要性を明記しています。
同資料によると、2025年には21年以上運用している基幹系システムが経済界全体で6割に達すると予測しており、レガシーシステム化に警鐘を鳴らしています。
レガシーシステムが企業に与える弊害
セキュリティリスクが増大する
現代ビジネスを生きる企業にとって大きなリスクといえば、情報漏えいなどのセキュリティリスクです。社内端末をインターネットに接続している以上、外部からマルウェアに感染する可能性はゼロになりませんし、内部不正によって機密情報が漏えいする可能性もあります。
ハードウェアが老朽化すると、最新版のOSやソフトウェアが使えなくなることで脆弱性を抱えやすくなり、セキュリティ事件に繋がるようなリスクが頻出します。ハードウェアとソフトウェアが依存関係にあるようなレガシーシステムでは、既存環境から脱却することも難しいため、多数のセキュリティリスクを抱えながら運用していくことになります。
その対応としてセキュリティシステムを強化しても、コストばかりがかさんで十分な対策が取れない可能性があります。
運用コストがIT資産の9割以上に
レガシーシステムは古い技術を用いていることから、IT人材が不足したりすることでシステムの維持管理費が高額化する確率が高くなります。「2025年の崖」では、保守運用費用がIT予算の9割以上に達することになり、技術的負債を抱えやすくなります。
パフォーマンスの低下でビジネスが停滞する
レガシーシステムは、最新システムに比べて確実にパフォーマンスが低下します。それにより、ビジネスが停滞する恐れも出てきます。ビジネス上のパフォーマンスが十分に得られなければ、ビジネス要件を満足させることは難しく、顧客満足度を満たすこともできなくなります。
IT担当者の運用負担が増し、IT投資が難しくなる
レガシーシステムの運用には、IT担当者に大きな負担がかかります。すなわち、保守運用につきっきりになり、本来業務に集中できなくなる可能性がある、ということです。企業は適切なIT投資を目指して、事業成長に繋がるようなITに積極的に人材リソースなどを投じなければいけません。それができないとなると、ビジネスを今よりも成長させることは難しいでしょう。
爆発的に増加するデータに対応できない
最近では「ビッグデータ」という言葉をあまり聞かなくなりましたが、これはビッグデータブームが去ったわけではなく、一般的にデータと言えばビッグデータを指すようになったからです。すべての企業は過去から現在に至るまで大量のデータを保有しており、これを活用するためのシステムがビジネス目標達成のカギになります。
ところが、レガシーシステムは爆発的に増加するデータに対応できない側面があり、日々激化するデジタル競争に敗れるかもしれません。IoTやAI/機械学習が現代の基幹システムに必要不可欠になる時代ですから、レガシーシステムを使い続けることは競争力の低下を意味します。
優秀な人材リソースを生かせない
IT戦略を加速させるために、優秀な技術者を確保したとしても、レガシーシステムを運用し続けている限り古い技術に携わる時間の方が長くなり、技術者が持つ経験やスキルを発揮できないことになります。また、昨今のデジタルネイティブな世代には考えられないような古びたシステムでは、きっとやる気も削がれてしまうことになるでしょう。
日本では昔と比べて「横へのキャリアパス」が受け入れられるようになったおり、高い技術を持つ人材が最新技術を搭載している企業へとどんどん流れていきます。皆、自分が持つ経験やスキルを余すことなく発揮し、さらに新しい経験とスキルを積み上げたいと考えているので、当然といえば当然です。要するに、レガシーシステムを運用し続けている企業では、優秀な人材の確保が難しくなります。
レガシーシステムを効率よく刷新するには?
日本企業の基幹系システム刷新は、海外企業に比べてビッグプロジェクトになりやすい傾向があります。その理由は「IT環境に対する考え方」にあります。
たとえば、日本企業の多くは「業務プロセスにITを合わせる」という視点で、基幹系システムを構築します。ビジネス目標を達成するための業務プロセスがあり、それを実現するためにITを用いるという視点で考えています。
一方、海外企業は「ITに業務プロセスを合わせる」という視点で基幹系システムを構築します。企業ビジネスを根底から支える基幹系システムが前提として存在し、効率性を追求するために業務プロセスをシステムに合わせます。業務プロセスありきではなく、ITありきでビジネスを考えているということです。もちろん企業のコアコンピタンスに必要不可欠な部分は妥協をすることはありませんが、効率的に行えるものは効率化するという合理的な考えを持っています。
長く運用し続けているレガシーシステムを刷新するには、新しい視点を取り入れて基幹系システムを構築する必要があります。基本的には業務プロセスにITを合わせるのではなく、ITに業務プロセスを合わせる。そこには多少の業務改革が必要になりますが、レガシーシステムが実行してきた機能をそのまま新しいシステムに移行するのではなく、日々変化するビジネス要件へ都度対応できるように、未来志向型の基幹系システム構築を目指すことです。
レガシーシステム刷新に効くクラウドERP
2000年代に起きたERPブームでは、大規模な基幹系システムを導入するのに3年~5年という長い歳月を必要とするビッグプロジェクトが目立ちました。そのため、レガシーシステム刷新に際し「あの悪夢が再び…」と億劫になる情報システム担当者も多いでしょう。
しかしここ数年、レガシーシステム刷新を完了させる事例が頻出しています。その要因になっているのがMicrosoft Dynamics 365に代表される「クラウドERP」です。
クラウドERPは、インターネット経由で提供される基幹系システムであり、大規模なシステムを構築するのにサーバー調達やソフトウェアインストールなどは不要であり、そこにかかる労力をカットできます。
自社ビジネスに必要な基幹系システム環境について再考し、要件に沿ったクラウドERPを選定します。さらに必要最低限のカスタマイズを加えて、早々に運用することが可能です。レガシーシステムを刷新するにあたり、クラウドERPを検討してみましょう。古く弊害を与えるシステムを運用し続けるのではなく、未来志向型のシステムを目指してみてください。