「モダンワークスタイル」という新しい働き方をご存知でしょうか?これはマイクロソフトが世界中の企業や組織に提唱するもので、インターネットを通じたコラボレーションツールで現状の課題を解決しつつ、新しいビジネスを創出していこうという取り組みです。
マイクロソフトのミッションは「地球上のすべての個人とすべての組織が、より多くのことを達成できるようにする」ことです。これを実現するためにモダンワークスタイルという新しい働き方を提唱し、同社でも実際に取り入れています。
その具体的な効果については事業生産性26%アップ、ワークライフバランス満足度40%向上、女性従業員の離職率40%減少、紙の書類49%削減などがあげられています。働き方改革に向けて奮闘中の企業にとって、こうした効果は魅力的に映るのではないでしょうか。
そこで今回はモダンワークスタイルに欠かせないOffice 365と、マイクロソフトが提供するERP(Enterprise Resource Planning)のDynamics 365を連携した際の、金融業におけるメリットについてお話します。
金融業の働き方改革の実態
2016年9月に安倍内閣主体で「働き方改革実現会議」が設置され、政府関係者や有識者によって日本の働き方について何度か議論が重ねられています。その中でも特に力を入れているのが長時間労働の是正です。日本は世界的に見ても長時間労働大国であり、過労によって命まで落とす人も少なくありません。こうした問題が顕在化し、社会問題として長時間労働の是正を求めています。
こうした中、金融業は伝統的に労働時間が長い業種だという認識があるのではないでしょうか。銀行や保険、証券などの事業にかかわらず、金融業は監督官庁による規制が厳しく、規定されている業務も多いのです。そのため、事業会社独自で業務プロセスを改革したり、必要なドキュメントを省略するということが許されないため、業務効率化といってもその範囲には限度があったのが現実でしょう。
しかしながら、金融業においても働き方改革というのは待ったなしの課題となっています。一つは金融情勢の変化によるものです。特に銀行においては日銀のマイナス金利が続き本来のビジネスモデルである融資では収益確保が難しくなっており、業務の効率化によるコストの削減が大きな課題になっているのです。もう一つは競争の激化により、これまでは融資による利ザヤが主な収益源であった銀行において、保険や投資信託の販売手数料が収益の柱となりつつあり、それによって対象の顧客層も変化する中でより効率的に多様な商品を扱わなくなってきたという背景があります。
そうした状況においても、人員増強による販売力強化はコストを増やすこととなるため、いかに効率的に業務を行うかがこれまで以上に課題になっているのです。
この状況において、多くの金融業においては二つのアプローチがとられています。一つはRPA(Robotic Process Automation)による定型業務の自動化です。先述の通り、金融業には多くの決め事があるため、業務プロセスやドキュメントも定型化されている領域がほとんどです。これまで人手で行っていたこれらの業務をRPAによって自動化することで、速く正確に処理ができるようになるため、人員の削減の業務の効率化を実現します。金融業はRPAとの相性がいい業種とも言え、すでにメガバンクを中心に数万人の人員削減が発表されています。
もう一つの取組みがモダンワークスタイルです。これは場所に依存せずに安全に効率的に業務ができるプラットフォームの活用です。金融業では規制緩和により事業の垣根を超えた競争が激化しています。店舗で待っていても顧客はなかなかやってきません。そのため、渉外や営業の担当者は顧客のところに赴き、顧客に合わせた提案力が求められるのです。しかし、顧客の資産情報などの機密情報を扱うため、これまでIT化に慎重であった領域でもあります。それを安全にどこからでも利用できる環境を提供し、活用するのがモダンワークスタイルです。
金融業×モダンワークスタイル=生産性向上+顧客満足度向上
多方面で注目されている働き方改革は、金融業においてより必要に迫られています。日本の労働生産性は主要先進7ヵ国中最下位(労働生産性の国際比較 2017 年版~日本の時間当たり労働生産性は 46.0 ドル(4,694 円)、OECD 加盟 35 ヵ国中 20 位~)であり、さらに金融業における課題は一層の生産性向上の必要性をもたらしているのです。
モダンワークスタイルを実現するための柱は3つあります。それがOffice 365の「コラボレーション」「インテリジェントツール」「エンタープライズレベルセキュリティ」です。
Office 365ではWeb会議のSkype for Business、社内SNSのYammer、チーム共有のTeamsなど組織やチーム、個人同士のコミュニケーションを迅速かつ円滑に進めるためのコラボレーションツールが揃っています。それによって物理的に離れた場所にいても、まるで隣のデスクにいるかのような感覚で仕事を進められます。
インテリジェントツールとはいわば日常業務をサポートするための機能です。Delveというツールは情報探索においてユーザーにとって有益な情報をレコメンドし、作業スピードの改善に貢献します。
最後の柱としてセキュリティが立ちます。マイクロソフトでは世界トップレベルのセキュリティ体制が整っており、デバイスとクラウドという2つの観点から顧客情報を強力に保護します。
このOffice 365の3つの柱に、さらにDynamics 365を交えることで高度なモダンワークスタイルが完成します。
これまで以上に顧客とのコミュニケーションを増やさなければいけない環境において、Office 365によってテレワークを取り入れ、より現場を支援することができる業務環境を提供することができます。
さらにDynamics 365のCRM領域にて顧客情報を統合的に管理し、個別の顧客の履歴などを確認しながら現場での適切な顧客対応を支援します。その結果顧客満足度の向上にも貢献するでしょう。金融業とモダンワークスタイルを掛け合わせると、生産性向上だけでなく顧客満足度も同時に向上できるというメリットがあります。
金融業ではクラウドの活用に慎重という意見があるかもしれません。しかし、三井住友銀行をはじめとしたメガバンクや地方銀行でも、Office 365による働き方改革への取り組みはスタートしています。Office 365自体が持つ生産性向上効果の高さ、さらにDynamics 365を組み合わせた環境により、クラウドの特性を活かした取り組みによってグループ全体の生産性を向上し、経営課題を解決だけでなく新しいビジネスの創出にも貢献しています。