企業経営では、マーケティングや顧客管理、予算編成など、多くの事柄を考えなくてはいけません。これらは今まで、経験を元に判断していた経営者も多いでしょう。
しかし、近年では、Aiや機械学習の発達により、データを元に経営戦略を行えるようになりました。今回は、その代表的なERPシステムである、Dynamics 365について解説します。
ERPとは
ERPとは、「Enterprise Resource Planning」の頭文字を取ったもので、直訳すると「企業資源計画」となります。これは企業の資源である「人材・物・お金」を一元的に管理する計画のことで、そのためのシステムの名前を指します。
企業では、人材、物、お金を「人事」「在庫管理」「会計」などのように部門ごとに管理します。そして、各部門では、専用のさまざまなツールが利用されており、データが交差することはありません。
しかし、企業経営の観点から見ると全てのデータは関連しており、データを活かすことで成長戦略に利用することが可能です。たとえば、「在庫・発注状況」と「会計・顧客」のデータを見てみましょう。
顧客への要望に応えるには、在庫の状況を確認してから発注を行います。そして、発注・納品をするわけですが、支払遅延が発生することもあるでしょう。こうした場合は、企業が売掛金を把握して回収などの対応を行わなければいけません。
このような流れは企業の業務の一部分ですが、さまざまな部門のデータが密接に関わっていることがわかります。この交わるデータをどう活かすかによっても、経営戦略の手法が大きく変化します。そこで企業資源である「基幹データ」を、一元的に管理・使用するためのツールとしてERPが誕生したのです。
ERPの必要性
ERPが基幹データを一元的に管理することによって、企業はさまざまな恩恵が得られます。まず大きなメリットに上げられるのが、経営戦略への利用です。企業の各部門でそれぞれが別のツールを利用していると、全体の状況が把握しづらくなります。一方、ERPの場合は、基幹業務の各部門のデータを1つのソリューションで確認できるため、経営データがわかりやすいのです。
さらに部門間がデータ連携されることで、これまで時間のかかったデータの参照が効率的に行えるようになります。部門の違いによって把握できなかった情報も簡単に見られるので、業務に活かすことが可能です。
そして、こうしたさまざまなデータは、蓄積して応用が可能です。近年では、ビッグデータと呼ばれますが、企業のさまざまな観点のデータを統合的に使用できるので、データ解析にも応用できるのです。
また、企業のデータを一括で管理できるということは、ガバナンスの強化にも利用できます。企業の重要な情報である基幹データを一箇所で管理できるようになるので、情報制限が容易になるのです。企業内の不正は、部門間での統制の違いによって起こることが多いので、全体を同じレベルで統一することはセキュリティ面で効果的といえます。
Microsoft Dynamics 365とは
Microsoft Dynamics 365は、CRMやERP、SFAといった複数の領域にまたがる各部門をカバーしたマイクロソフト社のソリューションです。「フィールドサービス」「マーケティング」「顧客サービス」「営業」「会計」といった複数の部門の管理機能が付属しており、それぞれのデータを一元的に管理できます。それぞれの部門が同じソリューションで繋がるため、効率的な作業と部門間でのデータの活用が可能です。
Microsoft Dynamics 365の特徴
Dynamics 365は一般的なERPサービスと比べると、「マーケティング」「生産管理」「顧客管理」「会計」の部門が強いのが特徴です。さらに通常の管理機能に加えて、機械学習やAIといった最新の機能を備え付けています
たとえば、フィールドサービスでは、顧客からの気づきによって作業が発生することが種です。しかし、IoTやAIとの連携が可能なため、先に異常を検知して問題を解決することもできます
また、顧客管理や会計処理など多くの機能で機械学習を用いており、データを最大限に活かすことが可能です。情報が蓄積されるほど予測に活かすことができるため、経営者の意思決定に反映できます。
Microsoft Dynamics 365の代表的なアプリ
Microsoft Dynamics 365には、以下のようなアプリケーションが備わっています。
- Dynamics 365 for Marketing
- Dynamics 365 for Sales
- Dynamics 365 for Customer Service
- Dynamics 365 for Fields Service
- Dynamics 365 for Project Service Automation
- Dynamics 365 for Finance
- Dynamics 365 for Retail
- Dynamics 365 for Talent
ここでは上記の中からいくつかのアプリの機能をご紹介します。
Dynamics 365 for Finance
Dynamics 365 for Financeは、Dynamics 365の中で「財務会計」を担うアプリケーションです。通常の会計業務である「帳簿管理」「請求書処理」に関連した機能に加えて、さまざまな自動化機能や分析機能が付いているのが特徴です。
たとえば、請求書を作成する時に、ケースによって入力項目が異なると余計な手間が増えます。Financeでは、テンプレート登録が可能なので、入力項目が同じ物はテンプレートとして保存しておくことが可能です。
また、グローバル金融に強いというメリットもあります。外国と会計処理を行う場合は、現地の税法への準拠や為替対応が必須です。こうした問題もリアルタイムで対応してくれるため、国内外問わず担当者はスムーズに作業が可能となっています。
Dynamics 365 for Marketing
Dynamics 365 for Marketingでは、作業を自動化するマーケティングオートメーション機能が利用できます。この機能では、潜在顧客へのメール配信やキャンペーン広告の自動送信など、マーケティング活動を自動で行ってくれます。さらに電子メールの作成では、テンプレートを利用して見栄えのいいメッセージを簡単に作成可能です。カスタマイズも可能なため、自由にアレンジして使用もできます。
また、AI機能が付属していて、「スパムチェッカー」や「自動スケジューラ」といった機能に利用されています。スパムチェッカーでは、作成した電子メールのコンテンツが顧客の受信トレイでスパムと判断されないように判定を行います。判定は高、中、小で行われて、スコアが小さいほどスパムフィルターに引っかかる可能性が低いということになります。
また、自動スケジューラでは、メール送信相手が自分のメールを読んでいる可能性の高い時間を自動で判別します。これによりメールが読まれる確率の高い日時に、メールを送信することが可能です。
Dynamics 365 for Sales
Dynamics 365 for Salesは、営業部門のためのツールです。このアプリケーションでも、AIが活用されており顧客に対するアプローチがデータを元に行えるようになっています。たとえば、営業担当が抱えている顧客はそれぞれスコアリングされていて、見込み顧客の判断が簡単に行えます。Office製品や LinkedInのデータベースとも連携しており、優先順位の決定に役立てることが可能です。
また、営業は出先での作業が多いため、モバイルアプリケーションも付属しています。このアプリケーションでは、「タスクの確認」「優先順位の把握」「リマインダー」「Teams会議への参加」「カメラデータの添付」など多くの機能が利用可能です。これまで自社に戻ってから行っていた作業も、出先でそのまま行えるので作業効率の向上に繋がります。
まとめ
Dynamics 365は、CRM、ERP、SFAなどの領域に跨がってデータを統一する、マイクロソフト社の複合型ソリューションです。マーケティング、財務会計、フィールドサービスなど多くの管理機能を備え付けており、複数の部門間のデータを統一して管理します。
また、AIや機械学習機能を備え付けており、蓄積したデータを元に最善の結果を提示してくれます。これにより業務の生産性向上や経営戦略の改善に役立てることが可能です。