本稿ではMicrosoft提供のクラウドサービス「Dynamics 365 for PSA」と、株式会社チームスピリット提供のクラウドサービス「TeamSpirit」との違いを比較しています。
Dynamics 365 for PSAは近年新しく追加されたアプリケーションであり、「PSA(Project Service Automation)」の文字通り、プロジェクト収支を管理しながら従業員の生産性を高め、収益性の高いプロジェクトを予算内で時間通りに完了させるための製品です。
一方、TeamSpiritは「働き方改革プラットフォーム」と称して、2012年にサービス提供が開始されています。現在では国内で数多くの企業に導入されており、勤怠管理システムを中心に働き方改革推進を支援する製品です。
まずは、それぞれの特徴とメリットを確認していきましょう!
Dynamics365 for PSAの特徴とメリット
それでは、Dynamics 365 for PSAの特徴とメリットからご紹介します。
そもそも「Dynamics 365」という製品は、2016年11月にサービス提供が開始された比較的新しいクラウドサービスです。その概要はというと、クラウドベースで経営活動に必要なアプリケーションを統合した、いわばERP(Enterprise Resource Planning)パッケージとなります。
ERPは基幹システムを中心に様々なアプリケーションを統合した、大規模なパッケージソフトウェアであり、ERPがあることで企業情報を集約管理したり、アプリケーション同士が一つのデータベースで管理されていることで、業務連携が格段に容易になったりします。
そしてDynamics for PSAは、このDynamics 365のアプリケーションの1です。多数あるアプリケーションの中で「プロジェクト管理と自動化」という機能を有しており、いわばプロジェクトにおける生産性向上のための製品です。
Dynamics for PSAのメリット
- Office 365やPowerPlatformとの連携が可能であり、拡張性が非常に高い
- Office 365のTeams・Plannerと連携することで生産性やコミュニケーション効率を飛躍できる
- SFA(Sales Force Automation)やCRM(Customer Relationship Management)との連携機能を提供している
- 業務要件に合わせてアプリケーションカスタマイズが容易に行える
- 各種レポート・帳票類の追加が可能であり、グローバル環境で統一されたレポート・帳票が利用できる
- 「原価」と「売値」といった2つの価格表を保持することができる
- プロジェクト人材のスキル管理機能に加えて、アサイン状況管理など人材管理機能が充実している
- AIやIoTなど最先端のソリューションとの連携が確保されている
TeamSpiritの特徴とメリット
次に、TeamSpiritの特徴とメリットについてご紹介します。
TeamSpiritは勤怠管理システム、経費計算システム、工数管理システム、カレンダーツールを一体にした、人事管理中心の統合型クラウドアプリケーションサービスです。近年日本では「働き方改革の実現」が声高に叫ばれていますが、実現のためには①長時間労働の是正、②生産性の向上、③最新のIT活用が必須だと考えられており、TeamSpiritそうした働き方改革を実現するためのプラットフォームとして位置づけられています。
上記3つのポイントを押さえるには、今まで以上に人事管理を戦略的に行い、目先の施策にとらわれるのではなく、本質的な働き方改革を実現するための取り組みが必要になっていきます。TeamSpiritはそのための機能を提供している製品だとされています。
<TeamSpiritのメリット>
Dynamics 365よりも価格が安いため導入しやすい
勤怠管理システムや経費管理システムなどのHRM(Human Resource Management)が充実している(Dynamics 365ではカスタマイズが必要)
Dynamics for PSAとTeamSpirit、それぞれの向き・不向き
今回、Dynamics for PSAとTeamSpiritを比較している理由は、最近になり両者を比較する企業担当者が一定数存在し、チーム管理や人事管理のためにDynamics for PSAとTeamSpiritどちらを導入すべきか?と考えられるようになったからです。
Dynamics for PSAを検討していた企業が「TeamSpiritならもっと低コストで同じような効果が得られるのではないか?」と考えたり、TeamSpiritを検討していた企業が「より高度なプロジェクト管理を実施するためには、Dynamics for PSAの方が最適なのではないか?」と考えたりしています。このことはSFAとしてDynamics 365が良いのか、それともSalesforceが良いのかと比較検討することによく似ています。
「CRMとSFAの違いを解説!」の記事で詳しく調べてみましょう!
そこで、Dynamics for PSAとTeamSpiritの、それぞれの向き・不向きを確認してみましょう。
1.Dynamics for PSAの向き・不向き
向いている企業
- 高度なプロジェクト管理で、プロジェクト収支や人材リソースを徹底管理し、赤字プロジェクトを撲滅したい、プロジェクト利益を上げたい
- すでにOffice 365を導入している、あるいは今後導入する予定があり、Dynamics 365 for PSAと連携することで世界最高水準のコミュニケーションプラットフォーム、統合的プロジェクト管理を実現したい
- SFA・CRMの機能を付け加え、柔軟性が高くカスタマイズが容易に行えるERPパッケージが欲しい
- 日々変化するビジネスニーズに合わせて都度新しい機能を追加したり、削除したり、スピーディに業務要件に対応したい
向いていない企業
- とにかく低コストで新しいシステムを構築したい、高度なアプリケーションを必要としていない
- Microsoft社製品をまったく使用しておらず、既存システムとの連携性も考えていない
2.TeamSpiritの向き不向き
<向いている企業>
- まずは勤怠管理システムや経費管理システムなど、人事管理を中心に比較的低コストに利用できるクラウドサービスを求めている
- システムカスタマイズ要件が発生する可能性が低く、標準機能だけでほとんどの業務に対応できる
- とにかく国産のシステムにこだわっている
<向いていない企業>
- グローバル規模でHRMを実践できるシステムプラットフォームを求めている
- 将来的に急速な事業拡大が見込まれていたり、海外進出を検討していたり、最終的には上場を狙っている
- システム構築にかかるコストよりも業務要件にいかに対応し、かつ高度なプロジェクト管理機能を必要としている
環境に合ったクラウドサービスを選ぼう!
最近比較されることの多いDynamics 365 for PSAとTeamSpiritですが、そもそも適しているシーンが違いますし、目的に応じた向き・不向きもあります。自社環境にとって何が一番必要なのか?に重点を置きながら、環境に合ったクラウドサービスを選んでいただきたいと思います。