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マイクロソフトのERP「Dynamics 365 for Operations」とは?その全貌と特長

ERP導入で失敗する8つの理由と回避策

従来の常識をくつがえすクラウド型ERP

近代の企業にとって、経営資源を統合的に管理する「ERP(Enterprise Resources Planning)」は、適切な戦略や計画を策定し、健全なビジネスを継続するために欠かせないツールの1つとなっている。

ERPの導入形態はさまざまで、単独の業務向けソフトウェア・パッケージを導入する小規模環境向けの手法から、ある程度の業務単位で拡張していくコンポーネント型、すべての業務をオールインワンでカバーする完全統合型などが存在する。大規模組織の場合は、販売管理や生産管理、会計、人事といったコンポーネントを完全に統合し、自動化や分析などの技術を駆使して、高度な経営情報として活用するケースが多いようだ。
従来のERPは、自社でインフラを保有・運用するオンプレミスシステムがあたりまえであった。当然のことながら、導入や運用の負荷は大きく、ビジネスや環境の変化に合わせた追加開発なども頻繁に発生するものだった。特に昨今は顧客や市場の変化が激しく、その負荷はますます肥大化する一方で、経営を圧迫する要因の1つとなっていた。

この問題を解決するのが「クラウド型ERP」だ。パブリックサービスとして提供されているため、インフラの初期コストや運用負荷が小さく、極めて迅速にスタートでき、可用性と利便性が非常に高い。最新のサービスは、安定性や安全性にも優れており、センシティブな金融機関や公共機関も活用を始めているほどだ。

ノウハウと経験が詰め込まれたマイクロソフトのERP

マイクロソフトの「Dynamics 365」は、営業支援や顧客管理、マーケティングなどのツールをサービスとして提供するクラウドビジネスアプリケーションである。ユーザーのビジネスをエンドツーエンドでサポートし、迅速かつ的確な意思決定を提供する“インテリジェントビジネスアプリケーション”として位置づけられている。

そのうちの1つである「Dynamics 365 for Operations」は、ERPの機能を提供するものだ。もともとマイクロソフトでは、ERPパッケージ「Dynamics AX」を原型から数えれば2002年から取り扱っている。サービス化されたのは2016年春のことだが、この15年にわたる経験・ノウハウの蓄積がDynamics 365 for Operationsというクラウドサービスに生きている。その特長は、「シンプル」「パワフル」「アジャイル」という3つのポイントで語ることができる。

シンプルとは、“経営に必要なデータをわかりやすく提供する”という意味だ。マイクロソフトが保有するクラウドとユーザーインタフェースの技術が融合され、煩雑なカスタマイズや設定を必要とせず、ユーザーが必要とする情報を高いコストパフォーマンスで提供できるということである。無償で提供されている「Power BI」も、そのコンポーネントの1つだ。従来は高度な技術や高額な開発費用が必要であったデータの抽出や可視化を、手軽かつ自在に実現できるようになった。

パワフルとは、販売や調達、サプライチェーン、生産、財務、人事といったビジネスに必要な管理機能がフルラインアップされ、統合・最適化されているという意味である。サービスはグローバルに展開されているため、各地域の言語や通貨、法規にも容易に対応できる。モジュール構成をざっと見るだけでも、そのパワーを感じられるだろう。

マイクロソフトのERP「Dynamics 365 for Operations」とは?その全貌と特長

その一方で、クラウドらしい俊敏性(アジャイル)を持ち、ビジネスの成長や変化に合わせて、柔軟に拡張できる点もオンプレミスシステムにはない特長だ。マイクロソフトの“パワフルな”クラウドインフラをベースに、システムのライフサイクルが総合かつ継続的にサポートされる。

マイクロソフトの技術者によると、市場や環境の変化、モバイルやIoTなどの新しい技術の登場によってビジネスデータは肥大化しており、従来のクライアント/サーバー型のERPではまかないきれないという事実があるという。また、グローバルにビジネスを展開しつつ、経営・意思決定は統合したいというニーズも増えており、Web技術を活用したクラウド型ERPを採用するは、必然の変化というわけだ。

また、クラウドサービスは非常に高い可用性が特長であるが、Dynamics 365 for Operationsは、その一段上を行くサービスと言っても過言ではない。マイクロソフトでは、DTU(Database Throughput Unit)単位での細やかな環境監視とチューニングを標準で提供している。そのため、ユーザーは特に意識することなく、常に快適なERPを運用できるというわけだ。

パブリッククラウドなのにオンプレミスのような安心感

Dynamics 365 for Operationsは、SharePointライクなユーザーインタフェースを採用しており、リッチクライアントほど多様な設定項目があるわけではないが、慣れるとむしろ使いやすい。レスポンスの悪化も見られず、快適に利用できると評価が高い。

インフラはMicrosoft Azure上に展開されるが、標準で「仮想専有型」が採用されている。つまり、パブリックサービスでありながら、プライベートな空間が確保されており、安全で安定的なシステムとして利用できるということだ。リージョンを選択することが可能で、データを国外に持ち出せないなど社内ポリシーが厳しい組織でも採用しやすい。

本番環境だけでなく、開発・検証環境も提供される。オンプレミスシステムの場合、本番と同様のインフラを用意する必要があり、大きなコストや負荷がかかるものだった。Dynamics 365 for Operationsは、クラウドサービスであるため環境を迅速に用意でき、スクラップ・アンド・ビルドも容易である。そのメリットは、非常に大きい。

マイクロソフトの各種ソフトウェアやMicrosoft Azure関連サービスとの親和性が高いという点にも注目したい。

ERPは、その特性上、他のビジネスアプリケーションやサービスとの連携が非常に重要である。ユーザー認証やアクセス制御などの、セキュリティツールとの組み合わせも必要だ。例えば、Microsoft Azure Active Directoryを活用すれば、社内のサーバー群やOffice 365などのクラウドサービスを含めて、認証を総合的に管理できるようになる。場合によっては、オンプレミス版のDynamics 365 AXとの併用も視野に入れることができるというのは、他にはないメリットである。

Dynamics 365 for Operationsにはさまざまな機能が存在するが、管理者にとって非常に重要な「Lifecycle Services 統合プロジェクト管理基盤」としての機能について触れたい。この分野では、大きく分けてプロジェクト管理、システム設計、運用管理支援のためのツールが提供されている。

例えば「システム診断」の項目では、さまざまなバッチ処理の状況をひと目で把握し、どこにどのような問題がいつ発生したかを捉えることできる。システムの負荷・健康状態をチェックして、迅速にトラブルを解消することができるようになる。また、「ビジネスプロセスモデラー」は、ドラッグ&ドロップでフローを簡単に設計することができる。

Lifecycle Services 統合プロジェクト管理基盤
パブリッククラウドサービスであるにもかかわらず、こうした管理機能を提供できるのは、上述したような仮想専有型のインフラになっているためだ。柔軟かつ高度な管理がERPには必須であるため、こうした構成を採用していると言ったほうがよいだろう。

非常に複雑な組織体系で、マルチテナント環境を構築したいという場合には、大規模なオンプレミスシステムのほうが向いているのは確かである。しかし、過去に背伸びをしすぎて、高額なシステムが手に余っているというユーザーは少なくないようだ。

より手軽に、かつ容易に運用できる統合型のERPを必要としている組織、グローバルにビジネスを展開し、海外拠点を含めて柔軟に高度な経営を行いたいという組織、急速に成長していきたいという組織にとって、インテリジェントクラウドERP「Dynamics 365 for Operations」が最適なソリューションになると断言できる。

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