Web上で活用できるクラウドベースのオフィス生産性向上アプリケーションとして、もしくはグループウェアを活用する企業は、爆発的に増加しています。毎年、世界各国12万に及ぶ組織が選択したクラウド関連トラフィックデータの解析を行っている、クラウドセキュリティ企業のBitglassの報告書によると、企業によるクラウドアプリケーションの導入率は倍増傾向にあり、産業分野によっては3倍に上昇していることが明らかになっています。
そんな中、多くの企業がクラウドベースのオフィス生産性向上アプリケーションやグループウェアを導入する際、比較検討の対象として名を挙げるのが、Office 365とGoogle Apps for Workです。実際にBitglassの同調査において、Office 365とGoogle Apps for Workがトップベンダーのシェア争いを繰り広げられている様子が浮き彫りになっています。
そこで今回は、Office 365とGoogle Apps for Workの機能からセキュリティなどの面から徹底的に比較を行います。生産性アプリケーションおよびグループウェア導入時のヒントとしてお役立てください。
搭載サービス比較のポイントは、「自社に必要な機能」
まずはオフィス生産性向上アプリケーションという側面から、Office 365とGoogle Apps for Work、各サービスで利用可能なアプリケーションを比較してみましょう。
Office 365 Pro Plusを除くすべてのプランの共通点は、Webブラウザさえあれば、WordやExcel、PowerPointの簡易な編集が行える点です。マルチデバイスにも対応していますから、外出先でもスマートフォンやモバイルデバイスとネットワークさえあれば、各文書の編集・加工・閲覧が簡単に行えます。もちろんいずれもグローバル対応していますから、世界のどこにいてもファイルの編集や閲覧も容易に行える点も共通です。ただし、Google Apps for Workは、グレートファイアウォールによって中国では利用できないため、導入の際は注意が必要です。
Office 365とGoogle Apps for Workで利用できるサービスにおける最大の違いが、業務アプリケーションとして欠かせない存在となったWord・Excel・PowerPointの完全版を、インストールして利用できるか否かにあります。
現状、Office Onlineでも、Google ドキュメント・Google スプレッドシート・Google プレゼンテーションでも、その機能や編集能力などは、やはりMicrosoftが提供している完全版には及びません。特にGoogle Apps for Workの各サービスを利用した場合、レイアウトやフィールドの順番が崩れる、マクロや高度な分析機能の開発ベースが異なるため相互で機能しないということもあり、100%の互換性があるわけではないという点を加味する必要がありそうです。
最終的には、「Word・Excel・PowerPointの3アプリケーションを、どこまで業務で利用するのか」という点が、選定時の大きなポイントとなるでしょう。
Office 365 Business Essentials | Office 365 Business Premium | Office 365 ProPlus | Office 365 Enterprise E1 | Office 365 Enterprise E3 | Google Apps for Work | Google Apps with unlimited storage and Vault |
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価格 (ユーザ/月相当、年間契約) |
¥540 | ¥1,360 | ¥1,310 | ¥870 | ¥2,180 | ¥500 | ¥1,200 |
法人メール | Outlook・Exchange Online | - | Outlook・Exchange Online | Gmail ™ | Gmail ™ | ||
スケジュール共有 | Outlook・カレンダー | Google カレンダー | Google カレンダー | ||||
クラウドストレージ | OneDrive for Business (容量1TB) |
- | OneDrive for Business (容量1TB) |
Google ドライブ (容量30GB) |
Google ドライブ (容量無制限/5ユーザ以下は最大1TB) |
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Web上での ファイル簡易編集・閲覧 |
Office Online | - | Office Online | Google ドキュメント Google スプレッドシート Google プレゼンテーション |
Google ドキュメント Google スプレッドシート Google プレゼンテーション |
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元ファイル作成加工 | - | Word・Excel・PowerPoint完全版 | - | Word・Excel・PowerPoint完全版 | - | - | |
音声通話 テキストチャット ビデオ会議 |
Skype for Business | - | Skype for Business | Google ハングアウト | Google ハングアウト | ||
社内ポータルサイト | SharePoint Online | - | SharePoint Online | Google サイト | Google サイト | ||
コラボレーションワーク・社内SNS | Planner・Yammer | - | Planner・Yammer | Google Groups for Business | Google Groups for Business | ||
管理・監査対策 | SharePoint Online・Active Directoryの統合/ Exchange 監査レポート |
管理コンソール | 管理コンソール+Vault | ||||
BI | - | - | Power Query、Power Pivot、および Power View | - | Power BI for Office 365 | - | - |
最大ユーザ数 | 300 | 無制限 | 無制限 | 無制限 |
グループウェアとしても機能強化されたOffice 365
では次に、グループウェアという側面からOffice 365とGoogle Apps for Workを比較してみましょう。
使いやすさという点において、Officeシリーズは業務上で、Googleの各アプリケーションは個人で利用しているユーザが多いため、従業員も抵抗なく使いやすいという共通点があります。では、グループウェア導入目的という側面から考えるとどうでしょうか。
グループウェアを導入する際、企業は資料やスケジュールなどの情報共有を重視するケースと、ワークフローやTODO、プロジェクト管理など、猥雑になりがちな業務をシンプルに管理できるようにしたいと考えるケースに分かれるようです。
前者の、資料や予定表の編集・共有することが目的であれば、Office 365とGoogle Apps for Workのいずれにおいても問題なく解決することができるでしょう。
しかし、ワークフローやプロジェクト管理、回覧などを容易に行うことも目的としているケースにおいては、Office 365に軍配が上がります。Google Apps for Workにはワークフロー管理機能が搭載されていませんが、Office 365ではPro Plusを除くすべての企業向けプランで、社内SNSツールであるYammer や、2016年に導入されるプロジェクト管理ツールPlannerをはじめとした各種アプリケーションを利用でき、かつ文書ファイルとの連携を可能としています。
最も気になるセキュリティ! 世界的に評価が高いのはOffice 365
企業がクラウドベースのアプリケーションを導入する際、最も重視するのがセキュリティです。
Office 365とGoogle Apps for Workでは、セキュリティ性能に大きな差異があるようには見えません。しかしながら、2015年に実施されたクラウドメールサービスに関する Gartner の調査結果によると、Office 365が最も多くの企業で採用されていることがわかりました。
同じく2015年に実施されたOkta社による調査でも、Office 365がトップシェアであることが証明されており、特にセキュリティやコンプライアンス制約の厳しい分野においてOffice 365が選択されているという調査結果が出ています。一方、引き続きGoogle Apps for Workを選択しているのは、小規模事業者やアジア太平洋地域の企業であることもわかっています。世界的には、基本的なセキュリティに加え、上位プランではより細かなコンプライアンス対策が行えることが、Office 365選択の決定打となっているようです。
国内企業においては、Office 365はデータセンターが日本国内にある点と、利用規約が日本法に準拠している点が、安心して利用し続けるためには着目すべきポイントとなるかもしれません。
Office 365 | Google Apps for Work | |
---|---|---|
データセンター | 日本国内 | 世界各国 |
利用規約 | 日本法 | 米国法(カリフォルニア州法) |
転送中データセキュリティ | SSL/TLSによる暗号化 | HTTPS/TLSによる暗号化 |
ファイルのバージョン管理 | 可能
(OneDrive for Business) |
可能
(Google Drive) |
データ損失防止機能 | 搭載
(Office 365 Enterprise E3以上) |
搭載
(Google Apps |
多段認証 | 2段認証 | 2段認証 |
利用端末登録 | 可能 | 可能 |
法規制準拠 | ISO 27001、EU モデル契約条項、HIPAA BAA、FISMAほか | ISO 27001、EU モデル契約条項、HIPAA BAA、FISMAほか |
プライバシーポリシー | お客様のデータを広告に使用しないと明言 | 端末・ログ・現在地など、一部の情報を収集・利活用 |
信頼性 | 稼働率保証99.9% 返金制度 |
稼働率保証 99.9% |
まとめ
Webアプリケーションのみで完結する業務利用レベルであれば、コスト面において、Google Apps for Workが有利であると言えるでしょう。しかし2014年にトップシェアを誇っていたGoogle Apps for Workは、 2015年にはトップの座をOffice 365に明け渡しました。今後、Google Apps for Workはコスト面でさらなる巻き返しを図ろうとしているようですが、機能やセキュリティ、コンプライアンスなどについては、コストのみを重視するわけにはいかない部分でもあります。実際に、両サービスを使用したのち、最終的にOffice 365を選択した企業は少なくありません。