先日の記事で理想的な顧客像を惹きつけるためにすべきことをお伝えしました。そちらの中で、理想的な顧客像を惹きつけるためには理想の顧客像を中心に製品サービス、定義などを決めなくてはいけないということはお伝えしました。
しかし、上記のことをお伝えすると顧客像を、年齢別、性別、地域、決裁権、企業サイズ、業種などに分別しているからニーズは把握しているよ、という声を伺う頃があります。
そのような情報はセグメント情報と言われ、非常に重要な情報で今後も重要であり続けます。しかし、セグメント情報はあくまでビジネスを行っている“結果“と得られた情報となります。顧客になった人は結果として、どういった情報を(例えば東京在住が多かった)持ち合わせていた、ということであり、実際は東京在住以外にもニーズを持っている人は存在しています。
消費者が強い購買力を持っていなかった時代(とは言っても数年前から10年くらい前まででしょうか)は、製品サービスを作る側が圧倒的な情報をもっていたため、極端な言い方をすると見込み客がセールス担当者に接触する段階まで“無知“であり、セールストークに変化をつけて販売をすることが(今より)行いやすい状態でした。
しかし、現在は消費者が購買力をもち自身で情報を調べており、また“調べる“ということは”課題“解決しようとします。その”課題”を明確化すると“解決”するための”欲求“へと変化していきます。つまり、その”疑問“へ答えることになるコンテンツ(例えば、資料ダウンロード、イベント、セミナー、ブログ、動画、ソーシャルメディアなど)を準備して、”疑問”への“回答”を受け入れられる形と方法で届ける必要があります。その結果として集まる情報がセグメント情報ということになります。
つまり、“課題“に対しての情報を伝えるためにはまずはその”課題”を可能であれば先読みして情報を提供していく必要があります。では、どのような情報に頼ればよいのでしょうか。
本日はペルソナとセグメント情報の違いについてお伝えします。
ペルソナとセグメント情報の違い
まずは下記のイメージをご覧ください。
(Marketing Segmentation(マーケティングセグメンテーション)と検索した結果)
(Buyer Persona(バイヤーペルソナ)と検索した結果)
こちらのイメージをご覧になられて何か感じ取ることができましたでしょうか。
マーケティングセグメンテーションとは?
セグメント情報を簡単に言うと、顧客(見込み客)のグループを分類するために用いられる情報のことです。結果として、特定の製品サービスのターゲティングを行い、マーケティングメッセージを届けることができます。そのため、セグメンテーションを行うには、数的に非常にボリュームの必要なリサーチが必要になり、人口統計、行動パターン、企業情報などを定量的に収集することになります。
また、通常各セグメントには名前が振られます。例えば、セグメントA、のようにです。そして、結果としてターゲットとしているマーケットの中でセグメントAはどれくらいのパーセンテージを占めているか、などに用いられたりします。そして、データとしパーセンテージなどで占められて管理をされるものになります。
セグメンテーションは、基本的にはグループ単位とみなすことができるため、人の“課題”、“物語”、“モチベーション”などを掘り下げていきません。例えば、下記などはコンテンツマーケティングの一環であるインフォグラフィックに電気料金に関する情報をセグメントしたものです(参照はこちら)。
確かにデータとしては正しく現状を把握するには明確で非常にわかりやすくなっています。一方で、ユーザーエクスペリエンスや、どのような購買の流れを進んでこの方たちが顧客化するか、などを見て取ることは難しい(しづらい、できない)ということになります。
バイヤーペルソナとは?
一方でペルソナも、ユーザーや顧客のグループの塊、でもあります。しかし、その作成の目的がセグメント情報とは明確に異なります。
HubSpotが定義するペルソナとは、
“バイヤーペルソナとは、あなたの顧客についてのマーケットリサーチとデータに基づく理想の顧客を表した半架空の人物像”
と述べています。
ペルソナは、あなたの製品サービスを使用することに対して同じような価値を感じる人たちを表現しています。そのため、先ほど紹介したインフォグラフィックとは異なり顔がないデータではありません。実際のニーズなどを追求するために設計をされます。そのためペルソナ像にはグループ名ではなく、名前が一般的に振り分けられます。
(HubSpotのサンプルのペルソナHR部門の『サンプル・サリー』さん)
もちろん、その理想の顧客像は24時間365日あなたの製品サービスのことを考えているわけではありません。しかし、そのように人間として表現することによってエンドユーザーの像をあなたのチームなどで共有することの助けにつながり、マーケティングとセールス担当者が共通認識をもって見込み客に対して対応をすることの助けにもつながります。
それ以外のメリットの一例として、
その1:会社の戦略の幹となる
理想の顧客像を真剣に考えた後に、その顧客が望んでいないことをする従業員はいなくなります。つまり、マーケティング、セールス、サポートなどの行動の規範となります。例えば、レストランの接客業などであればアルバイトの人たちも自分たちの理想の顧客に対してどのように接するかが想像しやすくなります。
もちろん、自社の成長や周囲環境の変化によってペルソナ像が変化することはあり得ますが、その都度ペルソナを変化させて適切な対応を進めればよいことです。
その2:リードジェネレーションの質が向上する
セールスを行うためには語りかける見込み客が存在しなくてはいけませんし、質の良い見込み客を生み出すことによってセールスも質の良いお客をクローズすることが可能になります。理想の見込み客であるペルソナを定義してリードジェネレーションを行うことは、結果としてリードジェネレーションの方向性を決めることになります。そして、コンテキストを考慮したマーケティング活動を行うことによってペルソナが自らあなたの製品サービスに興味を示してくれるようになります。
その3:プロダクトや自社のポジショニングを決めるための指標となる
仮に製品を開発(改善)しているステージの場合、自社の製品サービスに対してペルソナに対してフィードバックを求める(無償で答えてくれる方たちもいらっしゃいますが、ノベルティなどのプレゼントをするとさらに深掘りして答えてくださる方も多くなります)ことは非常に有用です。そのことによって、埋もれていたニーズや改善ポイントに注力をすることができ、結果としてアップセルなどを生む出すことにもつながります。
もちろん、上記の3つ以外にもメリットはあります。当然デメリットも存在しており、私の見る限りではマーケティングの課題を明確にせずに“とりあえずペルソナを作る”などと始める場合は、手段と目的がひっくり返ってしまい本末転倒な結果になってしまうことがあるように感じます。
ペルソナとセグメントの違いは、セグメントが異なるグループのサイズを定量的に把握する目的(簡単に表現すると)に対して、ペルソナは顧客像をニーズ、コンテキスト、モチベーション、行動など“課題”や“欲求”につながる要素を表現している顧客群の像を表し、製品サービスの価値を伝えるための対象を明確にするための“人物像“ということが言えるでしょう。
結果として、包括的なユーザーエクスペリエンスを改善していくことにつながり、自社製品サービスと見込み客、顧客とのズレを減らし最適な顧客を増やすことにつながります。(結果として、セグメント情報も改善することになります)。
ペルソナを作成するときは、1対1のインタビュー、グループインタビュー、実際のセールス担当者に対してインタビューを行う、など様々な方法を行い、セグメンテーションとは異なり巨大な数のデータに対して行うものではありません。
小さいところから始めることができ“ペルソナ設計”と表現され畏まったプロセスのように感じられるかもしれませんが、実際はそのようなものではありません。現状のセグメント情報だけでは理想の顧客像の課題が見えづらいと感じられている方は是非ペルソナを検討する、というマインドセットを持たれるところから始められてください。