データ利用を検討する際に、CDPの名前があることでしょう。CDPはさまざまなデータを集約するプラットフォームです。この記事では、CDPに集約する代表的なデータをまとめます。
CDPの基本
CDPとはひと言でいうと、「顧客データの基盤」です。「Customer Data Platform」の略語ですから、まさにこの名前の通りです。
役割としては、顧客データの「収集」「統合」「管理」「連携」です。収集はそれぞれのデータ取得方法によって、施策は連携されたツールでおこなうというのが一般的ですが、これらの機能をCDP内に持つツールも存在しています。分析についてもBIツールなどと連携しておこなう形ですが、CDP内だけである程度できるものも出てきています。
またCDPとの違いがよく話題にのぼるDMPですが、1stパーティーデータを中心に集めたプライベートDMPとCDPは、基本的な機能はあまり変わりはありません。概念としては、DMPは広告活用、CDPはもっと幅広い顧客データの分析や活用といったふうに捉えられます。この記事では、そうした幅広い分析や活用をおこなうためにCDPで管理する代表的なデータの種類をまとめます。
CDPに集約する代表的なデータまとめ
それではCDPに集約するデータを紹介していきます。なおこれらのデータが、必ずないと成り立たないというわけではありません。業種によってはそのデータは存在しない、逆に特有のデータもあります。このまとめは、あくまでも代表的な例として捉えてください。大分類の中に、それぞれ小分類があるといった形でまとめていきます。
自社データ(1stパーティーデータ)
訪問データ
- アクセスログ
デジタルマーケティングをおこなっている方にとっての定番、アクセスログです。Webサイトはもちろんですが、アプリを運用している場合はこれも含みます。
アクセスログというとGoogleアナリティクスのデータがイメージされると思いますが、CDPはセッション(訪問)ではなく顧客単位のデータになります(ただしGA4の場合は、こちらもユーザー単位のツールです)。
Webサイトやアプリへの訪問が基本となりますが、その中での行動(どのページを見たか、メニューをクリックしたか)など詳細なデータも収集する場合があります。 - 来店データ
実際の店舗がある場合は、来店データが非常に重要です。CDPに集めて一元管理するという意味で、来店履歴は必須といえます。来店日時などが構成要素ですが、複数店舗を利用した履歴も取得が必要です。オンラインでの行動履歴と違いオフラインの行動なので、データを取得するための仕組みを考えなければなりません。 - 広告
広告経由の訪問データを取得するケースもあります。主にデジタル広告に対してですが、クーポンコードを入力するといった形でオフライン広告のデータを取得することも可能です。
個人識別のデータ
- ID
企業ではさまざまなIDが、顧客に対して割り振られています。これらは個人を識別するうえで重要なデータとなります。役割により複数のIDが割り振られていたり、アカウントが付与されている場合もあります。 - デモグラフィック
統計学の代表的な属性である、性別や年齢のデータです。居住地域や職業、あるいは家族構成、収入などを含める場合もあります。 - 住所
一般的なデモグラフィックの範疇を超え、住所データを持つこともあります。 - 連絡先
e-mailアドレス、電話番号などがこれに該当します。
ここでは外していますが、もちろん氏名も個人を識別するデータとして、CDPで管理される場合があります。ここに記載した個人を識別するデータは厳重に取り扱われるべきものなので、企業のポリシーに合わせていくことになります。
顧客データ(CRM)
顧客と関係が深いデータはCRMとしたいところですが、これにはいくつもの定義があります。ここでは特に顧客とのやり取りに関係するデータ、として具体的にあげていきます。
- 取引データ
実際に顧客との取引が発生したデータです。購入やサービスの申込み、あるいは予約など。キャンセルといったデータも含みます。購入(注文や予約の)日付、商品やサービス、その数や金額といったものも含みます。RFM(最新の購入、頻度、金額)ができるデータが基本と捉えておくといいでしょう。顧客との関係性を構築していく中で、定量的に取得されるデータです。
この中の一つに、POSデータも含まれます。POSデータは単独では売上のみのデータになるので、顧客と紐づけるための仕組みが必要です。 - ポイント、クーポン利用データ
オンライン、オフラインでポイントデータの活用は、CRMを促進します。両方のデータを連携させやすい仕組みです。獲得や利用に応じた施策も実現できます。クーポンも、これに似た役割を持たせることができるでしょう。 - カスタマーサポートの利用
カスタマーサポート(CS)の利用履歴は、重要なデータとなります。問い合わせ日時や回数といった量的データとともに、問い合わせ内容が大切です。問い合わせの種類を登録して、それだけで集計して定量データにしている場合がありますが、顧客分析さらには関係性の強化、サービス改善などに利用する場合は、それだけでは物足りないものになります。CSの担当者、回答履歴も大切です。 - e-mail
e-mailへの反応も、貴重なデータになります。開封や中に記載されたURLのクリックなどです。MA(マーケティングオートメーション)で利用するデータ、と捉えておくといいでしょう。
その他
- アンケートデータ
「この店舗を最初に知ったきっかけは何か」「商品購入の決め手は何だったか」「実際に使ってみての感想は?」など、事業者側が知りたいデータを集めるのにアンケートは最適です。定量的な質問はもちろんですが、顧客データは定量的なものだけでは成り立ちません。問い合わせ履歴を定量データとして管理する以外に、アンケートの自由記述でより深い意見を集めることは価値があります。自社や商品、サービスといったもの以外に、顧客の嗜好を聞いたり、競合と比較できるデータの取得も可能です。 - ウェアラブル、IoT
パソコン、スマホからのデジタルデータではなく、ウェアラブル端末やIoT経由のデータ収集、管理もCDPでおこなえます。たとえば某メーカーとCDPでは、連携してのデータ収集や活用実験を以前からおこなっています。
BtoB
- 営業部門データ
広くは取引、CRMなどの範囲に入るデータですが、営業が持つデータはBtoBの場合には欠かせません。アポイントや商談、担当などのデータ、もちろん成約などの取引データもです。
外部データ
CDPは前項でリストアップした自社データ(1stパーティーデータ)が基本ですが、他のデータを管理、利用できないわけではありません。内容によっては、それらが強力なプラスアルファになる場合もあります。代表的なものをいくつか、ピックアップしておきましょう。
- 統計データ
統計とは「人口(世帯)」「経済」など、さまざまなジャンルのものがあります。業種、業界のデータといったものが必要になるケースもあります。 - 調査データ
日夜さまざまな調査がおこなわれています。種類もいろいろですが、実際にCDPに入れて活用できるレベルのものは、有料データがほとんどと思っておいていいでしょう。 - 天候、気温データ
業種によっては、天候や気温が売上や行動に影響を与えるケースがあります。オンラインビジネスが中心であってもO2O、あるいはリアル店舗も持っている企業であれば大いに影響が考えられます。 - 競合、検索データ
競合のデータは、非常に気になるものです。入手可能な範囲で、これらをCDPで管理することもあります。またインターネット上の行動履歴、特にユーザーニーズを表す検索行動のデータを必要とされる場合もあります。これについても、一部有料での提供があります。 - パブリックDMPのデータ
パブリックDMPのデータをCDPの中に入れ、活用しているケースもあります。一般的に3ndパーティーデータと呼ばれるものです。プライバシー保護の技術がさまざまな端末で導入、あるいは法的な規制もあり昔ほど有効ではないという意見もありますが、内容によってはプラスとなるものが今も存在しています。 - 2ndパーティーデータ
特定の企業と提携して得たデータを、2ndパーティーデータと呼ぶ場合があります。厳密な定義のものではありませんが、3ndパーティーデータが逆風の中、こちらを取り入れる企業もあります。 - 法人データ
ここまでに紹介してきたのは、一般的な顧客データでした。BtoBにおいてはこれだけでは十分ではありません。法人データが必要になります。またそのデータと個人を紐づけできる仕組みになっていることが必要です。
CDPとデータの活用
ここまでで見てきたように、CDPはさまざまなデータを集めた価値のある“箱”です。これらを組み合わせて分析、さらにはマーケティング施策に落とし込めればすごいことができそうだ、とワクワクすることでしょう。
しかし現実は、CDPの利用がそれほど増えているわけではありません。いや導入はされていても、活用はあまりされていないといった方が正しいでしょうか。
まず第一に、データを集約させるにはそれなりのスキルや工数が必要です。もうひとつが、散在しているデータを集約することの難しさです。これはデータの内容や所在がわからないといった理由、それ以上に管理や所有が部署ごとになっていて、調整が困難といったケースがあります。
加えて、ほとんどのCDPはそれなりのコストがかかります。中小企業であれば、手が出しにくいものです。こうした場合の選択肢のひとつとして、HubSpotがあります。HubSpotはもともと中小規模のビジネスに対して作られたツールです。こうした規模の企業が持つデータの管理、さらには活用といった範囲では、CDPと同等以上の働きができます。逆に大手企業では、HubSpotとCDPを連携して活用している事例もあります。ビジネスの規模に応じたノウハウをご用意していますので、ご興味がある方はぜひお問合せください。