「顧客分析とはなんですか?」と聞かれて、簡潔に本質を捉えた答えを用意できる人はそう多くありません。顧客分析自体難しいものではないのですが、その目的等が誤解されがちで、適切な効果を得られるケースが少ないのです。もしも顧客分析を「マーケティング戦略効果を最大化させるもの」と考えていたら、それは半分正解で半分不正解です。
顧客分析にはもっと重要な役割がありますし、可能性もあります。本稿ではそんな顧客分析の基礎について紹介します。
顧客分析とは?
そもそも顧客分析とは何でしょうか?「分析」はある物事を細分化し、それを構成する要素について把握することを指します。このことから顧客分析はまず「顧客自身について理解するためのもの」だと言えますね。さらに顧客分析について理解するために、顧客分析を実施する目的を確認していきましょう。
顧客が求めているモノ・コト・サービスを知る
ビジネスとはつまるところ「顧客が求めているモノ・コト・サービスを、顧客が求めているときに提供すること」です。この点を十分に理解していればビジネスにつまづくことはありません。しかしながら多くの企業が、こうした顧客ニーズを把握するのに苦労しています。アンケート調査など色々な施策を講じてみても、顧客ニーズを100%把握することはまず不可能です。
顧客ごとにニーズは違いますし、顧客個人のニーズも流動的です。しかしだからこそ顧客分析を行い、顧客が求めているモノ・コト・サービスを100%に近い精度で把握し続けることでビジネスの成功につながります。
製品やサービスが持つ価値を知る
どんな製品やサービスであれ、それを提供する会社には独自に考える「顧客に提供できるベネフィット」があります。ベネフィットとは製品やサービスを通じて顧客が得られ体験のことです。
たとえば「誰でも簡単にプロ並みの撮影ができる」というメリット(利点)を打ち出した一眼レフを購入した顧客が、そのカメラを使用した際に「プロカメラマンになった気分」を味わえばそれがその製品のベネフィットです。
実は、製品やサービスを提供する企業が考えるベネフィットと、顧客が実際に得るベネフィットには乖離がよく存在しています。この乖離が製品やサービスの売上に大きな影響を与えるため客観的に製品やサービスの価値を見つめ直すことが大切です。
では、顧客分析によって製品やサービスの価値が知れるのはなぜでしょうか?それは顧客ニーズを深く理解することで顧客視点に立った考え方ができるようになり、製品やサービスについて客観的に見つめるための眼が養われるからです。
どんな物事でも客観的視点を取り入れることが大切なように、製品やサービスを販売する上でも客観的視点が欠かせません。「彼を知り己を知れば百戦あやうからず」ということです。
顧客とのタッチポイントを知る
顧客と企業のかかわりは製品やサービスを販売するその時だけではありません。実はもっとずっと前から、顧客と企業のかかわりは始まっています。ある製品を購入したいと考えている顧客はまず、インターネットでその製品に関する情報を収集します。その製品群の中に自社製品があれば、このタイミングで顧客とのタッチポンとが生まれる可能性は高いでしょう。
その後は問い合わせやデジタル広告など、顧客と企業のタッチポイントは本当にたくさんあります。顧客の購買行動を十分に理解していればタッチポイントがどこにあり、タッチポイントごとにどういったコミュニケーションを実現すればよいのかが判断できます。
ちなみに顧客とのタッチポイントを知るための顧客分析には「ペルソナ」と「カスタマージャーニーマップ」を用います。
≪ペルソナ≫
ターゲットとなる顧客が持つ属性情報やその他様々な情報を整理して、それに沿ったマーケティング施策を展開するための顧客分析。想像上の顧客を作り上げ、細かい要素を設定した上で顧客の購買行動やニーズを把握するためのモデルにする。
≪カスタマージャーニーマップ≫
ペルソナと併用して顧客の購買行動を知るために、顧客が潜在的なニーズを持っている段階からニーズが掘り起こされた段階、最終的に製品やサービスの購入にいたるまでの行動をマッピングしてタッチポイントを把握する。
これらの顧客分析手法は方法論さえ知っていれば特別なデータは不要なので、ぜひ取り組んでみてください。
市場が持つ可能性を知る
製品やサービスを投入する市場は常に変化しています。市場が急速に廃れていくこともあれば、破壊的イノベーションによって市場のリーダーが急変することもあります。そうした市場の可能性と将来性を知ることは自社製品やサービスのポジションを調整しつつ、適切なマーケティングを展開する上でとても大切です。
国内はもちろん海外の情勢、あるいは最新技術に関する情報まで察知して市場を分析し、様々な変化に備えなければいけません。
LTV(Life Time Value:ライフ・タイム・バリュー)を向上する
LTVとは「顧客生涯価値」のことです。顧客が企業とかかわりを持っている期間の中で、どれくらい利益に貢献しているかという1つの指標になります。単純に考えて「LTV=優良顧客」ということですが、ちょっとして注意もあります。
LTVは企業とのかかわりが長くなるほど自然と大きくなるものですが、かかわりを持ってからまだ日が浅い顧客でも高いLTVを持っている場合があります。これを知るためには単純な時間や利益で判断するのではなく、どれくらいの期間でどれくらいの利益を生んでいるかという指標を明確にしてみましょう。そうすることで、取引が開始したばかりの顧客でも高いLTVを持ち、将来的に大きな利益をもたらしてくれる顧客に気づくことができます。
このようにLTVが正確に把握できれば、顧客ごとにどういったマーケティング戦略を実行すればよいのか具体的な施策が敵ます。
顧客分析に大切なPKTとは
少し解説が長くなりましたが、そもそも顧客分析とは何なのかを理解していただけたのではないかと思います。そんな顧客分析を実施するにあたって大切なことがあります。それがPreparation(準備)・Knowledge(知識)・Tools(ツール)です。
Preparation(準備)
何事にも準備が必要なように顧客分析にも欠かせません。それは分析を始めるためのデータだったり環境だったり、心構えだったりします。どれだけ準備を徹底しているかで顧客分析の精度は決まるでしょう。
Knowledge(知識)
顧客分析は正しい知識を持って行うことが大切です。最終的にはその結果でマーケティング戦略を立案するのですから、間違った顧客分析を実行していればマーケティング戦略も失敗になります。
Tools(ツール)
最後に、顧客分析を行うためのツールが必要です。ちなみにツールとは分析を自動化するためのものだけではなく、顧客分析のフレームワークも指します。適宜正しいツールを使用することで精度の高い顧客分析を実行します。
これらの要素はいずれかが欠けていると顧客分析はできません。顧客分析に取り組む際は必ずこのKPTを意識してください。
顧客分析を今から始めよう!
顧客分析を実施してメリットのない企業はありません。正しく顧客分析を実施できれば、マーケティング戦略に有用な知見を導き出すことができます。まずは簡単な顧客分析から始めてみましょう。