皆さんは顧客分析は何のためにあるとお考えでしょうか?今「マーケティング効果を最大化するため」と考えた方は危険信号です。短期間でのマーケティングの指標を達成するためだけに顧客分析を使用すると、良い分析はできないからです。
では顧客分析の目的とは何なのか?今回はマーケティングの基本ともいえる顧客分析の目的を明確にして、正しい分析をするためのヒントとしていただきたいと思います。
色々とある顧客分析の目的
顧客分析における「顧客」とは、自社商品を購入したりサービスを利用した人や企業だけでなく、広義ではその人や企業が属する市場も含めます。そうして広範囲にわたって様々なデータを分析することで質の高い顧客分析が完成するでしょう。しかしそれだけでなく、顧客分析の目的を明確に持って取り組むことも大切です。まずはシーンごとに色々とある顧客分析の目的を確認していきましょう。
目的①顧客のニーズを知る
顧客分析と聞いて真っ先にイメージしやすい目的が顧客のニーズを知ることでしょう。どんな課題を抱えていて、どんな商品やサービスを求めているか?これを知ることは顧客分析の第一歩とも言えます。
しかし、これだけでは短期的なマーケティング指標を追っているに過ぎず、顧客分析の目的をニーズ把握に絞ってしまうのは危険です。
目的②商品やサービスの価値を知る
どんな商品やサービスであれ、それを提供する会社には独自に考える「顧客に提供するベネフィット」があります。ベネフィットとは商品やサービスを通じて顧客が得られる“結果”です。
たとえば「誰でも簡単にプロ並みの撮影ができる」というメリット(利点)を打ち出した一眼レフを購入した顧客が、そのカメラを使用して得た「プロカメラマンになった気分」という結果がベネフィットになります。ちなみにベネフィットはプラス面での結果を指します。
実は、商品やサービスを提供する会社が考えるベネフィットと、顧客が実際に得るベネフィットにはちょっとしたギャップが介在します。このギャップがマーケティングに大きな影響を与える可能性があるため客観的に商品やサービスの価値を見つめ直すことが大切です。
顧客分析の視点をほんの少し変えるだけで、顧客のニーズだけでなく自社の商品やサービスの価値についても知ることができます。孫氏の「彼を知り己を知れば百戦あやうからず」という教えが説いているように、顧客を知るだけでなく商品やサービスへの理解を深めることもマーケティングには大切です。
目的③LTV(顧客生涯価値)の向上に
皆さんは新しい顧客を獲得するためのコストと、既存顧客の単価を上げたり離脱するためのコストではどちらが高いと思いますか?答えは前者、新しい顧客を獲得するコストの方が高い傾向にあります。
マーケティングでよく言う「1:5の法則」によれば、新規顧客の獲得は既存顧客への販売よりも5倍コストがかかるとされているのです。なので効率良く収益拡大を狙っていくためには、まずは既存顧客のLTVを向上して足元を固めていくことが大切でしょう。
そのため既存顧客の分析を積極的に行うことでマーケティングを最適化し、LTVを向上させていくことができます。さらに顧客分析を通じて優良顧客に特徴をつかんでいけば、新規顧客獲得の際にそのデータを活用して効率良く獲得していくことも可能です。
目的④タッチポイントを知る
顧客が商品やサービスを認知して購入に至るまでの道のりでは、顧客と企業にいくつかのタッチポイントがあります。マーケティングの理想としてはタッチポイントごとに適切な施策を展開し、顧客の購買意欲を段階的に上げていくことでしょう。その中で自社商品やサービスについて刷り込めば収益は拡大します。
ただしこれはあくまで理想であって、顧客ごとにタッチポイントは違いますし適切な施策も異なります。そこでターゲットとする顧客像を作り、その人物が商品購買やサービス利用に至るまでのマッピングをしてタッチポイントを知ることが大切です。
ちなみにこうした分析手法を「ペルソナ」と「カスタマージャーニーマップ」と呼びます。
目的⑤市場の可能性を知る
商品やサービスを提供する市場は変化の連続です。市場が急速に廃れていくこともあれば、破壊的イノベーションによって市場のリーダーが急変することもあります。そうした市場の可能性を知ることは自社商品やサービスのポジションを調整しつつ適切なマーケティングを展開する上でとっても大切です。
国内はもちろん海外の情勢、あるいは最新技術に関する情報まで察知して市場を分析し、様々な変化に備えましょう。
優れたCX を実現する「顧客データ」活用のあり方を探る
顧客接点の多様化を味方につけて差別化が難しいデジタル時代を生き抜く
顧客接点のオムニチャネル化が進む今、顧客エンゲージメントの強化やロイヤルカスタマーの育成は、あらゆる企業にとって共通の重要課題です。多くの企業は以前からCRM などのIT ソリューションを活用することで顧客対応の最適化を進めてきました。
しかし、デジタル化がさらに加速する現在では、顧客対応においてどのようにデータと向き合い、どのように顧客体験を向上させていけばよいのでしょうか。オイシックス・ラ・大地株式会社 奥谷孝司氏とSAP ジャパン株式会社 富田裕史氏の対談から、その方向性を探ります。
顧客分析の目的が分からない…そんな時は?
ここまで顧客分析の目的について5つご紹介しました。やはり短期的なマーケティング指標を追うためだけでなく、中長期的な目標を達成するために顧客分析は欠かせません。しかし中には、「顧客分析の目的が分からなくなってしまった…」という状態に陥ってしまうケースがあります。
実は熟練のマーケターでもよくあることなので悲観する必要はないでしょう。まず重要なのは、常に目的意識をもってマーケティングの大切な目的を見失わないようにすることです。そのためには適切なKPIを設定して目的を数値化してみましょう。
KPIとは「キーパフォーマンスインジケーター」といって、最終的な目標を達成するための中間ポイントのようなものです。目標達成のための道のりを細かく細分化して、各中間ポイントでの達成率を数値化します。
たとえば「広告収益を150%向上する」という目標があれば、その達成に必要なKPIをいくつか儲けましょう。広告配信数を20%増加する、コンバージョン率を10%向上するなど複数のKPIを設定します。さらにKPIごとに期間と明確なゴールを定めましょう。KPIを追っていけば自然と「広告収益を150%向上する」という目標が達成されます。
KPIを活用した方法はあくまで防止策なので、顧客分析の目的を完全に見失ってしまった場合は改めて「自社商品やサービスで何を解決したいのか?」を見つめ直すことが大切です。
顧客分析の目的を見失ってしまうケースでは往々にして自社商品やサービスのベネフィットを明確に理解していなかったり、そもそも根本的な部分に問題があります。なのでその商品とサービスをもって何を解決したいのか、どんな顧客に使ってほしいのかを改めて明確にしましょう。
その上で新しく顧客分析の目的を作り、その後はKPIを確実に設定して目的を見失ってしまわないよう防止策を取ります。
詳しくは、こちら「顧客分析とは?」記事でご参考にしてください。
顧客分析に大切なのは①心構え、②知識、③ツール
顧客分析を実施するにあたって分析ツールがあっても、それを活用できなければ意味はありません。しかし知識があっても基本の心構えが成っていないと良い分析はできないものです。なので、顧客分析にとってまず最初に大切なことは基本の心構えを持つことです。その一つが「短期的なマーケティング指標だけを追わない」ことでしょう。
もしも皆さんが顧客を知るためだけに顧客分析を実施して、短期的なマーケティング指標しか追えていないという状況にあれば今一度、顧客分析の目的を明確にしてください。目的が違えばマーケティング施策の効果も違います。複数の目的を持てば長期に渡って収益を生むマーケティングを実施できます。