時代の変化とともに、あらゆる企業で顧客体験(CX)の向上が求められてきています。本記事では、そもそも顧客体験の基本情報や、重要視されるようになった背景、CS・UXとの違いを解説します。また、顧客体験を向上させるために5つの基本的なポイントもご紹介します。
顧客体験とは?
顧客体験とは、英語で「Customer Experience(カスタマーエクスペリエンス)」を略し、しばしば「CX」と呼ばれます。商品やサービスの認知から購入、利用といった、顧客の一連の行動における、さまざまな体験のことを指し、多くの企業が注目するようになってきています。
CXを向上させるためには、マーケティング施策を綿密に検討することが大切です。特に、見込み顧客へ自社の商品にどのように触れてもらい、いかに魅力ある体験を提供し訴求していくかといったポイントが重要になります。
また、CXは「顧客が体験したことに感じる価値(顧客経験価値)」とも言い表せます。アメリカの経営学者バーンド・H.シュミット氏は、顧客経験価値には「Sense(感覚的)」や「Feel(情緒的)」「Think(知的)」「Act(ライフスタイル)」「Relate(社会的)」といった5つの要素が含まれていると提唱しました。企業はこれらの要素を踏まえ、どのタイミングでどのような顧客体験を提供すべきかを考える必要があります。
顧客体験(CX)と顧客満足(CS)の違い
CXのように顧客を軸にした用語として、「CS」があります。CSとは、「Customer Satisfaction(カスタマーサティスファクション)」の略称で、その名の通り「顧客満足」の意味です。CXと同じ意味に捉えられがちですが、両者には明確な違いがあります。
まず、CSはあくまで「商品やサービス購入後の満足度」に焦点が当てられている一方で、CXは購入前から購入後に至るまで、すべての体験が対象となる点です。
またCSは、製品やサービスそのものの性能などに関する満足度を測る指標ですが、CXでは商品やサービスを使うことでどのような体験をし、その結果どのような感情を持ったかといった体験価値までを含んでいる点で大きく異なります。
つまり、CXはCSよりも対象が幅広く、商品やサービス全体の満足度を測っているのが特徴と考えられるでしょう。
顧客体験(CX)とユーザー体験(UX)の違い
また昨今、「UX」もよく耳にするようになりました。UXとは、「User Experience(ユーザーエクスペリエンス)」を略したIT用語で、一般的に「ユーザー体験」という意味合いで使われます。そもそもユーザー体験とは、ユーザーが商品やサービスを購入する、また利用する際のあらゆる体験です。そのため、商品やサービスそのものの機能や性能が使いやすいかどうかだけではなく、購入や利用といった経験を通じて得られる体験すべてを含んでいます。
CXとの違いとして、UXが想定する対象者は商品やサービスを「実際に購入した人」であることです。その点、CXは商品やサービスを本当に購入するかどうかは別として、購入の可能性がある、いわゆる見込み顧客や潜在顧客と呼ばれる層も対象となります。つまり、対象者の範囲として、CXはUXよりも幅広いと考えられるでしょう。
顧客体験が重要視される背景
企業が顧客体験を重視するようになったのには、いくつかのきっかけが挙げられます。
近年は、インターネットなど通信インフラが普及し、スマートフォンなどの便利なデバイスも広く使われています。また、デジタルマーケティングによるビジネスが次々と誕生し、SNSを通じて消費者はどのような情報でもスピーディーに得られるようになりました。
一方、企業にとってはリアル店舗だけではなく、ネット広告やSNSなど従来よりも数多くの「接点」を顧客と共有できるようになったことで、購入前の認知段階でも、いかに魅力を発信できるかが大切に考えられるようになりました。
さらに、市場が飽和した現代では、ただ商品やサービスの機能や性能を主張しても、他社との決定的かつ恒久的な差別化は困難でしょう。そこで、商品やサービスを利用することで得られる体験価値に焦点を当てたマーケティングにシフトし、市場での優位性を確保しようとする動きが広がっています。
顧客体験を向上させるためのポイント
顧客体験の高め方は、それぞれの企業によって検討しなければなりません。しかし、どの企業であっても注目すべきポイントが存在します。ここでは、顧客体験を向上させるための基本的なポイントを5つ紹介します。
課題を可視化する
まず、顧客がどのように商品やサービスを知り、購入や利用に至るのかといった流れを確認し、顧客がその一連の行動の中で障壁と感じている箇所を見出し、把握することが重要です。一般的に、顧客が認知してから購入、利用するまでの流れを旅に例えて「カスタマージャーニー」と呼ぶことがあります。その心の動きをカスタマージャーニーマップとして図で表せば、顧客と自社にまつわる課題を可視化しやすくなるでしょう。
顧客視点で取り組む
顧客体験を考えるとき、自社の視点は少し横に置き、あくまで顧客のニーズを中心にどのような体験を提供すべきかを検討する姿勢は非常に大切です。顧客の欲していることについて、接点を活用して調査しておくとスムーズに取り組めるでしょう。
オムニチャネル化する
近年は、「オムニチャネル化」といった用語もよく耳にするようになりました。オムニチャネル化には「あらゆる接点」といった意味があり、複数のチャネルがシームレスに連携されている点が特長です。
企業が顧客と接点を持てるチャネルとしては、従来型のリアルな店舗、スマートフォンのアプリやSNSはもちろん、Webサイトに埋め込まれたチャットやサポートフォーラムなどが挙げられます。また、企業独自の販促キャンペーンで接点を持つ場合や、「モノのインターネット」と呼ばれるIoTで接続されたデバイスなども、オムニチャネル化の対象になりえます。
オムニチャネル化を実現できれば、顧客はチャネルが変わってもシームレスに購入や利用を検討できるため、利便性を感じられるでしょう。また企業にとっても、一元的にチャネルを管理できることから、顧客が検討している箇所をターゲットにし、タイムリーに最良の顧客体験を提供できるメリットがあります。
個人化(パーソナライゼーション)を実現する
顧客体験は、一律で提供しても意味がありません。なぜなら、心地よいと感じる体験は一人ひとり異なるからです。そこで個人化(パーソナライゼーション)、つまり行動や人物像にあわせたぴったりの体験を提供することが重要になります。具体的には、個人の属性やWebサイトの閲覧履歴、購入タイミングや履歴などの顧客データを基に感情の動きと行動を徹底的に分析し、それぞれの顧客体験を最適化します。
チャットボットを導入する
昨今は、顧客からの問い合わせ窓口にチャットボットを導入する企業も増えました。商品に関して問い合わせする顧客には、「わからないことを早く解決してほしい」といったニーズがあります。そのため、たとえば電話口でオペレーターに待たされれば、満足度の低下につながることは言うまでもありません。その点、AIなどを活用したチャットボットであれば、スピーディーな解決が実現でき、顧客離れも防げます。
カスタマーサポートでの対応も、いわば一種の顧客体験です。顧客は気軽に知りたいことを質問して解決できることで満足度が上がります。また企業には、顧客の生の声やさまざまなデータを収集でき、それらを次の商品開発やマーケティング戦略に活かせるメリットがあります。
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