WMSを導入すると、倉庫作業を効率化して担当者の負担軽減やコスト削減につながります。これから新たに導入するかどうかを悩んでいて、具体的なメリットを知りたいという方もいらっしゃるのではないでしょうか。そこで今回は、導入メリットや代表的な機能、選定ポイントなど、WMSに関する知識をまとめて解説します。
WMSとは
WMSとは、倉庫業務を効率化するためのさまざまな機能を搭載したシステムのことです。一般的に、「倉庫管理システム」と「WMS」は同じ意味合いを持っています。
WMSを導入してシステムによる管理・統制に変更することで、倉庫業務効率の向上をはかり、労働力不足や労働時間削減にアプローチが可能です。また、人の手による作業を減らせるため、ヒューマンエラーの防止にもつながります。
商品の入荷管理や出荷管理、在庫管理など、倉庫内で必要な業務をアナログで行うと、一つひとつの業務に手間と時間がかかります。近年は少子高齢化による労働力の減少や働き方改革による労働時間削減の流れを受けて、いかに業務効率を向上させられるかが企業の課題となっている背景もあり、WMSを導入する企業が増えています。
在庫管理システムとの違い
在庫管理システムとは、倉庫業務のなかでも在庫管理に特化したシステムのことを指しています。WMSにも在庫管理システムが含まれているため、在庫管理システムは「WMSの一部」と表現することもできるでしょう。
入荷や出荷、配送などのシステムは含まれず、あくまでも倉庫内の在庫を管理するための機能だけが搭載されています。例えば、在庫数量の登録機能や賞味期限管理機能などが在庫管理システムの代表的な機能です。
WMSの導入メリット
倉庫にWMSを導入すると、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは、代表的な4つのメリットについて解説します。
現場担当者の作業効率向上
WMSには、倉庫作業を効率化するためのさまざまな機能が搭載されているため、現場担当者の作業効率向上が期待できます。ハンディターミナルを利用してバーコードを読み取るだけで出荷・検品・ピッキングなどの作業を行えることから、庫内業務がスムーズに進みます。
また、システム内に商品情報を登録し、在庫数量とともに一元管理できるので、紙やExcelファイルなどで商品台帳を作成し、管理する必要がなくなるという点でも作業効率アップに貢献します。
ヒューマンエラーの抑制
前述のように、倉庫業務をアナログで行うと個々の作業に膨大な手間と時間がかかります。また、入荷・出荷のたびに商品の数量を目視で数えて紙に記録する作業は、ヒューマンエラーが起こる原因にもなります。
人間による作業が続く限り、ヒューマンエラーを限りなく0に近づけることができたとしても、完全になくすことは難しいといえるでしょう。WMSを導入して倉庫作業をシステム化することで、ヒューマンエラーの抑制を実現できます。
運用コストの削減
WMSの導入によって業務効率が向上すれば、これまでよりも短い時間で同じだけの作業量をこなせるようになり、人件費などの運用コストの削減にもつながります。余剰リソースはほかの作業に回せるようになるため、倉庫作業以外のより重要な基幹業務に注力することも可能です。
倉庫作業の担当者が1日に多くの業務を処理できるようになれば、倉庫全体で処理できる業務の絶対量が増えて、受注可能なキャパシティの増加も期待できるでしょう。処理効率が高まることで配送リードタイムが短縮し、顧客満足度の向上も実現しやすくなります。
リアルタイム性の高い在庫管理
WMSによる在庫管理は、ハンディターミナルでバーコードを読み取るだけで在庫情報がリアルタイムで反映されます。そのため、倉庫内のタイムラグが起こりにくくなり、在庫管理の正確性が向上するというメリットがあります。
紙やExcelによる管理には、倉庫担当者が在庫数を数えた後で紙やExcelを書き換えるまでにタイムラグが発生しやすいというデメリットがあります。WMSの導入により、このようなデメリットを解消できます。
WMSの主な機能
WMSには、さまざまな機能が搭載されています。具体的にどのような機能が搭載されているのか、5つの機能の内容や業種特化のシステムについて解説します。
入荷管理機能
入荷管理機能とは、商品が倉庫に到着したときに検品を行い、倉庫に入庫処理を行うための機能です。ハンディターミナルを活用して入荷予定の数量と差異がないかどうかを確認したり、賞味期限管理機能が備わっている場合は賞味期限登録を行ったりします。
検品処理を終えた商品は倉庫の所定の位置に入庫し、注文があるまで適切な環境で保管されます。
在庫管理機能
在庫管理機能とは、倉庫内にどの商品がいくつ残っているのかを管理するための機能のことです。商品の在庫をあらかじめシステムに登録しておくことで、出荷を完了するたびにシステム上から自動的に在庫の引き落としがかかります。
自動発注機能が搭載されているシステムなどでは、あらかじめ設定された数量を下回ると自動的に発注を行う場合もあります。
出荷管理機能
出荷管理機能は、顧客から注文が入ったときに倉庫からピッキングリストに沿って商品をピッキングし、出荷する商品に間違いがないかどうか検品作業を行うための機能です。
事前に登録されている注文内容とハンディターミナルで読み取ったバーコードの情報が一致しているかをシステムで照合し、出荷ミスを防止します。また、出荷を確定した商品はリアルタイムで在庫の引き落としがかかります。
帳票発行機能
帳票発行機能とは、商品を出荷するためのラベルや伝票を印刷・発行する機能のことです。企業によってどのような発送方法に対応しているかは異なりますが、ヤマト運輸や佐川急便、日本郵便などの国内の大手業者のほか、海外発送や独自の伝票発行に対応しているシステムもあります。
ラベル発行機能は、センターへ納品する際に納品先から指定された様式をテンプレートとして登録しておくなどの活用方法が一般的です。
棚卸管理機能
棚卸管理機能は、WMS上に登録されている商品の在庫数量と倉庫内の実在庫数が一致しているかどうかをチェックし、必要に応じて修正するための機能です。ハンディターミナルで倉庫内に保管されている商品のバーコードを読み取り、その数量がシステム上に登録されている数値と異なるようであれば実在庫の数量に書き換えます。
業種に特化した機能を持つシステムもある
上記のほかに、特定の業種に特化した機能を持っているWMSも存在します。例えば、アパレル業界に特化したWMSでは、商品の色展開やサイズを細かく管理できるのが一般的です。
また、製造業においては、部品管理機能が備わっているシステムがよく利用されています。製品を製造するための部品と必要数量をシステム上にあらかじめ登録しておき、製品が製造されたら該当の部品を在庫上から引き落とす処理が行われます。
WMSを選定する際のポイント
WMSを選定する際は、導入事例やサポート対応などもチェックして自社に合ったものを選定することが大切です。それぞれのポイントについて詳しくみていきましょう。
選定先の導入事例をチェックする
自社に適したWMSを選定するためには、選定先の導入事例をチェックする方法が効果的です。ホームページなどに掲載されている導入事例を参照して、自社の業種・業態と似通った企業への導入実績があるかどうかを確かめましょう。
過去に自社の業種・業態に近い企業への導入実績があれば、自社の業務フローに寄り添った運用を提案してもらえる可能性が高く、導入後に機能不足や運用の認識違いが起こりにくい傾向にあります。
サポート対応が充実している事業者を選ぶ
WMSを選定するときは、サポート対応が充実している事業者を選ぶことが大切です。メールだけではなく、電話や直接訪問に対応している事業者を選ぶのが望ましいでしょう。
WMSを導入後、日々の運用においてトラブルが起こったときに、サポート対応が充実している事業者でなければ復旧までに膨大な時間がかかって業務に甚大な影響を及ぼす可能性があります。できるだけ早期に復旧しやすい体制を整えることで、業務への影響を最小限に抑えられます。
自社システムとの連携範囲を確認する
WMSは、多くの機能が備わっているため、自社の基幹システムやそのほかのシステムと連携して利用するケースもよくあります。自社システムとの連携を考えているのであれば、選定しようとしているWMSと自社システムの連携範囲をよく確認しておきましょう。
事前に連携範囲を確認しておかなければ、連携できると思っていたにもかかわらず対応していなかったなどの思い違いが発生する可能性があります。
まとめ
倉庫作業の効率化やコスト削減が期待できるWMSは、労働力不足や働き方改革への対策になるだけでなく、アナログ作業によるヒューマンエラーの削減などにもアプローチできます。業務改善を進めたいと考えているなら、積極的に導入したいシステムといえるでしょう。
WMSを導入する際は、選定先の導入状況やサポート体制を忘れずにチェックすることが大切です。自社システムとの連携範囲も確認しながら、自社の運用体制に合ったものを選定しましょう。