フィールドサービスの現場作業に非効率が発生するケースは少なくありません。効率化に向けて着手したいと考えているものの、何から手をつければよいのか見当がつかない企業経営者、担当者もいるのではないでしょうか。本記事では、フィールドサービスの現場作業で発生しがちな課題や、効率化に役立つツール・システムについて解説します。
現場作業員の主な業務内容
フィールドサービスとは、現場を訪問して行う点検やメンテナンス、修理などの業務を指します。たとえば、顧客の求めに応じて訪問しパソコンのトラブルを解決する、不具合が生じたエアコンを修理する、家屋の床下や屋根裏を点検するなどの作業が該当します。また、荷物の配送や水道・ガスなどのインフラ工事もフィールドサービスに含まれます。
従来、フィールドサービスはアフターケアの一環として行われるケースが多く見受けられました。しかし、近年では顧客との大切な接点としてフィールドサービスが見直されつつあります。
顧客と接点を持ち続けることは、企業におけるマーケティング上とても重要です。継続的に接点を持ち続ければ、定期的なアプローチで収益化につなげられます。新商品やサービスの案内、新たなプランの提案、上位グレードへの誘導など、接点さえあればさまざまなアプローチが可能です。
また、適切なフィールドサービスの実施により、顧客満足度の向上にもつながります。迅速な悩みの解決や顧客にとってベストな提案を行うことで満足度が高まれば、今後も継続的に自社の商品やサービスを愛用し続けてくれるでしょう。その結果、CLV(顧客生涯価値)が高まり企業の収益も拡大します。
フィールド業務が抱える課題
顧客満足度やCLVを向上させ、企業の利益を最大化させるには高品質かつ充実したフィールドサービスを提供しなくてはなりません。ただ、実際のところフィールド業務に関して、さまざまな課題があるのも事実です。
たとえば、技術スタッフの人材不足です。業種にもよりますが、現場作業者には専門的な知識や技術、経験、判断力など高度なスキルが求められます。優秀な人材は多くの企業が求めるため、人材確保がうまくいかない企業は少なくありません。人材が不足すれば対応できる案件も限られ、得られる利益も減少します。
また、業務の属人化もフィールドサービスで生じやすい課題のひとつです。特定の従業員にしかできない作業や対応が難しい業務などがあると、その従業員が休職や離職したときに対応できません。個々のスキルに大きな差があり、作業スピードや業務品質にばらつきが生じるケースもあります。
スピーディーな対応が難しいケースがあるのもひとつの課題です。フィールドサービスは、突発的なトラブルの解決を求められることが少なくありません。ただ、状況がよく分からない中で駆け付けても解決できない、そもそもすぐに現場へ直行できる従業員がいないといった課題に直面するケースがあります。
ほかにも、部門間の情報共有がうまくいっておらず、初回の訪問で適切に対応できない、手戻りが発生する、移動時間のロスが生じるなどの課題も挙げられます。
現場作業を効率化するツール・システム
現場作業の非効率は組織の利益を圧迫します。現場作業を効率化する方法としては、ツールやシステムの導入が有効です。ツール・システムの種類により機能や向いていること、メリットなどが異なるため、ある程度把握したうえで導入を検討するとよいでしょう。
フィールドサービスマネジメント
フィールドサービスマネジメントとは、フィールドサービスを適切に管理し、効率化を実現する取り組みです。従業員のスキルやスケジュールを把握し、スピーディーに適切な現場へ割り当てる、オンラインで情報共有できる体制を整える、資料の電子化を図り現場へ持ち込む荷物を少なくする取り組みが挙げられます。
上記の取り組みをより効率よく実現するためのシステムが、フィールドサービスマネジメントツールです。ツールの導入によりフィールドサービス全体を網羅的に管理でき、案件に応じた適切な人材のスピーディーな派遣、現場へ持ち込む荷物の減少、担当者の負担軽減などのメリットを得られます。
ツールの導入により、現場作業者は電子化したマニュアルや資料をタブレット端末、スマートフォンなどで閲覧できます。分厚く重いマニュアルや資料をわざわざ現場へ持ち込む必要がなく、スピーディーに求める情報へアクセスできるため、効率的に作業を進められるでしょう。
また、現場作業者の現在地をシステムで把握し、状況に応じた人材配置を行えるのもメリットです。ツールによっては、目的地まで最短でたどり着けるルートを表示できるものもあり、初回訪問でも短時間で訪れることができます。
CRM(顧客関係管理システム)
CRMは、顧客関係管理システムのことです。顧客の氏名や性別、年齢などの属性をはじめ、過去に自社の商品やサービスを何回購入したのか、店舗へ何回来店したのか、総額でいくら使っているのかといったあらゆる顧客情報の一元管理を行えるのが特徴です。
過去に顧客とどのようなやり取りをしたのか、問い合わせやクレーム内容の管理も行えます。これらのあらゆる情報をシステム上でチェックできるため、顧客ごとに適切な対応が可能です。情報はすべて組織内で共有できるため、二重対応や対応漏れなども回避できます。
また、多くのCRMには顧客を分析する機能が実装されています。蓄積したデータを分析し、どのような行動が利益につながるのかを把握できれば、より効果的なマーケティングが可能です。
メール配信機能を備えたツールも多く、定期的なメールの配信で顧客から忘れ去られることを防止できます。しばらく接点がないだけで、顧客が他社の商品やサービスに乗り換えるようなケースは少なくありません。システムで管理している顧客と定期的に接点を持ち続けることで、顧客の流出リスクを抑制できます。
また、CRMで事前に顧客の情報を把握しておけば、初回訪問時から良好な関係を構築できる可能性があります。属性や過去のやり取りなどを把握して臨めば、スムーズにコミュニケーションがとれ、顧客からの信頼感を得られます。
遠隔作業支援システム
遠隔作業支援システムは、遠隔地から現場の作業をサポートするシステムです。システムによりできることは異なりますが、基本的にはオンラインで現場とオフィスを接続し、映像や音声を共有して作業のサポートを行えます。
近年では、スマートグラスやMRグラス、ウェアラブルカメラなどを用いたシステムが普及しています。スマートグラスやMRグラスはメガネ型の端末で、レンズを通してオンラインで送られた、さまざまな情報を閲覧できます。
システムの導入により、現場作業者の作業効率を高められるのは大きなメリットです。たとえば、スマートグラスを装着して作業を行えば、離れた場所にいるベテラン作業者や管理者の指示を受けつつ作業を進められます。メガネ型端末であれば両手がふさがることもなく、効率よく作業が可能です。
また、現場の状況をオフィスと正確に共有できるのもメリットです。電話やメールを用いた音声・テキストでの情報提供では、正確に状況を伝えられない可能性がありますが、ウェアラブルカメラやネットワークカメラなどでは画像・映像を共有できるため、その心配がありません。正確な情報の共有により、適切な指示を受けられ二次被害の防止にもつながります。
まとめ
フィールドサービスにおける現場作業を効率化するには、フィールドサービスマネジメントやCRM、遠隔作業支援システムなどの導入が有効です。ツールごとの特徴を正しく理解し、機能や費用などを比較しつつ自社にマッチしたものを選ぶとよいでしょう。
Microsoft Dynamics 365は、フィールドサービスの領域までカバーできる優れた業務アプリケーションです。こちらも、現場作業の効率化に向けた選択肢のひとつに加えてみてはいかがでしょうか。