業務効率化の一環として、多くの企業で行われている業務プロセス改善には、人手不足による業務負担の解消などのメリットがあります。ですが、どのようなポイントに重きを置いて進めていくべきなのか、よくわからないという方も多いことでしょう。そこで本記事では、業務プロセス改善の手法や実施のポイントについて詳しく解説していきます。
業務プロセス改善の手法
まずは、業務プロセス改善の手法について解説します。業務プロセス改善は、一気に行えるものではありません。次の5つのステップに沿って着実に進めていくことが重要です。
現状分析
最初のステップは、「現状分析」です。現状分析は、業務プロセス改善の成功を左右する重要な作業です。現状が把握できなければ、課題や解決法も見えてきません。まずは、現状の業務内容や業務フローを確認しましょう。担当者のみがチェックした場合、既存の業務内容やフローに慣れている分、当初は問題だと捉えていたことも見逃してしまう場合もあります。担当者以外の新鮮な視点で業務内容やフローを分析し、問題点を洗い出していくのがポイントです。
業務内容やフローに問題点を見つけたら、担当者にもヒアリングやアンケートを実施して原因を特定していきます。マンパワー不足や担当者のスキル不足、手作業が多くIT化が遅れているなど、問題点には何かしらの原因があり、さらに複数の要因が絡んでいるケースも少なくありません。改善すべき箇所を把握しないまま業務プロセス改善を進めると、途中で目的を見失ってしまうといった問題に陥るケースもあるため、的確な現状分析が求められます。
問題解決範囲の設定
現状を把握できたら、「問題解決範囲の設定」へと進みます。このステップでは、業務プロセス改善における問題解決の範囲を設定し、課題の規模によってはプロジェクトチームを発足します。問題解決の範囲と責任者を明確にすることで、社内できちんと統治・管理されたプロジェクトとして業務プロセス改善を進められます。
どの部署のどの業務プロセスを対象とするのかを決めたら、業務プロセスのモデル図を作成しましょう。モデル図を作成することで、部門間でのつながりも含めて、プロセスの全体像を可視化できます。詳しいはずの担当者でも、自分の担当業務以外のプロセスは案外理解できていないものです。また、部門内の業務が効率化されても、それによって以降の工程が非効率になるようでは意味がありません。部門間のつながりにも着目し、プロセス全体を効率化していく高い視点が求められます。
モデル図作成では、世界標準の表記法である「BPMI」を活用するのが一般的です。モデル図を作成しておけば、その業務について明るくない経営層の承認を得る際にもスムーズに進められるでしょう。
対策の検討
抽出された問題点の原因をもとに、「対策の検討」を行っていきます。業務プロセス改善のゴールは「生産性の向上」です。対策を考える際には、最終的に生産性の向上につながるかどうかを主眼に入れて検討する必要があります。つまり、マンパワー不足が問題だからといって単純に人材を補充するという案では、結局その分だけ人件費が増えることになり、生産性の向上にはつながりません。
この場合は、無駄なプロセスの省略化や業務のIT化をベースに改善策を検討するのが有効です。企業の場合、ERPシステムの導入によって業務情報を一元化して業務効率化を図り、人件費や経費の削減を実現するケースが多いでしょう。対策を検討する際には、「効果」と「実現可能性」の2軸に分けて施策を整理し、優先度を決めていきます。当然ながら優先度が高いのは、有効性が高く、かつ実現しやすい施策です。
解決方法の開発
業務プロセス改善の方向性と施策が決まったら、それに沿って具体的な「解決方法の開発」へと進みます。システム開発の場合は、システムを実装する段階にあたります。ただし、業務プロセス改善のためのシステム開発の場合は、開発者だけに任せてもプロジェクトが円滑に進まないことが多いので注意が必要です。業務の当事者や関係者を巻き込み、開発者にも目的を共有しながら、共通認識のもと開発を進めていくことが重要となります。
また、業務プロセス改善では、小さなものでもよいので最初に成功体験をつくることが肝心です。優先度が高い施策のなかでも特に効果が出やすいものから、システム開発に着手していくのがポイントです。取り組みの効果を実証できれば経営層の理解も得やすくなります。プロジェクトの士気もさらに向上していくでしょう。
実施内容の振り返り
業務プロセス改善の最後のステップは、「実施内容の振り返り」です。業務プロセス改善の目標を達成しているのかを評価するプロセスにあたります。業務プロセス改善は、一度で目標達成できるほうが珍しく、対策を実施したことで新たな問題点が浮き彫りになる場合も多くあります。PDCAサイクルを回して、適宜修正・再検証しながら、全体最適化を図っていくことになるでしょう。
その際、KPIのように中間地点での達成度を定量化できる指標を設定しておくと、最終的な目標に対する進捗率が一目瞭然となります。「対策の検討」段階で、優先度を決めるとともに、それぞれのKPIを設定しておくことをおすすめします。「IT化やAI化による業務改善による人件費の削減」「残業時間の削減」などが業務プロセス改善におけるKPIの一例です。
業務プロセス改善のポイント
ここまで、業務プロセス改善の進め方について説明してきました。ここからは、業務プロセス改善効果を高めるためのポイントを2つ解説します。
定期的な進捗報告の実施
1つ目のポイントは、定期的な進捗報告の実施です。業務プロセスの施策検討段階でも、実行中であっても、スケジュール通りにプロジェクトが実行されているかどうかを定期的に確認することが重要です。施策ごとに実施期間や中間評価の期間も定めて、PDCAサイクルを回しながら計画的に進めていきましょう。
期間が区切られていないと、どうしても優先度が下がったり、担当者の熱量が落ちてきたりしがちです。定期的に進捗報告を実施すると、業務プロセス改善を適切に管理できるようになるほか、関係者のモチベーションを保つ効果も期待できます。
また、効果を見込んで実行に移した施策が、実はあまり成果に結びついていないということも少なくありません。KPIを設定し、途中段階であっても細分化して評価すれば、最終目標とのズレにいち早く気付けるため、速やかに改善策を講じることができるようになります。
複数改善ケースの準備
2つ目のポイントは、複数の改善ケースを用意しておくことです。入念に計画したものであっても、想定外のトラブルの発生や外部環境の変化などによって、計画通りに実施できなくなる可能性もあります。こうした不測の事態に備えて、ひとつに絞らず、複数の改善策を準備しておくことで、全体を一からやり直さずに済みます。
また、改善策が複数あれば、多様な問題にも柔軟に対応できるようになるため、結果的にプロジェクトが円滑に進行し、施策の練り直しなどによる無駄なコスト発生も防止できます。業務プロセス改善に携わった担当者の人事評価に関しても、複数ケースの視点があれば、より適正に評価できるでしょう。たとえひとつの施策が頓挫してしまっても、残りの施策が継続できていれば、人事評価を行うことができます。
まとめ
業務プロセス改善は、一見複雑に感じるかもしれませんが、本記事で紹介した手順を参考にすれば、スムーズに改善を進められます。成功させるコツは、「部門内だけの視点で考えない」「生産性の向上につながる対策を検討する」「PDCAサイクルを回して定期的に評価・改善する」ことです。根気強く取り組み、業務効率改善を実現しましょう。
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