RFPとは「Request for Proposal」の略で日本語では「提案依頼書」といいます。どういったシーンで活用する書類かというと、外部のソフトウェア制作会社にシステム構築を依頼する前に、「こうこう、こういった内容だとシステム構築のための工期や費用はどれくらいになりますか?また、御社ならどういったシステム構築が可能ですか?」という内容を記載し、それに対する回答で工期や費用の妥当性を評価したり、各社の比較検討材料とします。ERP(Enterprise Resource Planning)の構築を検討する際も、もちろんRFPは重要です。
もしRFPがない場合、ソフトウェア制作会社から口頭での説明や簡単な資料での提案と見積もりを受けていましたが、この方法では発注者である企業の要求する機能やシステムの範囲、環境条件や稼働時期等の諸条件において伝達漏れや理解の齟齬が発生してしまい、開発段階や本稼働に入ってから問題が起こることが多々あります。そうしたトラブルを防ぐために、発注者である企業が求める要件をあまねく伝え、提案させるためにRFPが活用されるようになりました。
本稿ではERP構築を検討している段階で各社に提出するRFPの作成ポイントを紹介します。
Point1. RFPは「良い提案」を受け取るためのもの
RFP作成にあたってまず念頭に置いてほしいことは、RFPは「良い提案」を受け取るためのもの、ということです。
たとえば「休日の過ごし方」に関するアンケートを受けた際に、「あなたは休日をどのように過ごしていますか?」という質問に対して提出される回答は、多くの場合「家族と過ごしています」といった漠然としたものでしょう。では「休日の朝食はどのようにして取りますか?」「午前中はどのように過ごしていますか?」「外出先としてよく行くところはどこですか?」といったように、細かい質問ならばその人が休日をどのように過ごしているか大体把握できるはずです。
これは極端な例かもしれませんがRFPでも同じことが言えます。ソフトウェア開発会社やシステムインテグレータにRFPを提出する以上、正確な提案を受けることが発注者となる企業のゴールです。そのためには先ほどのアンケートのように、自社がERPに求める要件を細かく記載してソフトウェア制作会社にERP構築の意図を解かりやすく開示する必要があるでしょう。
発注者となる企業から上手く要件を引き出すというのはソフトウェア制作会社の力量が問われる部分ですが、それはあくまで正式な依頼が成立し、ヒアリングを通じて要件定義をしていく段階での話です。
まだ依頼もしていない状態では、ソフトウェア制作会社はRFPでしか要件を知り得ないため、発注者となる企業が「正確な提案を受ける」という姿勢でRFPを作成しなければいけません。
Point2. 情報開示の範囲と機密保持契約
RFPを提出するということは少なからず企業の機密情報をソフトウェア制作会社に開示することになります。そのため信頼の置ける会社だけを選んでRFPを提出するということはもちろん、どこまで情報を開示するかという範囲を決定しておくことも大切です。RFPを提出した段階ではまだ正式依頼が成立しておらず、どのソフトウェア制作会社に依頼するかも決定していません。そこで必要以上に機密情報を開示してしまうと後々トラブルを招く可能性があります。どこまで情報開示するかという範囲は組織のセキュリティポリシーにのっとって決定します。
さらに大切なポイントが機密保持契約を交わすことです。情報開示の範囲を決めても機密情報を開示することには変わりありません。そこでソフトウェア制作会社と機密保持契約を事前に交わし、情報の受取・保管・開示できる範囲・複製の厳禁および禁止・使用後の返却および廃棄について取り決めておきましょう。
Point3. 現状環境と目指している方向性の具体的な開示
RFPを受け取るソフトウェア制作会社は、発注者となる企業の要件だけでなくERP構築を必要としている背景や環境を理解することで、今抱えている問題や課題についても理解でき、より良い提案をすることができます。なのでRFPを提出する側としては、現状把握と目指している方向性の具体的な開示が必要とされます。
現状環境を開示するためにはまず社内でアセスメント(現状評価)を行うことがポイントです。事業規模、事業所、従業員数、売上規模、取扱商品種類と点数、伝票枚数、得意先件数、仕入先件数等の基礎情報から、既存システム環境がどういった状態にあるかなどまで開示しましょう。
これに加えて、ERPを構築することで何を実現したいのか?今後ビジネスをどのように発展させたいのか?等の方向性についても開示します。
Point4. 曖昧な表現とカタカナ語は避ける
RFP作成で注意しなければいけないポイントが「曖昧な表現」と「カタカナ語」です。たとえば「○○処理を速やかに処理できる機能」といった形容詞的な表現は避けるべきでしょう。その要件がどれくらいの速やかさを求めているかソフトウェア制作会社には把握できません。さらに「ビジュアライズする」といったカタカナ語の使用もできる限り避けましょう。
会話の中でカタカナ語を適宜使用するのはコミュニケーションの便が向上しますが、RFPのように他社に提出するような書類に使用すると、意味を間違って捉えられることが多くあります。
機密情報を開示したり現状環境や目指している方向性を示しても、曖昧な表現やカタカナ語が多いRFPでは「良い提案」を受けることが難しくなります。
Point5. ERP構築に携わるメンバーを把握する
ERP構築を依頼するソフトウェア制作会社の中で、どのメンバーがプロジェクトに携わるのか?を事前に把握しておくとコミュニケーションがスムーズに進みます。また、そのメンバーが過去にどのようなプロジェクトで成果をあげてきたのかを把握することも重要です。そのためRFP提出段階でそのメンバーが携わるのかを把握できるように、この点もRFPに盛り込んでおくとよいでしょう。
パッケージ製品なら実際に触れて確かめる
最近はスクラッチ開発でERPを構築する企業は少なくなっています。数あるパッケージ製品はソフトウェア制作会社の努力もあり、様々な企業要件に柔軟に対応できるほど成長しているからです。そのためパッケージ製品でERPを構築する際に必ず行ってほしいことが、RFPだけで導入の是非を判断するのではなく、実際にトライアルなどを活用してパッケージ製品に触れて確かめることです。
パッケージ製品の場合、カスタマイズは可能でも企業要件を100%満たすことができない場合もあります。そのため一部の業務をERP側に合わせなければいけない可能性があります。そうしたERPと業務のギャップに関してはRFPへの返答だけでは判断できません。やはり実際に触ってみることが、自社要件に合致するパッケージ製品かどうかを見極める最良の方法になります。
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