顧客や従業員からの問い合わせに対応するヘルプデスクですが、件数が多くなると担当者の負担が増し、業務をさばききれなくなります。ヘルプデスクツールは、そうしたさまざまな業務を効率化できる便利なツールです。本記事では、ヘルプデスクツールの導入メリットやツール選定時の注意点を解説し、おすすめのツールを紹介します。
ヘルプデスクとは
ヘルプデスクとは、顧客や従業員から寄せられる問い合わせ全般に対応する仕事のことです。特に商品やサービスを顧客に提供する場合、企業の窓口となる部門であり、そこでの対応品質が顧客満足度に大きく影響します。そのため、担当者には自社の商品やサービスに対する深い知識と、高いコミュニケーション能力が求められます。
しかし、寄せられる社内外からの問い合わせが多過ぎると、処理しきれなくなる恐れがあります。そこで役に立つのが膨大な問い合わせを管理、アシストする「ヘルプデスクツール」です。かつては1日に数百件以上の問い合わせが寄せられる大企業を中心に利用されていました。しかし近年では人材不足や業務効率化を可能にするツールとして、企業の規模や業種を問わずに活用が広がっています。
ヘルプデスクツールの機能は、顧客管理(氏名や住所、生年月日、購買情報などの管理)をはじめ、問い合わせの自動分類や担当者の割り当て、スケジュール管理、問い合わせ履歴の記録・共有、返信文のテンプレート作成、顧客満足度評価の分析など、多岐におよびます。
これにより顧客は迅速で的確な回答が得られ、企業側は膨大な問い合わせを適切に処理でき、顧客満足度の向上が見込めます。
ヘルプデスクにツールを導入するメリット
顧客からの問い合わせ対応に便利なヘルプデスクツールには、さまざまなメリットが期待できます。詳しく見ていきましょう。
業務の効率化
ヘルプデスクツールの最大のメリットは、対応業務の効率化です。例えば、顧客からの要望や質問のメールに対し、担当者が1件ずつ返信していては手間と時間がかかり過ぎます。しかし、ヘルプデスクツールを利用すれば過去に対応した情報を迅速に参照でき、業務のスピードアップが実現します。
また、テンプレート機能を利用して、よく寄せられる質問の回答を用意しておくことで、返信の際に一から文章を作る必要がなくなるため、操作性のアップも図れます。
属人化の排除
顧客対応の際、特定の分野に関してはそれに詳しい担当者に回答してもらうケースがありますが、担当者が不在の場合には顧客を待たせることになり、顧客満足度を低下させる要因になりかねません。そこでヘルプデスクツールを使い、さまざまな質問の回答をデータベース化し、質問ごとの対応策を定めておくことで、担当者の不在時でもスムーズに問題が解決できます。
また、多くのデータを蓄積することで、自社商品やサービスの改善点が効率的に分析できるため、今後のビジネスのヒントを探る際の助けにもなります。
フィードバックの円滑化
ヘルプデスクに寄せられる問い合わせの中には、商品の開発やサービスの改善に役立つ意見も多く混じっています。しかし、担当者が顧客対応に追われてしまうと、そうした貴重な情報がすぐに社内共有できません。また、メールやチャットなど複数のチャネルを採用していてもデータが一元化されていないと、同じ内容の問い合わせが多く寄せられていた場合に気づきにくく、「重大な問題の見過ごし」や「ビジネスヒントの見落とし」といった企業の損失につながる恐れがあります。
その点、ヘルプデスクツールを活用すれば、さまざまなチャネルの情報を一元管理でき、内容ごとに自動でタグ付けしておけば、他部門へのフィードバックも円滑です。また、タグ付けをすることで、どの商品・サービスにどんな問い合わせが多いのかが一目でわかり、正確なデータ集計や分析が可能になります。
ヘルプデスクツールの選び方
数あるヘルプデスクツールの中から自社に合った製品を導入するには、どのような基準で選ぶとよいのでしょうか。以下では、ヘルプデスクツールの選定時に着目すべきポイントを解説します。
業務フローとの相性
ヘルプデスクツールは、機能性だけでなく業務フローやチーム構成との相性も考えて選ぶ必要があります。業務フローがシンプルで少人数のチームであれば、担当者と案件のステータスを一覧で管理できる機能があれば十分でしょう。ただし、業務フローが複雑で複数の部門をまたいだ判断が必要な場合、ステータスのわかりやすさだけでなく、フローの抜けや漏れをチェックできる仕組みも必要です。
また、ヘルプデスクツールがどのような形態で提供されているかも重要です。一般的には自社内に専用サーバーを設置する「オンプレミス型」と、クラウド環境で使用する「クラウド型」の2種類があります。
カスタマイズ性やセキュリティを重視するのであればオンプレミスの方が適していますし、費用面や運用面を抑えたい場合にはクラウド型の方が向いています。どちらにも一長一短があるため、事前に自社の業務環境や要件を確認し、それに合わせた方を選ぶとよいでしょう。
システム同士の連携性
ツール選びは、自社で採用している問い合わせチャネルに対応していることが前提です。顧客との問い合わせ手段としてはメールや電話が主流ですが、顧客の特性や事業内容によってはチャットやSNS(Facebook、LINE等)などでの対応が有効な場合もあるでしょう。
また、既存のツールとの相性だけでなく、将来的に新しいシステムやソフトウェア、アプリケーションが導入されることも見据え、連携性のあるツールを選ぶのが賢明です。業務効率化を目的とするのであれば、問い合わせ管理に加え、チャットボットやFAQコンテンツが利用できるツールを選ぶことが望ましいです。
操作性
操作性に優れているかどうかは、業務担当者にとってとても重要なポイントです。ヘルプデスクツールには便利な機能が備わっていますが、使いにくいとせっかく導入しても業務効率化の効果が半減してしまいます。操作方法のわかりにくさや画面の見にくさは速やかな対応を妨げ、顧客の待ち時間が増える原因にもなり得ます。
そのため導入するヘルプデスクツールとしては、「多様なチャネルからの問い合わせを一元的に管理でき、かつ問い合わせごとの対応履歴が確認しやすいもの」を選ぶことが大切です。また、顧客が使いやすいツールであることも欠かせません。問い合わせしやすいツールを選ぶことで、顧客の負担が軽減できるだけでなく、顧客満足度アップにもつながります。
なお、機能が充実するほど導入費用も高くなるため、自社の業務に必要な機能を明確にしたうえで、予算に応じたツールを選ぶことをおすすめします。
メンテナンスや拡張性
ほかのツール同様に、ヘルプデスクツールも運用開始後のメンテナンスは不可欠です。ビジネス環境の変化によって後から必要な機能が出てきたり、反対にほとんど使わない機能があったりした場合に、機能の追加や削除ができるかどうかを確認しておきましょう。
特に企業の成長とともに必要になる機能は増えるため、拡張性があってカスタマイズしやすいサービスを選ぶようにしましょう。
加えて、導入してから使い方についての疑問点が生じた際、提供者側でサポートを行ってくれるかどうかも確認しておく必要があります。
ヘルプデスクに有効なツール5選を比較
ヘルプデスクツールの概要や選び方を押さえたところで最後に、おすすめのヘルプデスクツール5選を紹介します。
Customer Service Management / Service Now社
Service Now社の「Customer Service Management」は、問い合わせの起票・対応・管理・ナレッジ運用まで包括的に対応可能です。直感的に操作できる見やすいレイアウトによって、業務効率の改善も期待できます。よくある顧客からの要求に対しては対応を自動化し、AI チャットボットによって回答することも可能です。オムニチャネルにも対応しており、電話やメールのほか、チャット、ソーシャルメディアなどが利用できます。
Zendesk / Zendesk社
Zendesk社の「Zendesk」は、世界的有名企業が数多く活用しているヘルプデスクツールです。使いやすさとカスタマイズ性の高さを強みとし、メールやチャット、電話といった複数のチャネルからの問い合わせを一つの画面上で管理できるほか、質問内容の集計や分析も1クリックで完了します。セルフサービス型のサポートとしてヘルプセンターやFAQの構築もでき、顧客対応だけでなく社内ヘルプデスクとしても利用可能です。
Freshdesk / Freshworks社
Freshworks社の「Freshdesk」は、海外企業を中心に15万社以上での導入実績を誇る顧客サポートソフトウェアです。「チケット機能」という仕組みを取り入れており、顧客から送られてくるメールやチャット、通話での問い合わせをすべて「チケット」に変換し、優先順位を付けて適切な担当者に振り当てます。単に業務を差配するだけなく、チーム内のメンバーに適切に分散されるよう業務量を自動で管理できるほか、チケットのステータス管理、通知の送信など、顧客へのフォローアップも自動化できる機能を有しています。
OKWAVE IBiSE / 株式会社オウケイウェイヴ
カスタマーサポートツール「OKWAVE IBiSE」は、シンプルな画面設計で、初めてヘルプデスクツールを利用する人でも使いやすいのが特徴です。問い合わせの一元管理ができる「チケット管理」機能と、ナレッジの共有やFAQの作成が行える「記事管理」機能を備えています。FAQの作成にはコーディングの知識が不要。問い合わせフォームの作成も、テンプレートに項目を追加するだけなので簡単です。ビジネスチャットツール「Slack」と連携すれば、Slack経由で問い合わせ対応を完了することもできます。
メールディーラー / 株式会社ラクス
「メールディーラー」は、メール返信の遅れや誤送信を防止するメール共有管理システムです。メール以外にもチャットやLINEでの問い合わせを一元管理できるのが特徴です。過去の対応記録やコメントによる伝言、テンプレートを用いた返信文作成、多言語対応といった機能が充実しています。国内の主要な受注・在庫管理システムとの連携が可能で、ネットショップやコールセンターなど6,000社以上で導入されています。
まとめ
ヘルプデスクの顧客満足度向上や、業務の効率化を図るうえでヘルプデスクツールは大きく貢献します。ツール選ぶ際は、業務フローとの相性や既存システムとの連携性、カスタマイズのしやすさ、ツールの使いやすさに着目し、自社の要件に合ったツールを選びましょう。