近年、DXの台頭とともに「デジタルシフト」という言葉に注目が集まるようになりました。デジタルシフトによって、生産性や経営効率の向上が期待できるからです。近年は、DXの準備段階としてデジタルシフトに取り組む企業も増えています。ここでは、デジタルシフトを達成するために解決すべき課題、その方法について解説します。
デジタルシフトとは?
まず、デジタルシフトの概要と背景について解説します。
デジタルシフトの概要
デジタルシフトとは「企業における価値創出の源泉がアナログ/物理から、デジタル/仮想へと移行すること」です。一般的な企業であれば、紙書類に代表されるアナログデータのデジタル化や押印決済など業務プロセスのデジタル化が挙げられるでしょう。また、アナログ/物理データのデジタル化はデジタイゼーション、業務プロセスのデジタル化はデジタライゼーションに相当すると考えられます。したがって、
デジタイゼーションやデジタライゼーションはデジタルシフトの軸になる可能性が高いです。
なぜデジタルシフトが求められるのか
デジタルシフトが進む背景には、次のような理由があります。
消費行動の変化
コロナ禍以前から、消費者の行動は徐々にオンライン上に移行していました。この流れが2020年以降一気に加速しています。オンラインに移行した消費行動を正確に捉えるには、デジタルデータの集積・分析が不可欠であり、デジタルシフトを後押しする要因のひとつになっています。
ビッグデータ活用の一般化
上記に関連して、ビッグデータ活用もますます盛り上がりを見せています。ビッグデータ活用ではデジタルデータから新たな知見を見出し、業務プロセス改革や製品開発、サービス改善につなげていく方法が一般的です。したがって、データ・業務プロセスともにデジタル化されていることが望ましいでしょう。
ビジネストレンド(高効率経営、生産性向上)への対応
近年は、業界・業態を問わず高効率経営や生産性向上につながる施策がトレンドになっています。デジタルシフトによって、経営に関するさまざまな指標が定量化、可視化されることで、こうしたビジネストレンドへの対応が可能になるでしょう。
DXとの違いについて
DXはデジタルシフトと似て非なるものです。経産省によれば、DXは以下のように定義されています。
- 組織と業務全体のデジタル化、顧客起点の価値創出のための変革
- 単なるレガシーシステムの刷新ではなく、事業環境の変化へ迅速に適応する能力を身につけること
- 固定観念を捨て、レガシー企業文化から脱却すること
つまりDXは、デジタル化を前提とした組織改革や意識変化、適応能力の進化などを目指す考え方と言えるわけです。一方、デジタルシフトはDXの前段階としてのデジタル化であり、両者は同じ線上にあるものの、異なる考え方だと言えます。
デジタルシフトのメリット
次に、デジタルシフトのメリットを整理しておきましょう。デジタルシフトが企業にもたらすメリットとしては、以下が挙げられます。
デジタルシフトのメリット
メリット1.非効率な定型業務、雑務からの解放
デジタルシフトによって、業務で発生するさまざまなデジタルデータの蓄積・分析が可能になります。分析の結果、生産性を押し下げている要因(ボトルネック)が明らかになれば、該当する業務をあぶり出し、自動化やアウトソーシングで解決することができます。
メリット2.成長のための土壌が作られる
知的生産の成果(=データ)がオンライン上に集約されることで、知の集積効果が生まれ、付加価値を生み出す土壌が形成されます。また、付加価値が生み出しやすくなると、既存事業の維持にかかるリソースが減り、新規事業へ投入できるリソースが増えます。つまり、
イノベーションを起こし、成長する企業に共通する「両利きの経営」を推進する土壌が作られるのです。
デジタルシフトの課題
一方、デジタルシフトを進める上では、主に以下2つの課題が発生することが多いようです。
プロジェクトの肥大化
デジタルシフトでやるべきことは多岐にわたります。デジタイゼーションでは、対象データの選定が必要であり、デジタライゼーションでは業務プロセスの分析と改善、デジタルツールへの落とし込みが必須です。また、各種ツール選定と導入も進めなくてはいけません。
これらは部門を横断して全社的に進める必要があり、どうしてもプロジェクトが肥大化する傾向にあります。
サイロ化のリスクがある
反対に、部門・業務ごとにデジタルシフトを進めた場合は、サイロ化のリスクがあります。たとえば、営業部門だけが独自にデジタルシフトを進めた結果、営業部門内ではSFAが稼働し、データが可視化されたとしましょう。一方、他部門ではデジタルシフトが進まず、顧客IDや製品IDも正確に管理されていない状況があるとします。この状態では、データ統合や連携が進まずに、かえって事業のパフォーマンスが落ちてしまうリスクがあるのです。
クラウドツールで実現するデジタルシフト
デジタルシフトは、全体最適を考慮しながら、バランスよく進めることが成功への近道です。具体的には、「業務基盤としてクラウドプラットフォームを採用し、プラットフォーム内で提供されるツールをバランスよく導入していく」という方法がおすすめです。
クラウドプラットフォームの強み
クラウドプラットフォームは、主に開発基盤やデータ統合基盤としてだけではなく、デジタルシフトにも強みを持っています。
イニシャルコストが低い
デジタルシフトでは、それまで使用していた手法やツールを順次デジタルに置き換えていく作業が必要です。このとき、複数のツールを購入・契約するためのコストが発生します。また、専用サーバーやネットワークへの投資も必要になるでしょう。クラウドプラットフォームならば、複数のツールをクラウドサービスとして利用できるため、イニシャルコストをおさえることが可能です。
サイロ化が起こりにくい
同一のプラットフォームから提供されるツールを導入することで、データ統合や連携が容易になり、サイロ化を防ぐことができます。部門や業務ごとに順次デジタルシフトを進めていく場合でも、障壁になりにくいのです。
Power Platformでデジタルシフトを促進
Microsoftでも、デジタルシフトを強力にバックアップするツール群「Power Platform」を提供しています。Power Platformには、一般的な事務作業のみならず、データ分析やWebサイト構築、自動化、業務アプリ作成などさまざまな機能が含まれています。
- Power BI(データ分析ツール)
- Power Apps(ビジネスアプリ作成ツール)
- Power Pages(ローコード開発が可能なWebサイト構築ツール)
- Power Automate(自動化ツール)
- Power Virtual Agents(社内外のコミュニケーション用チャットボット作成ツール)
Power Platform内で動作するこれらのツールは、連携を前提に作られています。もちろん、Office 365やOutlookといった他のMicrosoft製品との連携も可能です。
まとめ
今回は、デジタルシフトの概要やメリット、課題を解説しました。デジタルシフトは将来的なDXの達成の下準備でもあります。しかし、デジタイゼーションとデジタライゼーションを進めながら、サイロ化を防ぐという難易度の高いプロジェクトになりがちです。デジタルシフトをスムーズかつ低コストに進めるのであれば、Power Platformのようなクラウド型のツール群を活用してみてはいかがでしょうか。