企業のデジタル化及びデジタルトランスフォーメーション促進において存在感を高めているのがERP(統合型基幹システム)です。デジタル中心のビジネスへと切り替えるには、今まで分断された各種システムの統合を図り、相互に連携された環境構築が欠かせません。しかし既存のシステムの枠組みを破って統合することは難しく、そこで注目されているのがERPです。
ERPは「既製のスーツ購入」に例えることができます。自身にピッタリの一着を仕立ててもらうオーダーメイドとは違い、店頭にて実物に触れたち試着しながら最も希望に沿ったものを選びます。気に入ったスーツがあればパンツの裾やジャケットの丈等を体系に合わせて微調整してもらい、最終的にはジャストフィットの一着に仕上がります。
ERPもこれと同様に「自社業務のあるべき姿」と各製品の特徴を照らし合わせながら、自社にとってジャストフィットなERPを選定していきます。本稿でご紹介するのは、そんなERP導入において失敗しないための5つの鉄則です。製品選定も含めてERP導入に欠かせないこととは何なのか?本稿を通じて、より多くの企業が適切なERP導入に取り組んでいただけたら幸いです。
ERP導入で失敗しないための5つの鉄則
それでは早速、ERP導入で失敗しないために決して外してはいけない5つの鉄則をご紹介します。
鉄則① ERP導入は経営改革の一環として取り組む
ERP導入に際し、「現行システムからのリプレース」と考えてるケースが多々あります。ERPは単なるシステムの置き換えではなく、デジタルを活用した新しい改革・チャレンジです。このため、ERPを導入するにあたってまず大切なことはERPによるデジタル改革を経営方針としてトップダウンで推進し、業務改革へのチャレンジを進めることです。システムの置き換えのような導入ならばERPである必要はありません。
ERPの意義は全社的なシステム統合を図ることで、一種のBPR(業務プロセス再設計)を実現することです。また、業務改革へ踏み込むための体制作りについても同様に進めていくことが大きなポイントになります。
鉄則② 各業務のキーマンを積極的に巻き込む
IT部門、IT担当者から見た現場業務と、実際に業務をこなしている現場従業員が業務を見つめる際の視点は違います。現場従業員は当然のことながら現場視点で物事を考えることができ、ERPでは彼らの眼がどうしても必要です。
ERPの標準機能を現行業務にそのまま適用できるのか?新しい業務方法が実際のビジネスにマッチするものなのか?そうした視点からERP導入を進めていくことが大切です。また、IT部門だけで独自にERP導入を進めても現場から反発を受けることが多くいため、改革意識の強い人材はキーマンとして積極的に巻き込んでいきましょう。
鉄則③ パートナーへの丸投げ発注は絶対にしない
ERP導入を失敗させないためには、パートナーへERP導入や構築を丸投げしないことです。パートナー主導のプロジェクトでは新しい業務プロセスの是非判断が難しいことは言うまでもありません。新しい業務プロセスやルールを検討して意思決定を迅速に実施するための体制作りが欠かせません。そのような背景からパートナーへの発注丸投げは絶対にやってはいけません。
鉄則④業務プロセスとERP機能を上⼿く融合させる技術
パートナーを選ぶ際は、業界・業務に精通した企業を選定するのがベターです。また、同業種の導入実績や経験、状況に応じた支援が得られるかどうか、あるいは机上の空論で終わらない現場主義のベンダーを選定することが重要です。
鉄則⑤ 新規プログラムの追加は、出来得る限り回避する
既存のビジネスを維持しながらデジタル改革を推進するにあたり、様々なシステム要件が盛り込まれるはずです。その際に大切なことは、その効果や業務インパクトを吟味しながら優先順位をつけて、ERPに合わせることでのインパクトや影響も評価し、新しいプログラム追加を回避することです。ERP導入は新規プログラムが多いほど複雑になり、運用に大きな悪影響を与えることになります。
ERP導入に失敗する企業に共通していること
上記5つの鉄則を全て守ることによって、ERP導入を成功に近ずけることが可能です。また、合わせて知っておいていただきたいのが、ERP導入に失敗する企業に共通している事項です。失敗の要因を知り、自社もそれに陥らないようにしましょう。
共通点①ERP導入に対する経営層の興味・関心が薄く
ERP適用の対象は基幹業務全般です。そのため複数部門にまたがった課題も生じやすくなり、課題解決に向けえた経営方針をトップダウンによって決定する必要があります。しかし、経営層自身がERP導入に対して興味・関心が薄く、ERP導入の最も根幹となる方針がガタガタになってしまうことが多いでしょう。
共通点②現行システムのリプレースと考えている
ERP導入を単なる現行システムのリプレースと考えてしまうと、現場から反発を受けることが多くなります。導入後も現場からの協力が得られない可能性が高いので、ERP導入としては危険信号です。そのため、経営層やIT担当者自身がERPの本質を理解し、それを現場へ伝えるための啓蒙に取り組むことがとても重要です。
共通点③個別業務の効率化に執着してしまう
部門ごとの個別業務の効率化や現場踏襲によって対応が難しくなります。前述のように、ERPは既製スーツの購入のようなものなので個別要件に対応しようと考えるほど新規プログラムが増えてしまい、導入費用も増します。また、多額の費用をかけても現行システムに比べて費用対効果が薄いという結果に陥ってしまう可能性も否定できません。
共通点④業界・業務を知らないパートナーの選定
ERP導入を失敗させないためには、自社が属する業界や特有の業務について深い理解のあるパートナー選定が欠かせません。業界・業務に対する知識に乏しいパートナーを選定してしまうと、ERP標準機能を最大限活用する提案ができずに、直ぐさま新規プログラムの提案に走り、結果として導入の費用と期間が増大します。
共通点⑤プロジェクトメンバーに問題がある
プロジェクトメンバー(業務ごとのキーマン)が業務のあるべき姿を決定できずに、納期や費用を担保できなくなってしまいます。さらに、プロジェクトマネージャの資質や力量が不足している場合では、課題解決が思うように進まずにプロジェクト推進に支障をきたす結果になります。
ポイントを徹底的に押さえたERP導入を
ERP導入に成功すれば新しいデジタル改革によって、企業は非常に多くのメリットを手にすることが可能です。しかしながら、失敗の原因はそこら中に転がっています。それらの要因を回避しながらERP導入を失敗させないためには、本記事でご紹介した5つの鉄則を徹底することが重要です。また、初めてのERP導入では色々と不安も多いかと思いますので、その際は遠慮なく軽々豊富なパートナーへのご相談をお勧めします。