2018年9月7日、経済産業省が発表したDXレポート※1において「2025年の崖」が紹介されました。それに伴い、デジタルトランスフォーメーション(DX)への注目度が増したことはまだ記憶に新しいでしょう。
本稿ではDXレポートにて具体的にどのような問題が提起されているのか?なぜデジタルトランスフォーメーションが欠かせないのか?そして、実現のためには何が必要なのかを分かりやすく解説していきます。
「2025年の崖」とは結局何なのか?
「2025年の崖」とは、これまで企業が積み上げてきた「ITの負の遺産(レガシーシステム)」等を中心的要因として、これからの企業ITに生じる様々な問題を提起したものの総称です。それらの問題を放置することで2025年から2030年にかけて日本において年間最大12兆円の経済損失が発生すると予測されていることから「2025年の崖」と呼ばれています。
また、その崖から転落するリスクがあるのは日本経済全体の話だけでなく、企業個々においても大きな崖が待ち受けていることになります。経済産業省のDXレポートを参考に、諸問題について整理します。
企業にとって最大の問題となるのが経営面の事柄であり、DXレポートでは次の3つの問題を大きく取り上げています。
- データを活用しきれずにデジタルトランスフォーメーションが実現できず、市場の変化に対応してビジネスモデルを柔軟・迅速に変更することができない(=デジタル競争の敗者)
- 技術的負債※によりシステムの維持管理費が高額化し、IT予算に占める割合が9割以上に到達する
- 短期的な観点でシステムを開発し、結果として、長期的に保守費や運用費が高騰している状態
- 保守運用の担い手不足により、サイバーセキュリティや事故・災害によるシステムトラブルやデータ滅失等のリスクが高まる
以上の問題の中で懸念されているのが「デジタル競争の敗者」へと転落してしまうことです。デジタル技術の発展により、今ではデジタルをうまく活用した企業が続々と誕生しています。そこには製造業や小売業などの隔たりはなく、いずれもデジタル技術をふんだんに活用した事業を営んでいるだけでなく製品・サービスにもその要素を取り入れています。
さらに、新型コロナウイルス感染症拡大によるニューノーマル時代が生まれようとしている現在、デジタル技術への期待や重要性が日に日に大きくなっており、デジタルありきのビジネスが当たり前の時代が到来しようとしています。その時代に乗り遅れた企業はグローバル市場だけでなく国内市場でも淘汰されていくことこそが、DXレポートによって提起されている脅威なのです。
なぜ、デジタルトランスフォーメーションなのか?
「2025年の崖」を生んでいる大きな要因となっているのがレガシーシステムです。古く、柔軟性に乏しい個別最適化システム(部門ごとに開発されたシステム)では、革新的な技術を新しく取り入れることも、日々変化するビジネスに合わせた変化も難しいものがあります。では、なぜシステムの刷新だけでなくデジタルトランスフォーメーションという取り組みが欠かせないのでしょうか?
経済産業省ではDXレポートが発表された同年の12月に、デジタルトランスフォーメーション推進に向けた初のガイドライン、DX推進ガイドライン※2を発表しています。そこではデジタルトランスフォーメーションについて次のように定義しています。
“企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。”
デジタルトランスフォーメーションは単にシステムの刷新を図るのではなく、それをきっかけとしてデジタルネイティブ企業への変貌を遂げることによって、近代ビジネスに特化した組織構造・業務プロセス・ビジネスモデルを構築することこそが目的なのです。
つまりデジタルトランスフォーメーションでなければ、近々起こり得るデジタルディスラプション(デジタル技術を伴った市場の破壊と再構築)に耐え、先進ビジネスを武器の世界企業と戦っていくことが難しくなるのです。
製造業におけるDXのポイント=ERPによる変革
「2025年の崖」への対策として注目されているのがクラウドサービスの活用であり、特にクラウドを活用しながらデジタル技術を取り入れることへの機運が高まっています。そして製造業においてデジタルトランスフォーメーションを実現するポイントとして検討必須とも言えるのが「クラウドで提供されるERPによる変革」です。
ERP(統合型基幹システム)とは、これまで個別最適化が進められてきた基幹システムを統合したパッケージ製品であり、それをクラウドサービスとして提供するのがクラウド型ERPです。製造業がこれを導入することで次のようなメリットを享受できます。
- メリット①クラウドERPは利用状況や利用者に応じた課金なので、初期投資にかかるコストをはるかに少なくできる
- メリット②サービス提供事業者がメンテナンスやセキュリティ対策を実施するため、保守作業など運用負担が無くなる
- メリット③EOS(サービス取扱終了)の予定がないため長期継続利用が可能である
- メリット④初期投資を抑えながAIやIoTといった新技術の早期導入や活用が可能になる
- メリット⑤多くのケースでオンプレミスERPと同等の機能とカスタマイズ性があるため、自社独自の要件にも対応できる
こうしたメリットを持つクラウド型ERPを導入することで、高い柔軟性をもたらし、業務改革やデジタル改革を容易に進めていくことが可能です。
また、それに伴いデジタルトランスフォーメーションの要である組織構造・業務プロセス・ビジネスモデルの再構築が可能になり、デジタル時代でも戦っていく、勝ち抜いていくための企業体質を作り上げることが可能です。
デジタルトランスフォーメーションを必要としている時代は2025年を待たず、すごそこまで来ています。この機会にクラウドERPを活用しデジタル化の推進を是非ご検討ください。