ビジネスにおけるコンタクトセンターの役割は、今では企業収益に直結するものと考えられています。コンタクトセンター は企業とお客様をつなぐ最前線であり、「お客様に喜んでいただく」「お客様の課題を最優先に解決する」、そうした顧客思考のビジネスを生み出す場所もコンタクトセンターです。
従来のイメージを払拭して戦略的な顧客関係構築を実現するために、多くの企業がコンタクトセンター向けCRMの導入に踏み切っています。CRMといえば営業組織が活用するイメージがありますが、現在ではコンタクトセンターもCRMを必要としている組織の1つです。
本稿では、株式会社ヨシダがコンタクトセンター向けCRMを導入した事例を含め、コンタクトセンター向けCRMとは何なのか?を解説します。
コンタクトセンターにCRMはなぜ必要なのか?
CRMとは「Customer Relationship Management(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント)」の略であり、直訳すれば顧客関係管理です。単純に顧客情報をデータベースで管理するのが目的なだけでなく、あくまで顧客との長期的かつ良好な関係を構築・維持するのがCRMの役割です。
近年、コンタクトセンターの役割は多様化しており、顧客からの問い合わせを受けるだけでなく新しいソリューションの提供や営業担当者からの問い合わせ等にも対応し、企業内でも総合的なスキルが求められる現場へと変貌しつつあります。その中で、対応履歴を記録するだけのシステムや、顧客情報を管理するだけのシステムでは情報共有に限界があったり、対応スピードが鈍化し、満足のいくサポートを全面的に提供できない問題があります。
一般的にコンタクトセンター向けCRMは顧客との関係性を管理することはもちろん、営業担当者からの問い合わせ等にも対応できる機能を備えており、コンタクトセンターの複雑な業務を総合的に支えながらデータ入力インターフェースを統一することで業務効率化も図れます。
コンタクトセンター向けCRM事例
株式会社ヨシダ(以下ヨシダ)は歯科医療機器の販売・開発大手であり、同社のコンタクトセンターでは歯科医療の現場の「困った」に答える部門として、歯科医師や自社営業担当者から日々多くの問い合わせを受けていました。コンタクトセンターには正社員が対応し、営業などの現場をよく知る人事を中心に約20名が在籍しています。
従来は1日に300~500件ほどの電話対応をこなしていましたが、近年になり歯科医師から営業担当者にかかってきていた問い合わせ電話をコンタクトセンターに集約したことで、営業担当者が本来業務に集中できる環境を整えるプロセスを構築しています。それに伴いコンタクトセンターの呼量は加速度的に増加し、体制の強化が急務となっていました。
それまでは内製で開発したCRMに対応履歴を入力していたため、顧客データベースや修理システムへの入力といった処理の重複が生じるという課題が表面化し、さらには開発者が在籍していなかったため機能拡張が望めないことで大きな危機感を抱いていました。それらの課題の解決策として、CRM導入プロジェクトが立ち上がりました。
慎重な検討を重ねた末にヨシダが選択したのは、株式会社OKIソフトウェア(以下OKIソフトウェア)の「enjoy.CRMⅢ」であり、同システムはMicrosoftがクラウドベースで提供しているCRM「Dynamics 365」をベースに、コンタクトセンターに特化した機能(コールパレット)を追加したものです。ちなみに稼働環境はオンプレミス・クラウドともに選択できます。
ヨシダの顧客関係構築を管理するには、歯科診療所(企業)、導入設備・機器、歯科医と複数の情報に紐付け、いずれかの情報からも対応履歴に辿り着けることが必須でした。さらに、問い合わせが歯科診療所の代表電話からかかってくるとは限らないため、歯科医個人の携帯電話や事務電話など、複数の電話番号を1つの顧客情報画面で登録できることも外せない用件でした。
これに対して「enjoy.CRMⅢ」は顧客管理画面を業務に応じて柔軟に変更できる高いカスタマイズ性があり、同様の運用事例を持っていたことが高い評価につながったと言います。
導入の結果、蓄積した応対履歴を活用してWeb-FAQおよびオペレータFAQを整備することにより、サービス品質向上が図れるようになっています。さらに、一部業務をアウトソーシングして接続品質向上につなげていくなどの戦略も視野に入れられるようになり、今ではコールセンターとして果たす役割の重要さがさらに増しています。
コンタクトセンター向けCRMで全社的な応対品質向上に?
ヨシダの事例では急増した呼量への対応を容易にし、かつオペレーターの業務負担を軽減することで新しいリソースを生んでいます。この他にもコンタクトセンター向けCRMによって現場課題を解決した事例はたくさんありますが、そのインパクトはこれに限りません。コンタクトセンター向けCRMで、全社的な応対品質向上を目指すこともできます。
例えば「enjoy.CRMⅢ」は「Dynamics 365」をベースにしてることから、カスタマイズ次第によってコンタクトセンターだけでなく、営業や店舗、保守運用に至るまで総合的に利用可能なCRMの構築が可能です。コンタクトセンターはコールパレットを通じてCRMにアクセスし、営業や店舗は直接的にアクセス。そして保守運用はモバイル端末を通じてフィールドサービス提供先で顧客情報等を確認しながら作業にあたることができます。
<「enjoy.CRMⅢ」のイメージ>
全社的な応対品質を向上することは決して簡単ではありません。営業や店舗、コンタクトセンター、保守運用が常に密なコミュニケーションを取りながら顧客情報の連携を図る必要があることから、既存のシステムだけで対応するのはほとんど不可能です。しかし、各組織の中心に「enjoy.CRMⅢ」があることで、顧客情報の入力インターフェースが統一され、営業や店舗が、コンタクトセンターが、運用保守が入力する顧客情報などのデータは全てCRMに統合されていきます。
また、「enjoy.CRMⅢ」は管理者向けのカスタマイズによってダッシュボードでリアルタイムにビジネスを確認できるビューを提供したり、マルチテナント構成によってMicrosoft 365への機能拡張、Azure Directoryとの連携によるシングルサインオンなど企業が持つ多様なニーズに応えることができます。
コンタクトセンター向けCRMを検討しよう
いかがでしょうか?コンタクトセンター向けCRMは、現在多くのコンタクトセンターが抱える課題をダイレクトに解決するだけでなく、他組織とのCRM統合を図ることで全社的に応対品質を向上するための基盤になります。顧客視点を取り入れたビジネスが重要と考えられている今、企業全体が一体となって同じビジョンを手に入れることは、顧客満足度を大きく向上するきっかけとなり、ビジネスとさらに成長させる基盤になります。この機会にぜひ、コンタクトセンター向けCRMをご検討ください。