クラウドCRM (Customer Relationship Management:顧客関係管理)とは、顧客との関係性管理に重点を置いた CRM システムをクラウドサービスとして提供するIT製品です。
CRMシステムといえば、顧客情報に始まり案件情報や過去の対応履歴など、顧客に関するあらゆる情報を管理することで、対応速度をアップさせた満足度を向上したり、顧客ニーズを分析して商品開発やマーケティング等に活かしたりするためのものです。
これをクラウドサービスで提供するのですから、数々の導入メリットが思い浮かびますね。本稿では、クラウドCRMを導入することで実際に得られるメリットについて解説していきます。
クラウドCRMのメリット
それではさっそく、オンプレミスで導入するCRMシステムと比較しつつ、クラウドCRMのメリットについて解説していきます。
Merit1.初期投資を抑えられる
オンプレミスCRMと比較すると、クラウドCRMは初期投資をかなり抑えられる傾向にあります。その理由が、インフラ調達の要否です。オンプレミスCRMの場合、パッケージソフトウェアをインストールするためのサーバー・OS・ミドルウェアなどのインフラ調達及びプラットフォーム構築が必要になります。一方、クラウドCRMはインターネットブラウザを介してCRMシステムを利用するので、専用のインフラ等を調達する必要はありません。従って、そこにかかる初期投資が大幅に抑えられます。
Merit2.本格稼働までスピーディ
多くのクラウドCRMはすぐにでも利用可能な状態に標準パッケージ化・メンテナンスされているため、業務要件をクラウドCRMに合わせる形で導入すると、3ヵ月以内でカットオーバー(本格稼働)にこぎつけられるケースも多々あります。また、カスタマイズを加える場合でもあっても、オンプレミスCRMの導入よりは圧倒的にスピーディなどが利点です。
Merit3.マルチデバイス対応
クラウドCRMは標準的にマルチデバイス対応が実装されているため、オフィス内のデスクからCRMシステムを利用することはもちろん、外出先からスマートフォンやタブレットを利用したCRMシステムを利用することも可能です。顧客情報を安全にどこへでも持ち出せることにもなるので、急な営業や商談にも即対応できます。
Merit4.BCPの一環になる
BCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)に対するニーズは、東日本大震災以降、劇的に高まっています。近年では、自然災害に加えてサイバー攻撃やテロの脅威も増大しているため、BCPを作成し、如何なる状況下においても事業を継続できる準備が欠かせません。クラウドCRMで管理しているデータは、複数のデータセンターには分散管理されているのが通常です。そのため、BCPの一環として利用できることはもちろん、セキュリティ強化の効果も期待できます。
Merit5.自動更新による運用負担軽減
クラウドCRMの保守運用及び管理は、CRMソフトウェアベンダーが一任しています。従って、ユーザー企業側でシステムアップデートなどに対応する必要はなく、システムは常に自動更新されるため運用負担を大幅に軽減し、余ったリソースをIT戦略に注ぎ込むことができます。
Merit6.リソースの拡張性が高い
ビジネスの成長に合わせてCRMシステムを拡張していく必要があります。しかし、サーバーのスケールアウトやスケールアップには、調達コストやメンテナンスコストがかかるため、おいそれと対応できるわけではありません。クラウドCRMの場合、プラン変更やストレージ容量追加によってリソースを簡単に拡張できるため、対応コストを大幅に抑えられます。また、CRMシステムを縮小する必要性がある際も、簡単に対応できる柔軟性があります。
Merit7.ランニングコストの削減
ユーザー単位での課金、運用負担の軽減といった特長から、オンプレミスCRMよりもランニングコストを削減できる可能性も大いにあります。オンプレミスCRMのランニングコストはライセンス費用・保守費用・人件費・電気代に集約されるので、これらの多くをカットできる クラウドERP には、コスト削減効果も期待できます。
クラウドCRMのデメリットとは?
上記のように、クラウドCRMを導入するメリットは多岐にわたります。このクラウドCRMにデメリットがあるとは想像し難いですが、何事にもメリットとデメリットがあるように、クラウドCRMも例外ではありません。
Demerit1. 従量課金によるコスト増
ユーザー単位で課金されるクラウドCRMの場合、利用アカウント数が多いとオンプレミスCRMよりもランニングコストが増加する可能性があります。また、利用期間が長いほどトータルコストが大きくなっていくため、オンプレミスCRMとの総合的なコスト比較が必要になります。
Demerit2. カスタマイズ性が低い
クラウドCRMの多くは完全にパッケージ化されたシステムサービスなので、高度なカスタマイズ要件に対応できない可能性があります。時には 業務プロセス をクラウドCRMに合わせる必要があり、変化に伴う負担も生じます。ただし、 Dynamics 365 などでは容易なカスタマイズが可能です。
クラウドCRMには少ないながらもデメリットはあります。ただし、Demerit1に関しては運用負担や、クラウドCRMによって生まれるリソースの余剰なども考慮しつつトータルコストを比較する。Demerit2に関しては独自の開発プラットフォームを持ち、カスタマイズ性の高いクラウドCRMを検討するなどの対策を考えることで、解決できる部分はたくさんあります。
クラウドCRMを選ぶ際のポイント
実際にクラウドCRMの導入を決定したとしても、すべてのクラウドCRMが等しく効果を発揮するわけではありません。大切なのは、自社要件に合わせて最適なクラウドCRMを選ぶことであり、そのポイントをここでご紹介します。
Point1.短期的利益と長期的利益
クラウドCRMでは、 SFA やマーケティングツールが統合されていることで得られる短期的利益と、CRMシステム本来の機能を活用して顧客との関係性構築を中心とした長期的利益の双方を兼ね備えている製品があります。CRMシステムという製品自体、費用対効果を発揮するまでに時間がかかるものなので、短期的利益が期待できる製品を選ぶことが、経営層の理解を得るためにも大切です。
Point2.使い勝手などの利便性
機能面が多少不足していても、とにかく使いやすいなど利便性が高いクラウドCRMの導入はおおむね成功します。CRMシステムはユーザーの情報入力ありきの製品ですので、自社環境にとって利便性が高いものを選ぶ必要があります。
Point3.高い汎用性
特定の分野だけに特化したクラウドCRMでは、将来的なビジネスニーズの変化に対応できない可能性があり、システム環境が複雑になる要因になります。そのため、高い汎用性を持つ製品を選び、さまざまなリスクに対応できる体制が欠かせません。
Point4.グローバル規模での利用価値
グローバルビジネスが盛んになっている現代において、クラウドCRMを検討する際もグローバル規模での利用価値に着目すべきでしょう。多言語・多通貨対応などは当たり前で、グループ全体を通して業務プロセスを標準化できる製品などがベストな選択だと言えます。
クラウドCRMを導入する際は、メリットだけでなくデメリットにも着目し、課題として捉えて対策を立て、以上のポイントを持って適切な導入を目指していただきたいと思います。