食品流通とは流通業の一分野で、私たちの生活の中で欠かせない、恒久的な需要のある分野です。近年ではさまざまな課題が挙げられると同時に、これからより効率化できる可能性のある分野でもあります。そこで、食品流通業界の現状や課題、食品流通の効率化を実現するために考えるべきポイントと課題の解決策などをご紹介します。
食品流通とは
食品流通とは、食品が生産者の手元を離れ、卸売業者や小売業者などの流通業者を経由し、消費者のもとへと至る過程の総体を指します。流通とは、生産と消費をつなぐ架け橋のような存在です。一般的に、商品を生産者やメーカーから仕入れて小売業に卸す卸売業と、百貨店やスーパーマーケットといった小売業を流通業者と呼びます。経済産業省の統計調査によると、日本の卸売業と小売業の商業販売額は455兆円を超える市場規模となっています。なかでも、食品流通は日本の食卓を支える土台であり、人々の生活に直結する必要不可欠な分野です。
食品流通の現状と課題
食品流通は人々の生活の礎ともいうべき、恒久的な需要のある分野です。しかし、食品流通は、大きな課題を抱えています。たとえば、中央卸売市場、および地方卸売市場の市場数と業者数はいずれも減少しているのが現状です。また、近年では通信販売や宅配、コンビニなど、流通・販売チャネルの多様化が進む一方、物流の大半を占めるトラック運送業界は深刻な人手不足に陥っています。こうした問題が顕在化するなか、食品流通の構造的課題が浮き彫りになってきました。それは、古い業務体制による効率面の課題と、食品トレーサビリティという安全面での課題です。
効率面の課題
IT技術の進歩に伴い、ビジネスを取り巻く環境は大きな変革を遂げました。いまやIT業界だけでなく、医療・介護業界や各製造業界においてもITやIoTの活用による業務効率化が進んでいます。ところが、日本の食品流通分野ではこうしたITシステムの活用が遅れているのが実情です。受注・発注の多くは電話やFAXなどがメインであり、オペレーションに多大な時間とコストが費やされています。
もちろん、食品流通分野においても、ITシステムの普及が進みつつあるのは事実です。しかし、ITシステムの活用によって食品流通効率を向上させる余地はまだまだあります。たとえば、ITシステムを活用して情報を一元管理することで、受注・発注業務が効率化され、ペーパーレス化が実現します。それにより、食品業界と流通業界に共通する大きな課題である人材不足を補うと同時に、余分なコストの削減につながるでしょう。食品流通が発展していくためには、古い業務体制を脱却し、ITやIoTなどの情報通信技術による業務効率化が課題となっています。
安全面の課題
食品流通において最も重要な課題の一つが品質管理です。消費者の口に運ぶ食品を扱うため、安心・安全の担保が何よりも重要といえます。ところが、食品流通は生産者から消費者へと至るまでに数多くの事業者が関わることが多いため、問題が発生した場合の原因特定が困難です。物流過程において破損や損傷などの問題は必ず起こります。大切なのは、生産・加工・流通・販売・消費のどの段階でなぜ問題が起きたのかを明確にして改善策を立案して実行することです。しかし、事業者間の階層が多いことで問題の要因が掴みづらく、対策を講じることができません。
したがって、食品流通が安全面の課題をクリアするためには、食品が生産者から消費者へと至るルートを可視化する必要があるでしょう。この食品の移動を明確に把握することを「食品トレーサビリティ」と言います。食品トレーサビリティを確立し、食品の安心と安全を徹底的に守ることが、食品流通に求められています。
食品流通効率化のポイント
食品流通を効率化するポイントは大きく2つあります。それが「製造業務モデルの標準化」と「データ活用」です。そして、食品流通効率化における2つのポイントを実現するキーワードが「ITシステムによる情報のデジタル管理」です。ここからは、食品流通効率化における2つのポイントと、ITシステムの必要について解説します。
製造業務モデルの標準化
労働生産性を最大化するために重要なポイントは業務の標準化です。業務の標準化とは、従業員のスキルや経験に差がある場合でも、問題なく業務が成立することを指します。反対に、業務の成否が特定の従業員に依存することを業務の属人化といいます。現代日本は少子高齢化と人口減少によって深刻な人材不足に陥っています。また、終身雇用制度の崩壊と雇用形態の多様化も、人材の入れ替わりが激しくなる要因のひとつです。こうした背景もあり、ベテランの知識やスキルを若手に継承することが困難になりつつあります。
組織全体の労働生産性を向上するためには、業務の標準化が必須です。そこで、おすすめしたいのがITシステムの導入です。ITシステムによって情報をデジタル管理することで業務フローが可視化されます。それにより、知識や技術を言語化・マニュアル化して組織全体で共有可能になるでしょう。業務の管理指標が統一されることで業務の属人化防止につながり、全体的な業務効率向上が期待できます。
データ活用
食品流通は情報通信技術の導入が遅れている業界です。しかし、それは裏を返せばITシステムの効率的運用によって、大きな成果が期待できる業界といえます。生産性を最大化するには部分的プロセスだけではなく、業務全体のプロセス改善が必須です。ITシステムによる情報のデジタル管理で、さまざまな業務データが可視化されます。そして、受注管理、出荷管理、生産管理といった流通業務のプロセス全体を俯瞰的にとらえることが可能になります。業務フロー全体をデータとして可視化することで全体的な最適化を実現できるでしょう。
データを取り業務フロー全体を見える化することで、得られるメリットはもう一つあります。それは目標管理の最適化です。業務データを可視化することで問題や課題が定量化され、具体的な数字を伴った明確な目標へと変換されます。目標が明確になることで、従業員一人ひとりが何をすべきかを理解し、具体的な行動プランに落とし込めます。
従業員一人ひとりが明確で高い目標を持つことでチーム全体の生産性が高まり、さらには企業全体の競争力向上へとつながるでしょう。
まとめ
食品流通の分野では、人材不足や古い業務体制、市場数と業者数の減少、業務の属人化など、業界の構造的課題が浮き彫りとなっています。こうした課題を乗り越えて発展していくためには、最適化システムの導入による情報のデジタル管理が必須といえるでしょう。業務効率最大化を実現するためにも、ぜひITシステムの導入を検討してください。