放送業界

映像業界の新しい形、クラウドを活用した効率化とは

映像業界は以前よりも多くの良質なデジタルコンテンツ制作が求められています。そのため、制作における課題だけでなく社内管理業務においても解決すべき課題がますます増えています。そこで本記事では、そういった映像業界における課題を解決するMicrosoft Azureのクラウド導入事例について紹介していきます。

映像業界の新しい形、クラウドを活用した効率化とは

映像業界が抱える課題

映像業界といえば、長時間労働で激務といったイメージが定着しています。最近では趣味嗜好の多様化によって映像コンテンツも多様化している時代です。そのような中、テクノロジーの発達によって、誰でも簡単に良質なコンテンツを制作できるようになりました。また、さまざまな動画がSNSなどで自由に公開されるようになり、若者のテレビ離れも顕著になりました。また、映像制作に関わる人材の慢性的な人手不足も深刻な問題です。

ここでは映像業界が抱える、コンテンツ制作とコンテンツ管理における主な課題を紹介します。

コンテンツ制作の課題

コンテンツ制作においては、コンテンツ作成・管理・配信の3つの観点に分かれます。

まずコンテンツ作成の面では、制作スピードがどうしても遅くなってしまうという大きな課題を抱えています。一昔前まではいかに良質なコンテンツを制作するかが重要でしたが、現代ではある程度の良質コンテンツをいかに早く制作するかが優先事項です。1本の制作には撮影、編集、修正などたくさんの工程があります。また、撮影現場への移動時間の長さ、予算削減による人手不足、担当者の経験不足など複数の要因が考えられます。

コンテンツ管理についても課題があります。例えば映像では多くのコンテンツを使用しますが、コンテンツが増えすぎてしまうと「インデックス検索ができない」「探すのに手間がかかる」といった問題が発生します。またインデックス処理を行ったとしても、データが増えれば増えるほど処理が重たくなり、時間がかかるといった課題が残ります。

コンテンツ配信では適切なターゲット分析による個別レコメンドの形成という課題があります。近年では、NetflixやAmazon、YouTubeなどのコンテンツが台頭、テレビ局が参入する事例も増えています。しかし、テレビと違うのは、ユーザー自身は観たいものしか観ないという点です。そのため、制作したコンテンツは広く多くの人に観てもらうよりも、ユーザーの属性や購買履歴などを元にした分析を行い、最も適切なターゲットにレコメンドする必要があります。

基幹システムの課題

映像コンテンツの管理において、ERPシステムは重要なソリューションです。例えば、SAP ERPを使って、自社が制作したコンテンツの版権はどことどのような契約を交わしているのか、どのくらいの収益を上げているのか、どのコンテンツが伸びているのかといった情報を可視化します。それらのデータは制作、営業、会計、経営陣などすべての部署で共有・分析し、いつでも閲覧できるようにしておくことが重要です。

最近では大手の映像制作企業で、オンプレミスの基幹システムをクラウドに移行することが増えています。オンプレミスのシステムは拡張性が高い反面、管理が属人化することや、特殊なものほど保守部品が手に入りにくく、確実な安定稼働が難しい、といったデメリットがあります。

クラウドへの移行が成功すれば、企業は大きな恩恵が受けられます。例えば、上記情報を一括管理して経営方針のデータとして使用したり、リアルタイム情報をコンテンツ制作の指標として活用したりすることも可能です。

映像業界のクラウド導入事例

オンプレミスからクラウドへの移行は大きな転換です。ここでは、映像業界でクラウド導入に成功した事例を2つ紹介します。

テレビ番組の「クラウド編集」を支援(札幌テレビ放送株式会社様)

札幌テレビ放送株式会社(以下STV)では、遠方取材の際、人員と機材の移動に問題を抱えていました。人員や機材が多くなると移動時のコストがかさむほか、人手不足でほかの番組の編集作業ができなくなり、一人にかかる仕事量が増えてしまいます。予算削減と人材不足はSTVに限らず、放送業界の深刻な課題です。

そこで目をつけたのが「Microsoft Azure」による、映像編集のクラウドサービス利用です。クラウド上にあるコンテンツストレージと編集ツールを利用して、その場にいなくても編集ができるようにしたのです。

まずはトライアルとして、プロ野球のキャンプ取材から始めました。キャンプ場は、STVのある北海道から遠く離れた沖縄の名護市です。距離にして約2,000Kmもありますが、素材をクラウドにアップして編集し、4時間で作業は完了。編集した映像は、当日の夜には無事に放送されたのです。

この試みが成功したことにより、移動コスト削減や作業の効率化が実現しました。また、Azureはオンプレミスとのハイブリッド利用ができるため、完全移行が難しい企業にもすぐに利用できるメリットがあります。

SAP ERPをクラウド移行(東映アニメーション株式会社様)

東映アニメーション株式会社では、オンプレミスで基幹システムを構築していました。しかし、管理が属人化していることに加え、保守部品の調達も困難であったため、事業活動の継続に不安が生じていました。

そこで、オンプレミスで利用していたSAP ERPをクラウドサービスである「Microsoft Azure」に移行することにしました。それにより管理を標準化し、部品の調達をしなくてもクラウド上で故障リスクを排除、上記の課題を解決できました。

SQL Serverのファイル圧縮機能でディスク総容量が大きく下がりSAP ERPの性能も向上。これにより情報関連経費の削減も実現しました。従来比30%のコスト削減も見通しています。

Microsoft Azureで映像業界の課題を解決

「Microsoft Azure」は、基幹システムをクラウド環境に移すには最適なシステムです。クラウド環境だけでなく、オンプレミスとクラウドのハイブリッド環境も構築できます。すべてを同時に移行する必要がないため、低リスクで導入できます。

また、映像業界の課題であるコンテンツ制作や基幹システム構築にもアプローチが可能です。映像コンテンツはクラウドに保管できるため、離れた場所でもスムーズなやり取りができます。STV様のように遠隔地からコンテンツをアップロードして、本社での編集も可能です。管理もシームレスに行われ、映像や音声メタデータによる検索もできます。そのため、パソコンのリソースが解放されるだけでなく、業務効率化も期待できます。

このようなコンテンツのやり取りは、世界中で利用できます。海外に外部委託している場合でも、連携がうまく取れるようになり、作業の効率化が図れるでしょう。

さらに「Azure Media Services」では、ライブストリーミング配信を円滑にサポートしてくれます。社内会議からスポーツイベント・音楽イベントまで、どのような規模でも利用可能です。さまざまなデバイスを使用しているユーザーにリーチできるため、新型コロナウイルスで広がる無観客イベントの配信にも活用できるでしょう。

まとめ

IT技術の発展に伴い、映像製作業界にも変化が起きています。これまで課題だった制作スピードや無駄なコストの発生も、クラウドを利用することで解決に繋げられます。

オンプレミスからクラウドへの移行には、両者をハイブリッドで活用できる「Microsoft Azure」を上手く活用して業務改革を推し進めましょう。

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