デジタル化が加速する中、映像コンテンツの消費行動にも大きな変化があらわれています。放送業界は過渡期を迎えており、突如現れたディスラプターの存在によって市場競争が一層激化している状況です。
この記事では、メディア・放送業界とは何かという基本的なことや収益モデル、業界で起きている市場構造の変化について解説します。
メディア・放送業界とは
メディア・放送業界とは、「通信設備を使用して放送事業をおこなっている」業界全体を指します。具体的な情報伝達の手段はテレビが主体となっており、映像・音声・文字などを用いてさまざまな内容を伝えています。伝える情報の種類は多種多様で、オリジナルの番組やドラマなどが放送されています。
番組やドラマの制作は実際にそれらを放送するテレビ局ではなく、他の企業が担っている場合も多いです。テレビ局の子会社として番組やドラマの制作を専門に扱っているところだけでなく、なかには独立してさまざまな案件を扱っているところもあります。
また、メディア・放送業界における情報伝達の手段としては、テレビ以外にラジオもあります。最近ではスマートフォンやパソコンでラジオを聞く人も増えており、また災害時に情報を得られやすい点からも再注目されています。
メディア・放送業界のビジネスモデル
メディア・放送業界のビジネスモデルは、大きく2つにわけられます。ここでは、それぞれのビジネスモデルの概要と特徴について説明します。
TVに採用される広告収益モデル
テレビ局の収益の柱となっているのは、「スポンサーから支払われる広告料」です。広告料を受け取ったテレビ局は番組やドラマの合間にCMを流すことにより、スポンサーの商品やサービスについて宣伝します。テレビは不特定多数の人が視聴しており一度に情報を届けられるため、CMによる宣伝の効果は絶大です。そのため、テレビ局はスポンサーから高額の広告料を受け取ることができ、高い収益を実現できます。
また、高い収益を得られればテレビ局として事業に力を入れられるので、さらにたくさんの人に見てもらえるような質の高い番組やドラマを制作できるようになります。広告による収益モデルは昔から採用されており、ひとつの作品としても高く評価できるような完成度の高いCMも数多く生み出されてきました。
なお、広告料の管理は基本的にキー局がおこなっており、ローカル局に対してさらに分配されています。
有料放送コンテンツで適用される定額課金モデル
メディア・放送業界のビジネスモデルとしては、「定額課金モデル」もあります。これは利用料を支払った契約者のみが番組やドラマなどを視聴できる仕組みであり、有料放送コンテンツが該当します。定額課金モデルを成功させるためのカギは、質の高いオリジナルの番組やドラマを作成し、「利用料を支払ってでも見たい」と視聴者に思ってもらうことです。有料放送コンテンツの場合、収益は視聴者から得られるため、番組やドラマの合間にスポンサーのCMを流す必要がありません。
また、放送時間が決まっているものもありますが、最近では視聴者が見たいときに好きな番組やドラマを見られるサービスも増えています。具体的には、一定額を支払うことにより番組やドラマが見放題になる「サブスクリプション」の人気が高いです。サブスクリプションでは過去に放送された人気番組やドラマを扱っている場合もあります。
メディア・放送業界で起きている変化
現在、メディア・放送業界ではさまざまな変化が起きています。メディア・放送業界について理解を深めるためには、それらの時流についても把握しておく必要があるでしょう。ここでは代表的なものを解説します。
インターネット広告市場の成長
近年、インターネット広告市場が急激に成長しています。株式会社電通の調査によると、2019年のインターネット広告費は2兆1,048億円で、ついにテレビ広告費の1兆8,612億円を上回りました。今後はスポンサーとなる企業がテレビ広告に割く費用を削減していく可能性が高いとされています。現状ではまだ多くの企業がテレビに対して広告料を支払っていますが、将来的にはテレビよりもインターネットを重視する傾向が強まると予想できます。
メディア・放送業界が今後も高い収益を維持するには、時代の流れに応じた新たな戦略を練る必要があるでしょう。もちろん、すでに視聴者から収益を得る定額課金モデルも取り入れられていますが、収益の大部分を支えているのは未だにスポンサーによる広告料です。今後はスポンサーとの良好な関係を維持しつつ、新たな方向性を見出す必要があります。
また、最近では若年層のテレビ視聴時間が減少しているともいわれています。テレビを見る代わりに、インターネットで好きなコンテンツを楽しんでいるのです。このような状況を踏まえれば、メディア・放送業界もインターネットを積極的に活用する必要があるでしょう。
VODなどの新プレイヤーの台頭
メディア・放送業界の変化としては、VODとよばれる新しいサービスの台頭もあげられます。VODとは「ビデオオンデマンド」のことで、電波で放送するテレビとは異なり、インターネットを通じて映像を閲覧できるサービスです。
たとえば、映画作品を見る場合、以前まではレンタルビデオ店でDVDを借りるのが一般的でした。しかし、VODならわざわざレンタルビデオ店に出向かなくても、インターネット上で好きな映画を視聴できるようになりました。VODはインターネットを使用できる環境さえあれば、時間や場所を問わずどこでも楽しめます。テレビだけでなく、スマートフォン・パソコンなどさまざまな電子機器での閲覧が可能です。
VODはすでに一般に広く浸透しており、サービスを提供する企業も一気に成長しています。既存のテレビ局もVODのサービスを提供していますが、それ以外にもNetflixやHuluをはじめとする専門業者が人気を獲得しています。各社の競争が激化しており、生き残りをかけてさらにしのぎを削ると考えられています。
まとめ
メディア・放送業界では、インターネット広告市場が成長するにつれ、テレビ広告の収益が減少しつつあるのが現状です。また、サブスクリプション方式を取り入れたVODの台頭で場所・時間を選ばずに番組やドラマを楽しむという考え方が若年層の中心に浸透しつつあり、時代の流れに合わせた収益モデルの再構築が求められているのです。