IT技術が飛躍的に進化を遂げて、今では多くの技術が一般家庭にまで普及しています。近年では、新しい技術として徐々に市場に広がっているのが、スマートビルディングの分野です。今後、多くのビルでスマートビルディング技術が採用される可能性が高いため、ビルの管理者や企業担当者は、その技術と活用例を知っておくとよいでしょう。
スマートビルディングとは
「スマートビルディング(Smart Building)」とは、モノのインターネットと呼ばれる「IoT」システムが組み込まれたビルのことを指します。IoTとは、普段使用しているモノに、コンピューターを構成するデバイスである「CPU」や、インターネット通信機能を搭載させたシステムです。
例えば、近年では声をかけるだけで、家の照明やエアコン、テレビなどを動作させる家電が話題になっていますが、これもIoTシステムの1つと言えます。
これまで、ただのモノとして扱っていたものに、「遠隔操作」「インターネット連携」「データ収集・解析」といった機能を持たせることで、より便利に扱えるのです。スマートビルディングでは、こうしたIoTシステムを活用して、ビル内を一元管理しています。
スマートビルディング市場は現在成長中
スマートビルディング市場は、徐々に成長しています。市場調査など、数々のレポートを作成・公表している「Report Ocean」によると、今後5〜6年の間に成長率が10.5%を超えると予測しています。
この予測には、アジアやアメリカ、ヨーロッパなど世界各国を含めた数値となっているため、世界中でスマートビルディングの導入が進んでいる状況です。さらに、5Gの出現によって、技術が飛躍すると言われています。
また、現在の日本政府では、スマートシティ構想を推進しており、全国の都市にIoTなどの技術を取り入れて、市民生活の向上を目指しています。スマートビルディングも、こうした町づくりの一環であるため、さらなる成長が期待されています。
スマートビルディングでのIoTやAIなどの活用例
ここでは、実際にスマートビルディングで活用されるシステムについて解説します。
センサーで照明・空調を自動調整
これまで、空調や照明などは人の手で操作していました。しかし、この方法では利用していない部屋のエアコンや電気がついたままになってしまい、無駄にエネルギーを消費してしまう、という問題がありました。それを解決するために、エネルギー消費を抑える方法、つまりシステムの自動化が考えられました。
照明を自動化することにより、人が出入りした際に電気が点いたり消えたりするように設定したのです。また、エアコンは常に動作するわけではなく、内部の気温上昇によって、調節しながら働くようにしました。そうすることで、電力の大幅な消費を抑えられるため、エネルギーの無駄遣いを防ぎます。このようにネットワークを通して、ビルの空調や照明などの設備機器を一元管理する技術を「BAS(Building Automation System)」といいます。
IoTを駆使したエネルギー利用状況の可視化・効率化
IoTの強みは、何といっても連携とインターネット接続です。スマートビルディングでは、内部のシステムをIoT化することにより、エネルギー利用状況の可視化を実現しました。どこからでも、ビル内のエネルギーデータの把握・監視が可能となったのです。
収集したデータは細かく分析されて、エネルギーの効率化・最適化のために役立てられます。このようなビルのエネルギー管理システムを「BEMS(Building Energy Management System)」と呼び、低炭素化のために必要な技術であると言われています。特に日本では、温室効果ガスの低減を掲げており、今後はこうしたエネルギー管理が欠かせません。
センサーでオフィスの利用率調査
これまでオフィスの利用率調査は、人の手によって行われていました。しかし、人力では非効率で限界があり、無駄なリソースが発生します。一方、センサーによる調査では、24時間365日観測できる上に、誤りのない調査が可能です。
オフィスの利用率をしっかりと把握できれば、利用人数に合わせて会議室を割り当てられるので、無駄な使用がなくなります。さらに、余分な座席数も分析されるため、不要なスペースを除外することにより、スペースの効率化も促進されます。
AI認証・解析によるセキュリティ対策
監視カメラにAI機能を搭載することで、よりセキュリティの精度を上げられます。例えば、過去に問題があった人物を登録しておけば、ビルに対象の人物が入ったことをすぐに検知します。さらに必要であれば、責任者へのアラート通知も可能です。
また、登録していない人物でも、不審な行動があった場合、AIが自動的に検知する機能も備わっています。このシステムにより、何かしらの問題が発生する前に対処できるでしょう。こうした検知・監視は、24時間365日動作しているので、夜間に侵入者が現れた場合でも、責任者や警備員にアラート通知してくれるため、いつでも問題に対応できるのです。
スマートビルディングの導入事例
ここからは、実際にスマートビルディングを導入した事例を紹介します。
PC・スマートフォンからリアルタイムな情報取得ができるスマートオフィス|渋谷ソラスタ
渋谷区道玄坂にある超高層ビル「渋谷ソラスタ」では、あらゆるデータを収集して、従業員が随時データを確認・把握できるように作られています。ビル内外の混雑状況から、従業員の位置情報、周辺の温度・湿度・二酸化炭素濃度など、多くの情報を一元管理しています。
例えば、トイレやワークスペースの使用状況をリアルタイムで把握可能なため、混雑や待ち時間の発生といった問題を解消します。さらに、照明は外の自然光によって、自動で人間の体に合う明るさに調節される仕組みになっています。常に、生体リズムに合わせた調光の下にいるので、従業員は快適に業務が行えるのです。
リアルタイムな解析・認証を行うスマートビル|ソフトバンク
ソフトバンク株式会社の本社は、スマートビルディングを採用したオフィスビルに移転しました。このビルでも、温度や湿度などの環境データ、人流や混雑状況のデータなどが「IoTプラットフォーム」に調査されており、常に監視・解析されています。トイレや商業施設、フリースペースの利用状況を訪問者に提供しているほか、警備員の配置や設備老朽化防止のための点検にも役立てています。
また、監視カメラにはAIシステムが搭載されており、異常な行動を検知した場合、すぐに警備員へアラート通知します。顔認証システムも搭載しているため、登録済みの従業員はICカード無しでスムーズに内部に入室できます。
インテリジェンスとイノベーションを実現する、AVNETのビルオートメーションソリューション
「アヴネット」は数十年に渡って、数多くのビルオートメーションのデザイン・構築・提供に携わってきました。これまでの経験と実績を基に、お客様のリクエストを的確につかんで、素早く要望を実現してくれます。多くのプロジェクトで、開発期間の短縮を叶えているので、早期的に市場投入を成功させたい場合も任せられます。
さらに、ビルオートメーションの知識だけではなく、標準とされる「EnOcean」「KNX®」「Thread」「LonWorks」「BACnet」 など、さまざまなシステムにも精通しています。また、セキュリティ分野のシステムにも強いため、暗号化や有線・無線接続など、安全で利用しやすい環境を築き上げる良きパートナーとなるでしょう。
まとめ
スマートビルディングでは、照明や空調を自動化したり、監視カメラにAIを組み込んだりと、IoTシステムでビルを管理します。これにより、利用者にとって快適な空間が提供されます。また、電気代などのコスト削減にもつながるため、エネルギー効率の観点から、地球環境にやさしいほか、さまざまな恩恵のあるシステムと言えるでしょう。