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スマートシティとは?背景や課題、国内・海外それぞれの事例を紹介

スマートフォンの台頭を契機に、あらゆるものの「スマート化」が急速に普及し始めるようになりました。その流れを受けて、近年では効率性を求めた都市を構想する「スマートシティ」の開発が世界的に進められつつあります。この記事では、スマートシティの概要や注目される理由について解説します。

スマートシティとは?背景や課題、国内・海外それぞれの事例を紹介

スマートシティとは?

スマートシティとは、電力や通信、交通など街のインフラをより機能的かつ効率的に稼働させることを目的とした都市構想です。街全体のスマート化を進めることで、日常生活の質や利便性の向上はもちろんのこと、昨今特に注目されている環境問題の解消にもつながるとして、国土交通省も積極的に取り組みを進めています。

スマートシティが注目される背景

スマートシティが注目されるようになった理由の一つが、世界規模での人口増加です。世界人口は2050年には97億人となり、そのうち7割は都市部に集中すると予想されています。

人口増加と都市部への一極集中化が進めば、住民の管理など行政の業務がより煩雑となることに加え、膨大なエネルギーが必要となり環境にも大きな影響を与えてしまうことが懸念されます。

こうした問題に対応すべく、都市全体のインフラをIoTの技術で無駄なく管理して、電力・行政・交通などの効率化を目指すのが、スマートシティ構想なのです。

スマートシティに取り入れられている技術

スマートシティ構想を支える技術として、センシング技術、通信技術、情報技術、アプリケーション技術の4つが主に挙げられます。

センシング技術とは、温度や音声や明るさなどといった要素を感知するセンサーを活用した技術のことです。このセンシング技術を活用することで、体温や脈拍を計り大勢の人々の健康管理を一括して行ったり、太陽光や風力を感知して細かに制御したりすることでより効率的なエネルギー管理が可能となります。

通信技術は、その名の通りインターネットを活用した技術です。昨今、すでにあらゆる場面でIoT化が進んでいますが、こうした技術は5GやGPS機能の発達で今後もより求められるものとなるでしょう。

情報技術とは、あらゆる情報、いわゆるビッグデータを収集したり分析したりすることです。こうしたビッグデータを活用することで、より効率的な方法を模索することが可能となります。

都市全体がスマート化していくうえで、アプリケーションの技術も欠かせません。パソコンやスマートフォンのアプリを介して、スマート化した都市サービスに人々がより簡単にアクセスすることができるようになります。

他にも、ドローンや自動運転など、今まさに開発が進められている技術も多くあります。こうした最先端の技術も、ゆくゆくはスマートシティを支える重要な基盤の一つとなるでしょう。

スマートシティ実現に向けた課題

より快適で理想的な環境を目指すスマートシティ構想ですが、一方でそのデメリットや課題も論じられています。まず挙げられるのが、スマートシティの性質上どうしても監視社会になってしまうのではないかという点です。都市全体を効率よく運営するには、住民の電力や水の消費量や健康状態などといった情報をビッグデータとして収集する必要があります。こうした状態は、言い換えると常に行政から監視されていると捉えることもできるでしょう。

また、あらゆるものをIoT化することで、機器やデバイスのトラブル、あるいは悪意ある人物によるハッキングなどのサイバー攻撃が社会全体の大きな混乱につながりかねないという懸念もあります。さらに、ビッグデータを大いに活用した社会になる以上、こうした情報を収集しやすい大規模なIT企業が市場の独占・寡占状態をつくってしまい、新規企業の参入が厳しくなってしまうという恐れもあります。スマートシティ実現に向けて、こうした課題の解決は必須とも言えるでしょう。

日本国内におけるスマートシティの事例

近未来的なイメージのあるスマートシティ構想ですが、国内でも各地で徐々にその試みが行われつつあります。

静岡県裾野市「トヨタ ウーブン・シティ」

トヨタ自動車株式会社は、静岡県裾野市にある工場跡地を利用して、東京ドーム15個分の広大な土地に「ウーブン・シティ」という名の実験都市を作る計画を発表しています。

この都市の最大の特徴は、道路を「自動車など速度の速い車両専用の道」「速度の遅い車両と歩行者が利用できる道」「歩行者専用の道」の3つに区分している点です。こうした道路を計画的に整備することで、人とモノの往来がよりスムーズになるとされています。

また、環境に優しい木材を利用した建築や太陽光発電の設置など、カーボンニュートラルな都市づくりを目標としています。着工は2021年の予定で、初期段階ではトヨタ社員や関係者の2,000名ほどが移住する計画となっているようです。

福島県会津若松市「スマートシティ会津若松」

福島県会津若松市は、東日本大震災の復興を契機としてスマートシティプロジェクトを発足させました。「生活の利便性向上」「地域のしごとづくり」「まちの見える化」の3つを軸として、情報通信技術を活用したサービスを住民に提供しています。

たとえば、オンライン診療や母子手帳の電子化、学校と家庭をリアルタイムにつなぐ情報アプリ「あいづっこ+」の配信、ICT関連企業の集積やサテライトオフィスの提供といった企業誘致など、都市のスマート化に向けて様々な取り組みを積極的に行っています。

千葉県柏市「柏の葉スマートシティ」

千葉県柏市の「柏の葉スマートシティ」は三井不動産がグループが手掛けているスマートシティで、「環境共生都市」「新産業創造都市」「健康長寿都市」の3つをテーマとして掲げています。街の中心部である柏の葉キャンパス駅付近はスマートシティの中核となるエリアとなっており、最先端の技術を搭載した賃貸住宅やホテル、創造的なビジネスの拠点などが集約されています。

海外におけるスマートシティの事例

スマートシティに取り組んでいるのは日本だけではありません。海外でも各地で都市のスマート化が進められています。

ニューヨーク「LinkNYC」

世界の大都市ニューヨークでは「LinkNYC」と呼ばれる構想が推進されています。これは市が管理する公衆電話をすべてタブレット型の高速Wi-Fiの基地に置き換えるといったプロジェクトで、この「LinkNYC」によって市民はもちろん観光客も街中で常に高速通信を利用できるようになりました。

また、高速Wi-Fiだけでなく、備え付けのタブレットからは無料電話やUSBを介した充電が利用可能で、ディスプレイには地域の情報がリアルタイムで掲載されています。

アムステルダム「ASCプログラム」

オランダのアムステルダムでは、「アムステルダム・スマート・シティ(ASC)」と呼ばれる、特に環境問題に着目したプロジェクトが進められています。ASCプロジェクトにおけるコンセプトは「持続可能な生活」「持続可能な労働」「持続可能な運輸」「持続可能な公共スペース」の4つです。

ここでいう「持続可能」とは環境問題に配慮した上での持続力を指しており、スマートメーターによる市民の消費電力の可視化や、冷暖房や照明を効率的に管理したスマートビルディングの建設、EV車の普及など、環境改善の面に徹底した内容となっています。

杭州市「ET都市ブレイン」

都市のスマート化において、交通における効率化も欠かせない要素の一つです。中国の杭州市では、電子決済会社であるアリババ・グループが開発した交通制御システム「ET都市ブレイン」によって市内の深刻な交通渋滞が大幅に緩和されました。

「ET都市ブレイン」は交通量に合わせた信号の制御や渋滞の予防、救急車両がスムーズに移動するための信号調整、監視カメラの映像による違反車両や犯罪の通報システムなどが搭載されています。杭州市で大きな成果を上げた「ET都市ブレイン」は、現在蘇州市やマレーシアのクアラルンプールでも試験的に導入されています。

まとめ

人口増加や環境問題など、予測されているあらゆる課題への解決策として、世界各地でスマートシティの構想が進められています。発展のために環境汚染も厭わなかった時代から、世界の意識が大きく変革しつつある潮目の時期と言えるでしょう。

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