近年、多くの企業がペーパーレスへと移行しています。建設業を営む企業も例外ではなく、ペーパーレスの導入に踏み切る企業は少なくありません。一方、導入を検討しているものの、メリットがよくわからず一歩を踏み出せない建設企業が多いのも事実です。本記事では、建設現場にペーパーレスを導入するメリットや、取り組み方について解説します。
なぜペーパーレスが必要なのか
近年、急速に進んでいるペーパーレスですが、そもそもなぜ必要なのでしょうか。まずは、国がペーパーレス化を推進している理由や、紙を使用し続けるデメリットについて見ていきます。
国はペーパーレス化を推進している
政府による電子帳簿保存法の改正をはじめ、国が主導となりペーパーレスへの取り組みが進められています。法改正により、従来では紙のまま保存を義務付けられていた書類が、電子データ化して保存できるようになったのです。
国がペーパーレスを進める理由のひとつは、国力の強化です。ペーパーレス化により、企業は業務効率化や生産性向上などの恩恵を受けられ、組織力を強化できます。日本中の企業が組織力を高められれば、国力そのものの強化につながるのです。
また、紙を生産するとなると、木を伐採し続けなくてはならず、環境保護の観点から問題視されています。ペーパーレス化が進めば、環境破壊や資源の無駄遣いの回避につながるメリットもあるわけです。
近年、さまざまな理由からリモートワークへの移行を検討する企業が増えました。しかしリモートワークでは、従来のように紙資料を用いた業務が難しく、必然的にペーパーレスへ対応せざるを得ません。
また、重要な紙資料の不正持ち出しや紛失、破損などのリスク排除し、業務効率化や働き方改革への対応などを実現するためにも、企業はペーパーレス化に取り組まなくてはならないのです。
紙資料の使用によるデメリット
紙資料を使用し続ける主なデメリットは、コストの発生です。たとえば、会議や研修などのたびに書類を印刷するとなれば、インク代や用紙代、複合機を使用する電気代などが発生します。また、これらの書類を配布するための時間コスト、廃棄する際のコストもかかってしまいます。
検索性の悪さもデメリットといえるでしょう。膨大な紙資料の中から、必要に応じた書類をスピーディーに見つけるのは困難です。きちんとファイリングしているケースでも、一つひとつ手作業で探さなくてはならず、業務効率を大きく低下させかねません。
また、紙を生産するには森林を切り開き、木を伐採する必要があります。紙資料を使用し続けることは環境破壊につながり、二酸化炭素の排出量を増加させてしまうデメリットもあるのです。限りある資源と地球環境への配慮を考えると、企業がペーパーレス化へ舵をとるのは必然といえるでしょう。
ペーパーレスを導入するメリット
中には、「ペーパーレスを導入したあとのイメージが掴みにくい」と考えている方もいることでしょう。ペーパーレスの実施により、具体的にどのようなメリットを得られるかが理解できれば、導入後のイメージを掴みやすくなるはずです。以下、ペーパーレスの主な導入メリットをご紹介します。
資料の持ち運びの手間がなくなる
建築や建設現場では、さまざまな種類の書類を使用します。設計図面や仕様書、工程チェック表など、いくつもの書類を持ち運びしなくてはなりません。さらに、現場の規模が大きくなればなるほど、持ち運ぶ書類の数も増えます。大手ゼネコンが関わるような規模の大きい建設現場では、なおさら必要書類の数は多くなり、担当者の負担が増してしまいます。
これらの書類を電子化できれば、容易に持ち運びが可能です。電子化したデータをノートパソコンやタブレット端末に保存していれば、現場でファイルを開くだけで図面や仕様書をチェックできます。大量の書類を抱えて現場内を歩く必要もなくなり、担当者の負担軽減や安全確保にもつながるのです。
資料を探す手間が省ける
電子化したデータであれば、キーワードからスピーディーに目的の資料を検索できます。バインダーや書類ファイルからわざわざ探す手間が省け、短時間で必要書類にアクセスできるのです。
刻一刻と状況が変化する建設現場では、今すぐ図面を確認したいといった状況も発生します。このようなとき、電子データであれば速やかに必要な情報を取り出しチェックできるため、作業の円滑化につながります。
また、紙書類の紛失リスクを回避できるのも大きなメリットといえるでしょう。建設現場は工具や機械、資材などで雑多な環境になりやすく、置いていた書類が風や重機の排気で飛ばされたり、どこに置いたかわからなくなったりすることが少なくありません。電子データであれば、必要な資料はすべて端末からチェックできるため、そのような心配も無用です。
災害対策に有効である
大規模な災害の発生に伴い、自社の紙資料が破損してしまうケースは少なくありません。オフィスが水没しになり書類がダメになった、火災で焼失したといった事態が起きると、もとの書類を復元できないおそれがあります。
電子データとして保管しておけば、このようなリスクを回避できるでしょう。端末だけでなくクラウドストレージにも保管しておけば、端末がダメージを受けてもデータそのものは安全に管理できます。
日本は地震や台風をはじめ、さまざまな自然災害に見舞われやすい国です。災害により事業継続に支障が出ないよう、BCP対策の一環としてペーパーレスを進めるのは有効といえます。
ペーパーレスはどのように導入すればいいのか
書類のペーパーレスに初めて取り組むのであれば、どのような手順で進めるべきなのかもわからないでしょう。基本的には、以下のポイントを押さえて進めると、効率よく移行できます。
電子化すべき書類に優先順位をつける
法改正により、さまざまな書類の電子保存が可能になりましたが、中には例外もあります。電子化できる書類とできない書類があるので、まずはそれをきちんと理解しておきましょう。
それを踏まえたうえで、電子化すべき書類を仕分けしていきます。何もかも電子化しようとすると、膨大な時間と手間が発生するので、閲覧頻度や重要度の高いものから優先的に進めるのが基本です。
電子化する書類に優先順位をつけつつ、不要なものは積極的に廃棄しましょう。「そのうち使うかもしれない」などと保管していると、余計な書類が増えてしまいます。この機会に、要不要をしっかり見極めつつ取捨選択していきましょう。
段階的に移行していく
組織全体で一度に電子化を進めようとすると、現場に混乱を招きかねません。現場の従業員が対応できず、通常業務にも支障をきたしてしまうおそれがあります。
いきなり組織全体で進めるのではなく、限定的な部署からスモールスタートで進めるとよいでしょう。1~2部署を対象にテスト導入としてスモールスタートし、経緯を見つつ段階的に規模を大きくしていくのが得策です。このやり方であれば、何か問題が生じたときもすぐ対応でき、現場の混乱も最小限にとどめられます。
社員に教育を行う
書類の電子化を進めると、従業員の作業内容や手順などが大きく変わります。一部の従業員から不平や不満が発生する可能性もあるので、事前にペーパーレス化の目的や現場が得られるメリットなどを丁寧に説明し、理解を得ることが大切です。
また、作業手順の変化に伴う教育も必要です。ペーパーレスを導入しても、現場がうまく運用できなくては意味がありません。必要に応じて、勉強会やセミナーを開催するのもよいでしょう。
もうひとつ大切なのが、情報漏えいの発生を防ぐための教育です。メールの誤発送やデータを保存したUSBメモリの紛失・盗難など、情報漏えいのリスクは多々あります。情報漏えいは組織としての信頼を失墜させ、事業継続すら危うくしてしまうため、徹底した教育が必要です。どのように情報漏えいが発生するのか、防ぐためにはどうすべきなのかを周知させましょう。定期的な研修や勉強会を実施し、社員のセキュリティ意識を高めることも大切です。
まとめ
紙資料の使用は業務の非効率を招くほか、破損リスクや環境破壊につながるなど、さまざまなデメリットがあります。ペーパーレス化は、これらのリスク・デメリットを回避し、業務効率化やリモートワークへの対応にもつながります。ペーパーレス化を進める際は、電子化すべき書類に優先順位をつけ、段階的に取り組みを進めていくとよいでしょう。