製造された自動車やバイクは、完成後に厳しい検査を受けたのち、市場に流通します。このとき、市場へ流通させる前に行う最終的な検査のことを「完成検査」や「完成車検査」と呼びます。本記事では、自動車やバイクの完成検査の特徴や内容について解説します。併せて、検査を効率化する手法についても紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
自動車やバイクにおける完成検査とは?
自動車やバイクの製造において、最終工程で実施される検査を「完成検査」と呼びます。この検査を受けずに、市場へ流通することはありません。あらゆる部分を厳しくチェックし、問題がないことを確認されてから出荷されます。
自動車やバイクを出荷するためには、国の定める安全基準を満たす必要があります。完成検査では、「その国が定める基準をクリアできているかどうか」厳しく確認します。なお、この検査は誰でもできるわけではありません。自動車やバイクに精通し、検査員としての認定を受けた有資格者のみが検査に携われます。
自動車やバイクの製造過程では、さまざまな検査が実施されますが、その中でももっとも厳しいのが完成検査と言えるでしょう。問題のある車輛を流通させてしまうと、予期せぬトラブルや周りを巻き込んだ重大な事故の発生にもつながりかねません。
ときに人命にも関わるため、各メーカーは数々の検査項目を厳しくチェックし、安全性を確認しています。ただ、完成検査に関しては次項で紹介するように、かつて不祥事が起きているのも事実です。
完成検査の不正事件とは
一時期メディアを大きく賑わせた、完成検査にまつわる不正事件をご存じの方も少なくないでしょう。メーカーや自動車への信頼を失わせるほどの不祥事であり、連日さまざまなメディアで報道されました。
完成検査で不正を行っていたのは、日産自動車やスズキ、スバルといった国内の大手自動車メーカーです。本来、完成検査は認定を受けた有資格者でなければ携われないのですが、日産自動車では無資格の従業員が検査を行っていました。
日産自動車の不正を受けて国交省が動き、調査を始めたところ、スバルでもデータの改ざんや不正検査が発覚しました。その結果、スバルは約39万台にもおよぶリコールをする羽目になったのです。
さらにスズキでも、「複数の工場において無資格の従業員が検査をしていた」という実態が発覚しました。また、不正の発覚を恐れ、検査に使用するチェックシートの改ざんまでしていたとのことです。
各メーカーのしたことは非難されて然るべきですが、問題は「どうしてそのような不正が横行していたのか」という点です。メーカーによってさまざまな思惑があったと考えられますが、効率化や人件費削減などを進めたい思いがあったのは明らかでしょう。事実、不正発覚後に日産自動車が国交省に提出した報告書では、問題の背景や原因として、人員不足や現場管理者の不在、不十分な教育などを挙げています。
完成検査を安全に効率化するには
完成検査を安全に効率化できれば、不正に手を染める必要はなくなるでしょう。効率化が実現すれば、限られた人員で効率よく検査を行えるため、無資格の従業員まで駆り出す、といったこともなくせます。以下では、完成検査を安全に効率化できるヒントをいくつかピックアップして紹介します。
5Sを見直す
「5S」とは、製造業や建設業の現場でよく採用されている取り組みです。整理・整頓・清掃・清潔・しつけの5要素を示しており、これを徹底することで職場環境の健全化が期待できます。
5Sの徹底は、業務効率化の第一歩とも言われています。現場が散らかっていると、必要な工具や部品をすぐ見つけられず、余計な手間をとられかねません。無駄な時間が生まれることで、結果的に業務が非効率になってしまうのです。
5Sを徹底すれば、作業をしやすい環境が整います。「使ったものはもとの場所に戻す」「決められた場所に部材を保管する」「常に周囲を清掃して、きれいな状態に保つ」などを徹底すれば、必要なものも速やかに見つけられるでしょう。
5Sへの取り組みだけでなく、社内の教育体制や現場のルールを見直すことでも、効率化は可能です。現状を把握し、必要に応じてルールや教育体制の改善も進めるよいでしょう。
オペレーションを改善する
検査の効率化を図るには、オペレーションの改善も必要です。オペレーションに無駄が発生していると、1日あたりに対応できる台数が少なくなり、無理のあるスケジュールになってしまう恐れにつながります。
オペレーションを改善して無駄な動きをなくせば、検査に要する時間の短縮化が可能です。1台あたりにかかる検査時間が短くなるため、効率よく検査を進められるでしょう。人員を増やすことなく、限られたリソースを最大限活用して検査を行えます。
オペレーションを改善するには、現状を正確に把握しなくてはなりません。「どこに無駄が生じているのか」「無理の生じている工程がないか」などを把握し、そのうえで改善策を打ち出しましょう。
ペーパーレスの紙帳票を利用する
ペーパーレス環境の整備により、完成検査の効率化が可能です。検査の現場では、いまだに紙帳票を利用しているケースも少なくありません。紙媒体では、どうしても作成に手間がかかるうえ、テキストがメインなので、しばしば「検査員が検査項目を正確に把握できない」という問題も発生していました。
紙帳票の電子化により、これらの問題を解決できます。印刷の必要がないため手間の軽減になり、印刷コスト削減にもつながります。人力でファイリングして管理するなどの手間もなくなるため、データ保管コストも下げられるでしょう。
i-Reporterで完成検査を効率化する
株式会社シムトップスが提供する「i-Reporter」は、手軽にペーパーレス環境を実現できる多機能な現場帳票システムです。川崎重工業株式会社(以下、川崎重工業)も導入しており、完成検査に使用するチェックシートの作成時間を従来の1/3まで短縮することに成功しています。
同社では紙帳票を用いて検査を実施していましたが、年々増加する車輛仕様数により、従来の検査方法に限界を感じていました。そこで拡張性が高く、顧客のニーズも満たせるi-Reporterへとシステムを移行したのです。その結果、作業時間の短縮と検査精度の向上を実現しました。
以下では、川崎重工業が成功を収めるカギとなった、i-Reporterの主なメリットについて見ていきましょう。
i-Reporterのメリット①拡張性が高い
紙帳票の場合、検査項目が増えると、テンプレートの項目を増やさなくてはなりません。その都度、新たに作成する必要があるため、どうしても手間がかかってしまうのです。
i-Reporterなら、このような課題を解決可能です。速やかに項目数を増やしてチェックシートに反映できるため、時間がかかりません。しかも、タブレット端末上で項目に直接記入できるので、従来のように紙を印刷して配布する必要がなくなり、コストダウンを実現していけます。
i-Reporterのメリット②精度が高い
精度の高い検査を実現できるのも、i-Reporterの魅力です。電子化したチェックシートに写真を添付可能なので、より多くの情報を検査員に伝えられるのです。
紙のチェックシートではテキスト情報がメインでしたが、i-Reporterなら画像も添付できるため、新人でも重要な検査項目を見落としにくくなります。その都度、周りに質問することもなくなるため、効率よく検査を進められるでしょう。
また、画像データと照らし合わせながら検査を行えることから、色違いや類似部品なども画像でわかりやすく伝えられるため、ミスが発生するリスクも軽減していけるのです。
川崎重工業でも、i-Reporterの導入により検査精度が大幅に向上したとのことです。新人でもベテラン検査員と同等の業務を速やかに遂行できるようになったとして、効率化と精度向上を実感しているようです。
まとめ
完成検査の効率化は、5Sの見直しやオペレーションの改善などにより可能です。まずは基本である5Sを見直し、オペレーションの現状把握と課題の抽出、改善を進めてみましょう。本記事でお伝えした通り、電子化によるペーパーレスの実現も完成検査の効率化と精度向上につながるため、この機会にぜひ検討してみてはいかがでしょうか。