QC7つ道具は、もともと社内での改善を通じて企業の体質改善や生きがいのある職場を作る目的で活動する小集団活動(QCサークル活動)から生まれた品質改善の手法です。現在でも品質管理における基本知識として認識されています。今回は、各ツールの特徴をちゃんと理解し、効果的に活用するためにも、QC7つ道具について解説していきます。
QC7つ道具とは
QC7つ道具とは、統計的品質管理において用いられる手法の総称で、品質管理(Quality Control)に特に効果を発揮する7つのツール(道具)を活用することから「QC7つ道具」という名前がついています。定量的なデータを分析することができるため、主に製造現場の品質管理・改善手法として広まりました。ちなみに、「7つ道具」と呼ぶのは源義経の家臣として有名な武蔵坊弁慶の7つ道具になぞらえたものです。
グラフ
グラフは、複数のデータを視覚的に示すことができる図で折れ線グラフ、棒グラフ、円グラフなどがあります。数値の大小や比率などをわかりやすく表現でき、全体の状況を視覚的に確認したいときに使います。基本的には2つの変数を扱います。
例えば、不良発生件数を月別で比較したいときに、表で示すよりも棒グラフで表したほうが「どの月に一番不良が発生したか」が一目でわかります。他人に説明するときにグラフを使うと理解しやすく効果的です。なおQC7つ道具として挙げられているヒストグラムや散布図、パレート図も、グラフのひとつとなります。
パレート図
パレート図とは、現象を工程や項目ごとに分けて、それらを棒グラフと占有率の折れ線グラフで表した図です。もともとパレートの法則(2:8の法則とも呼ぶ)という、全体の20%の要因が80%に対して影響を与えるという考え方があり、パレート図はそれを可視化できます。どこの工程・項目を改善すれば効果がでるかを把握したいときに使います。
例えば、ある製品の不良項目が5つあったときに、それぞれ不良項目が見つかった製品数を多い順に棒グラフにします。さらにそれの累積比率を折れ線グラフとして重ねると、大半の不良製品は、特定の不良(例えば項目1と項目2)によることが明らかになります。問題点を重要度順に見つけ出すことができるため、真っ先に手を付けるべき項目の優先度を決定しやすくなります。
特性要因図
特性要因図とは、その問題が持っている特性と、それに影響を与えている要因とを矢印を用いて整理した図です。問題に影響している要因を把握したいときに使います。特性要因図は、矢印の集合体が魚の骨の形に見えることから魚の骨図(fishbone diagram) とも呼ばれます。
例えば「なぜ製品Aで不良が発生したか」という問題に対して、「手順ミスがある」「照明が暗い」「検査工程がない」など問題が起きそうな要因を列挙して矢印で繋ぎます。そうすることで、問題に対してどんな要因が関連しているのかを明らかにします。特性と要因の関係を可視化できたところで、「動画を採用した手順書を作成する」「照明を明るくする」「検査工程を入れる」といった改善策の議論を進めていきます。
散布図
散布図は、データを点の集合によって表現した図です。2つのデータの関連を調べたいときに使います。例えば、工場内の湿度と製品の不良発生件数の関係性を調べたいとき、毎日の工場内湿度と不良発生件数をデータとして集計して、横軸に湿度(要因)、縦軸に不良発生件数(結果)を取り散布図にします。
これらのデータから相関係数(r)を求めると、関係性の度合いを判断することができます。rは1から-1の値を取り、高い関係性があるときは「正の相関(負の相関)がある」と言います。散布図を使用することで2つのデータに関連性があるかどうかが一目で把握できます。
管理図
管理図とは時系列のデータから、工程の状態を把握するための折れ線グラフで、ばらつきを把握したいときに使用します。作成するグラフには、中心線(平均値・CL)を基準に、標準偏差のプラス3σを上方管理限界(UCL)、マイナス3σを下方管理限界(LCL)に記載します。統計的に正規分布では99.7%が標準偏差の3σ以内になることがわかっていて、上下の管理限界を超えない場合は、大きく外れた数値があっても偶然とみなします。そして、管理限界を超えた場合のみを異常値とみなし、原因を探ります。
例えば、製品の不良発生件数を日ごとに取得し、時系列の折れ線グラフにします。そして、中心線および上方管理限界・下方管理限界(LCL)のラインを引きます。時系列のグラフにすることで、一定の幅から外れた数値(異常値)を容易に発見することができます。不良発生件数が管理限界値を超えた日に何があったのか、その原因を究明します。
チェックシート
チェックシートとは、分類した項目ごとに記録や点検ができる図表形式のシートです。基本的には日常的に使われるチェックシートと同じもので、目的に合った項目に対して点検有無を記載して漏れを防いだり、記録を取ったりします。項目を一覧化することで、誰が見ても同じように点検、記録ができるようになります。
ヒストグラム
ヒストグラムとは、データをいくつかの区間に等分して各区間に入るデータの数を縦軸に取った柱状の図で、度数分布図とも呼ばれます。データ全体の分布を把握するときに使います。データ全体が、どのような分布構成になっているかがビジュアルで理解できるため、人口分布など統計でもよく使われます。品質管理では、ヒストグラムでバラツキの特徴を把握することで何が起きているのかを推定します。
例えば、ヒストグラムで1ヶ所だけ外れた位置に山がある場合(離れ小島型)は、その範囲に異常が発生した製品が含まれている可能性が高いと予想されます。
QC7つ道具を活用するときのポイント
QC7つ道具を活用するときのポイントは、「どの手法を使うと問題が解決できるか」「ツールを当てはめるときにどんなデータが必要か」を意識することです。
品質管理において何らかの問題が発生した場合には、SWOT分析のようなフレームワークと同様、QC7つ道具のいずれかにデータを当てはめることで状況や問題の発生要因などを把握できます。各道具の特徴を理解しておくことで、「今回の状況であればパレート図が使えそうだ」などといった決定をしやすくなります。
また、どんなデータが必要かを意識するときは、「層別」という考え方が役に立ちます。これはデータを時間別や作業者別といった一定の視点に基づいて整理する方法で、データの特徴や傾向を掴むことができます。QC7つ道具を使う前処理のような位置づけです。層別して整理したデータを、適切な7つ道具のいずれか、または複数に当てはめていきます。すべての道具を使用する必要はありません。
品質管理や改善、新製品開発などで活用する「新QC7つ道具」
新QC(Quality Control)7つ道具とは、主に事務部門スタッフ向けに開発された品質管理手法です。従来のQC7つ道具が数値データを管理する手法であったのに対して、新QC7つ道具は数値化できない言語データを図に整理することによって問題を明らかにする手法です。
新QC7つ道具には、言語データをグループ分けして整理する「親和図法」、原因と結果の因果関係を矢印で結ぶ「連関図法」、目的と手段を系統的に示す「系統図法」、2つの要素を二次元的に配置する「マトリックス図法」、マトリックス図法のデータを解析する「マトリックスデータ解析法」、問題を解決する工程や日程を明確化する「アローダイアグラム法」、代替案を示す「PDPC法」があります。
まとめ
QC7つ道具は、古くから統計的品質管理の手法として多くの現場で用いられてきました。特にパレート図、特性要因図などは、現在の製造現場でも役に立つ道具です。不良が発生しても迅速に適切な対応を取ることができるように日頃からQC7つ道具それぞれの特徴を勉強して、備えておきましょう。