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自治体におけるDX実施の現状を総まとめ!課題や事例を紹介

自治体DXとは、デジタル技術を活用し、よりよい住民サービスの提供や庁内の業務効率化を実現するための取り組みです。多くの自治体が取り組みを進めていますが、デジタル人材の不足などの課題もあります。

本記事では、自治体がDXに取り組む意義や実際の取り組み事例、解決すべき課題などを紹介します。

自治体におけるDX実施の現状を総まとめ!課題や事例を紹介

自治体におけるDXとは何なのか?

2021年にデジタル庁が発足し、2022年には「デジタル社会の実現に向けた重点計画」が閣議決定されました。社会全体でデジタル化が推し進められる中、民間企業だけでなく自治体にもDXが求められています。以下では、DXの概要や自治体DXの特徴について解説します。

DXの概要について

DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、直訳するとデジタル変革という意味です。企業や自治体などの組織がAI、クラウド、IoT、ビッグデータといった最新のIT技術を活用して、新たなビジネスモデルを創出したり組織を変革したりする取り組みを指します。スウェーデンにあるウメオ大学のエリック・ストルターマン教授が提唱した「継続して進化するテクノロジーが、人間の生活を、あらゆる面でよりよい方向へと変化していく」という概念がもとになっています。

今ではビジネス的な側面が強くなり、経済産業省はDXについて「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」と定義しています。

自治体におけるDXの特徴

企業視点でのDXが競争力の獲得を目指すのに対し、自治体視点でのDXは目指すゴールが変わります。自治体のDXは、住民の利便性を向上させることや、業務効率化を図り、人的資源を行政サービスのさらなる向上につなげることなどを目指します。

政府は、「デジタルの活用により、一人ひとりのニーズに合ったサービスを選ぶことができ、多様な幸せが実現できる社会」を、今後デジタルにより目指す社会のすがたとして示しています。

2021年にはデジタル改革関連法が公布され、地方自治体はデジタル社会を実現するために施策を策定・実施する責任が生じました。自治体はデジタル技術やデータを活用して行政サービスの質を向上させるとともに、業務効率化を実現することが強く求められています。

自治体が進めるDXにおいての課題とは

自治体のDX推進を阻害する社会的な課題を3つ紹介します。

人口減少による人手不足

2021年の出生数は約81万人で、前年より3万人近く減少しました。これは調査開始以来最低で、日本の少子高齢化は大きな社会課題となっています。

この減少傾向が続くと2050年の国内総人口は1億人を割り、働き手となる労働力人口も2014年の6,587万人から2030年には5,683万人、2060年には3,795万人と大きく減少すると推計されています。

働き手が不足すると長期間労働など労働環境の悪化が進み、結果的に企業成長力の低下や国内市場全体の縮小につながる可能性があります。

自治体においても、人口減少・少子高齢化は大きな課題です。働き手不足で業務の担い手が減少する、住民人口減による税収減で行政サービスが維持できなくなるといった問題が起こります。

デジタル人材の枯渇

自治体DXを実現するためには、情報化担当などIT技術に詳しいデジタル人材や、CIO、CIO補佐官などのITマネジメント人材の確保が不可欠です。しかし、少子高齢化にともなう労働力人口の減少によりデジタル人材は全国的に不足しており、外部から確保するのは難しいのが実情です。自治体DXも民間企業のDXと同様に、デジタル人材の確保が大きな課題となっています。

根強く残る紙ベースの文化

手書きの申請書を窓口で提出する手続きをはじめ、自治体では紙を用いた業務フローが数多く残ります。一部の手続きは紙からデジタルへの移行が進みつつありますが、紙ベースの文化が根強く残っており、非効率な業務体制がまだまだ改善されていないのが現状です。

また自治体では、サービスの対象者にスマートフォンやパソコンなどのデジタル機器の操作に不慣れな高齢者も多く含まれます。オンライン手続きが難しいデジタル弱者への対応が課題となり、紙ベースの手続きを撤廃しにくいという特有の事情もあります。

自治体におけるDXの取り組み事例

各自治体のDX取り組み進度は一様ではなく、すでにデジタル化で効果をあげている自治体も登場しています。そこで他の参考になるような先進的な事例を紹介します。

「スピード感のある対応」を掲げたチャレンジ

宮城県仙台市では、業務のデジタル化・オンライン化を加速させスピード感のある対応を実現するための取り組みとして、「デジタル化ファストチャレンジ」を実施しました。

「窓口手続きのデジタル化」「デジタルでつながる市役所」「デジタル化で市役所業務の改善」の3つを柱にしたもので、押印の廃止やキャッシュレス決済の導入、モバイル端末を活用した市民対応、AI・RPAの活用などの取り組みです。

さらに同市では「仙台市デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進計画」を策定し、「:D-Sendai デジタルでみんなワクワクスマートシティ」を市の目指す姿として掲げました。行政手続きのデジタル化やデータの活用を軸とした「行政のデジタル化」と、地域、交通など11の視点からデジタル化を進める「まちのデジタル化」を進め、多様化する住民ニーズに応えるDXの実現を目指しています。

電子決済機能付き文書管理システムの導入で紙をなくす

愛知県瀬戸市では、業務手続きのペーパーレス化を実現するため電子決済機能がついた文書管理システムを全庁で導入することを決定しました。

現在はデジタルと紙書類とを併用しているため、文書管理システムの分類と整合性がとれるかたちでファイリングシステムを開発、組織で一元的な情報管理ができる体制に整えてから順次文書管理システムを本格運用する流れにしました。これにより将来的な文書の電子管理、電子決裁への完全移行を目指しています。

業務の効率化による書かない窓口、ワンストップ窓口の実現

北海道北見市では、ITを活用した窓口支援システムを導入して「書かない窓口」を実現しました。

職員は受付システムを使って応対し、入力した内容をシステムから出力するため市民は署名するだけで済みます。関連手続きもシステムで判定されリストで表示されるため、手続き漏れ予防にもつながります。簡易な手続きは他の窓口を回ることなくワンストップで受付できるため市民の利便性も向上しました。窓口支援システムは他の自治体でも採用され、システムの著作権料は北見市の収入となっています。

またバックヤードでRPAを導入することで、職員の作業負担軽減も実現しました。

自治体がDXを進める上で押さえるべきポイント

自治体がDXを推進するうえでは、以下のポイントを押さえて体制を整えることが必要です。

組織を横断した柔軟な対応

DXは、一部の部門が行うものではなく全庁的な取り組みです。情報政策担当部門や行政改革・法令・人事・財政担当部門、業務担当部門など、それぞれの部門がDXの重要性を意識し、他部門と連携しながら主体性を持って取り組みを進める必要があります。

そのため首長直轄のプロジェクト体制を整えるなど組織を横断した柔軟な対応が必要です。

デジタル人材の確保と育成

高度なITスキルを持ったデジタル人材は不足傾向にあります。しかし、自治体でDXを推進するうえでデジタル人材は不可欠です。

自治体は中長期的に教育計画を策定し、体系的な人材育成研修を行うほか、任期付き職員や非常勤職員として外部人材を活用することも視野に入れて人材確保に取り組むことが求められます。

DX化に向けた計画の策定

DX化は、全庁をあげて長期的に取り組むべき課題です。根強く残るアナログ文化から脱却するまでは時間がかかることも想定し、短期的な視点だけでなく、5年後、10年後といった長期的な視点からも計画を策定しましょう。計画を住民に周知する際には、住民がイメージしやすいよう、実際にサービスを提供できる時期を伝えることも必要です。

まとめ

めまぐるしく変化する社会環境に対応し、行政サービスの質や利便性を向上させるためには、早急なDXの実現が必要です。自治体DXを成功させるには、庁内の課題を明確にしたうえで、自治体内だけでなく外部組織・人材を巻き込みながら進めていくことが重要です。

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