顧客対応力が高ければ、顧客からの問い合わせにスムーズな対応ができ、ニーズを踏まえたうえでの提案も可能です。本記事では、企業が顧客対応力を高めるために何をすべきかをピックアップしました。顧客対応の担当者に求められるスキルや、社内整備のコツについても解説します。
高まる顧客対応の重要性
顧客対応品質の低下は、企業のイメージを悪化させるほか顧客離れにもつながりかねません。素晴らしい商品やサービスを扱っていても、顧客対応の態度が悪い、対応が遅いといった問題があると売上につながらず、窮地に立たされてしまうおそれがあります。
このようなリスクを回避するためにも顧客対応は重要です。顧客からの相談や質問に対し、丁寧かつ適切な対応をすれば、顧客満足度を高められます。高品質な顧客対応は他社との差別化にもつながり、新規顧客の獲得やリピーターの増加も期待できます。
また、近年は顧客接点が多様化しているため、各チャネルにあわせた適切な顧客対応が必要です。ここに力を入れないと、対面では対応品質が高いのにSNSやメールでの対応はよくない、といったことが起こりかねません。
顧客対応が重要となる場面
商品やサービスに関する問い合わせへの対応をはじめ、プロモーション活動においても顧客対応の善し悪しはユーザーからの評価材料になります。また、顧客と良好な関係を構築・維持する取り組みにおいても顧客対応が重要になることを理解しておかなければなりません。
問い合わせなどへの応対業務
コールセンターやコンタクトセンターなどにおける、顧客から寄せられる問い合わせへの対応業務では、高い品質が求められます。商品の使い方やサービスに関する疑問などは、丁寧に分かりやすく説明することで顧客満足度の向上につながり、企業によいイメージも抱いてもらえます。
受注業務にも高品質な対応力が求められます。顧客が希望する商品やサービスを正しくヒアリングし、受注処理を行う必要があるためです。また、顧客から寄せられるクレームに対しては、誤った対応をしてしまうと怒りに火を注ぎかねません。今の時代なら不適切なやりとりの内容をSNSにアップされてしまうリスクもあります。このようなリスクを避けるためにも、高品質な対応力が求められます。
販売促進などの営業活動
商品やサービスを販売するためのマーケティング・プロモーション活動などでも、適切な顧客対応が求められます。顧客に電話をかけて新商品を提案する、自宅へ訪問して新サービスを売り込むといった、アウトバウンド業務の成果を高めるのに、高度な顧客対応力が必要です。
自身が商品やサービスを購入する立場だと仮定します。商品やサービスの情報を余すことなく、丁寧に分かりやすく説明してくれる担当者と、何を質問しても曖昧な回答しかしてくれず、専門用語ばかりで説明が理解しにくい担当者、どちらから購入したいと考えるでしょうか。
顧客は商品やサービスに価値を見出すからこそ購入します。商品の魅力や特徴などを丁寧に分かりやすく説明してくれる、対応力に優れた担当者の説明は商品の売上において重要な役割を果たします。
顧客との関係構築・ロイヤリティ醸成
企業が安定した利益を継続的に得るには、顧客と良好な関係を構築しなくてはなりません。顧客と良好な関係を構築できれば、企業への愛着を抱いてもらえ、末永く商品やサービスの購入を続けてくれる可能性があります。
そのためには、魅力的な商品やサービスを提供することはもちろん、高品質な顧客対応も必要です。商品を売ったら売りっぱなしにするのではなく、定期的にコンタクトをとって、不満はないか、問題が発生していないかなどを確認しなくてはなりません。
商品を売るときは熱心にアプローチしていたにもかかわらず、売ったあとに連絡してこなくなった担当者と、購入後もこまめにフォローをしてくれる担当者、どちらによい印象を抱くかは明白です。企業全体で顧客対応の品質を高めれば、他社との差別化につながり、効率よく顧客ロイヤルティも醸成できます。
顧客対応力向上につながるスキルアップの方法
漠然と日々の業務を遂行しているだけでは、顧客対応力は向上しません。専門的な知識を身につける努力をし、顧客志向の考え方を意識することが大切です。また、迅速な対応ができるよう環境や体制の整備も必要です。
専門的な知識を増やす
自社の属している業界や扱っている商品、サービスに関する専門的な知識を増やすのは、対応力強化に有効です。顧客からのさまざまな質問に淀みなく答えられるため、信頼を勝ち取り購入につながります。
顧客は、より信頼できる担当者から商品やサービスを購入したいと考えます。特に、高額な商品やサービスであればなおさらです。専門的な知識が豊富で、何を質問してもスムーズに答えてくれる担当者なら、顧客は安心できます。
専門的な知識を増やすには、読書やインターネット上でのリサーチが有効です。ただ、インターネット上の情報は玉石混交であるため、過信は禁物です。外部のセミナーや勉強会などへ参加するのもひとつの手です。
顧客志向を意識する
顧客志向とは、言い換えれば顧客第一主義です。自社の利益ではなく、顧客の考えや要望を最優先する考え方を指します。このような考え方が身についていれば、顧客からの信頼獲得につながります。
顧客の視点で考えると分かりやすいかもしれません。高価な商品を一心不乱にすすめてくる担当者よりも、「〇〇さんのお話を聞く限り、こちらの商品の方がより安価で、ご要望にも添えるのでおすすめです」と提案してくれる担当者のほうが信頼でき、この人から購入したいと考えるはずです。
属する組織の利益を考えるのは、従業員として当然です。ただ、だからといって自社の利益を第一とする言動をしてしまうと、顧客に見透かされ逃げられかねません。顧客ニーズを優先する姿勢を貫くことが、自社の利益につながることもあります。
対応スピードを上げる
速やかに対応することで、顧客に安心と信頼感を与えられます。メールで相談してから3日以上経つのにまったく返信がない企業より、その日のうちに対応してくれる企業のほうが好感をもたれやすいです。
対応スピードを上げるには、速やかな対応を可能にする環境や体制の構築が必須です。たとえば、回答のテンプレートを用意しておけば、その都度メッセージを作成しなくてよいため、スピーディーな対応ができます。チームで速やかに情報共有を行える体制を構築したり、顧客管理システムやビジネスチャットツールなどを導入することもおすすめです。
速やかな対応が顧客満足度の向上につながるのは、ある調査資料からも明らかです。株式会社PR TIMESが実施した調査によれば、1時間以内の対応であれば早いと感じる人が49.8%なのに対し、1時間をすぎると34.4%に下がるとの結果になりました。つまり、顧客満足度向上のためには、1時間以内の対応が必要と考えられます。
【「お問い合わせ」調査】お問い合わせ回答時間、我慢の限界は「24時間以内」70.5%、顧客満足度向上のカギは回答まで「1時間以内」
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000862.000000112.html
3つのシーン別にみる顧客対応のポイント
電話での顧客対応のポイント
電話での顧客対応は、受話器をとるまでの時間も重要です。コール音は鳴っているのに、いつまで経っても電話に出てくれないと顧客はイライラしてしまいます。顧客にストレスを与えないためにも、電話はなるべく早く、できれば3コール以内に出ましょう。
相手がきちんと聞きとれるよう、ハキハキと話すことも大切です。電話での会話は、相手の口がどう動いているか分からないため、聴覚のみが頼りです。モゴモゴと話したり、声が小さかったりすると、顧客が話を聞きとれずストレスを与えてしまいます。
また、会話が終わったあとは、先に電話を切らないよう注意しましょう。ビジネスの世界では、顧客が電話を切ったのを確認してから受話器を戻すのがマナーとされています。用件が済んだからといって、こちらからすぐ電話を切ってしまうと、顧客に不快感を抱かせてしまうかもしれません。
メールでの顧客対応のポイント
メールでの対応も、顧客をなるべく待たせないことを意識しましょう。基本的には、24時間以内の返信を心がけます。早ければ早いほど対応が迅速であると評価してもらえる可能性があるため、なるべく早めに返信しましょう。
スピーディーな返信を実現するには、テンプレートの活用が有効です。テンプレートを用意しておけば、宛先や日時を変えるだけですぐに送信できます。
返信漏れや重複対応の発生にも注意が必要です。クレームの発生につながるため、これらのリスクを回避できるチェック体制の整備が求められます。すでに対応済みなのに、ほかの従業員が知らずに二度目の返信をしてしまった、といったことが起こりかねないため、チーム内での情報共有も的確に行いましょう。
クレーム時の顧客対応のポイント
クレーム対応では、まずしっかりと謝罪することが大切です。なかには、いきなりケンカ腰で怒鳴りつけてくるような人もいますが、こちらも同じように熱くなってはいけません。落ち着いて会話できるように、まずは謝罪して相手をクールダウンさせ、そこからヒアリングを始めましょう。
ヒアリングした内容に基づき、事実確認を行います。事実を正確に把握することで、なぜ問題が発生したのか、今後どうするべきかが見えてきます。
クレームの内容を精査したうえで、解決策を提案しましょう。提案した解決策や代替案で納得してくれないケースも考えられるため、その場合には上司に相談してください。顧客によっては、過度な要求をしてくる可能性がありますが、応じてしまうと悪い前例を作ってしまいます。あまりにも過度な要求には、毅然とした対応が求められる場合もあるため注意しましょう。
顧客対応が上手い人の特徴
顧客対応を強化するため、社内で人選を進めたい、社外から新たに人材を採用したいといった企業もあるかもしれません。顧客対応が上手な人の特徴を把握しておくと、スムーズに人選を進められます。
論理的思考に基づいて対応できる
論理的思考ができる人は、問題を解決するのに何が必要なのか、道筋を立てて考えられます。そのため、顧客からの問い合わせやクレームにも、根拠を示しつつ適切な解決策を提示できます。
特に、クレーム対応では論理的思考力が欠かせません。顧客が何に対し不満を抱いているのか、何を求めているのかを話のなかから正確に判断し、最適解を導き出す必要があります。
また、顧客に新商品やサービスを提案するときにも、論理的思考が役立ちます。新商品やサービスにどういった特徴、魅力があるのかを分かりやすく解説し、購入することでどのようなメリットを得られるのかについても説明できるからです。
冷静かつ基本に沿った対応ができる
顧客対応では冷静さが求められます。感情的になってしまうと、相手の意図を正しく把握できません。なぜ怒っているのか、何をしてほしいのかが理解できず、余計に顧客を怒らせてしまうおそれがあります。
クレーム対応では、罵詈雑言を投げかけられるケースも少なくありません。一方的に辛辣な言葉を投げかけられるとつい反論したくなるかもしれませんが、これはNGです。熱くなってしまうと、余計に顧客を怒らせてしまうばかりか、やりとりの様子をSNSに晒されるといったリスクも発生します。
場合によっては組織としての信頼も失いかねないため、顧客対応の担当者には冷静かつ社内ルールに沿った対応が求められます。
顧客ニーズ・サービスへの理解度が高い
顧客対応において、顧客ニーズを正確に把握する能力は重要です。顧客のニーズを正確に把握できないことには、最適なアプローチができず売上にもつながりません。会話のなかから顧客が真に何を求めているのかを把握できる人材であれば、最適なセールスにつながり売上や利益の向上を実現できます。
また、自社サービスへの理解も欠かせません。自社サービスへの理解が少ないと、顧客にサービスの魅力や特徴などを正確に伝えられず、購入にもつながりません。日ごろから自社サービスについて勉強を惜しまず、顧客に対し特徴や魅力を余すことなく伝えられる人材は貴重です。
顧客対応力強化を目指すための社内整備のコツ
顧客対応力の強化を目指すのであれば、個々の従業員に成長を促すだけでなく、社内整備も進めなくてはなりません。ナレッジを共有できる環境や顧客データ基盤の構築、顧客接点を増やす取り組みなどが顧客対応力強化に有効です。
社内でのナレッジ管理を徹底する
適切にナレッジ管理を行える環境や体制の構築を進めましょう。おすすめなのは、ナレッジ共有ツールの導入です。ナレッジ共有ツールを導入すれば、顧客対応に関するノウハウを蓄積、共有できるため、対応業務を担当するすべての従業員がノウハウを活用できます。
ツールを活用して、ノウハウを共有できるようになれば、顧客対応品質のばらつきも抑えられます。また、理想的な顧客対応をしている従業員のノウハウをモデルケースとして共有することで、すべての従業員が高品質な対応を行えるのも魅力です。
共有のルールに関しても決めておきましょう。ルールがないと、必要ない情報が共有されたり、共有すべき情報が漏れたりといったことが起こりかねません。また、ツールの導入にあたっては、機能性だけでなく操作性やコスト面も吟味したうえで検討を進めましょう。
顧客全体像を把握できる体制を目指す
個々の顧客に対し適切な対応をするには、顧客全体像を把握できる仕組みが必要です。顧客の全体像を正確に把握していれば、過去の行動や現在の状況といった情報を踏まえたうえで、最適な提案を行えます。
これを実現するには、360°ビューに基づく考えが必要です。360°ビューとは、どの方角にも死角がなくすべてを見渡せる状況を意味します。顧客に関するありとあらゆる情報を集約し、紐づけた状態です。
顧客に関する情報を収集しても、サイロ化しては意味がありません。データがサイロ化すると活用できず、生産性の低下も招きます。サイロ化しない顧客データ基盤を構築したうえで、顧客に関するあらゆる情報を収集・連携させることが大切です。
顧客接点を増やす取り組みをする
顧客接点を増やすことで、顧客ニーズを把握しやすくなるメリットがあります。顧客のニーズを把握するには、顧客と接する機会を増やさなくてはなりません。店舗での対応や顧客のもとへ訪問する以外にも、DMやメルマガ、SNS、Webサイト、ウェビナーなど、接点を増やせばニーズを把握しやすくなり、結果的に顧客対応力を強化できます。
近年は、さまざまな業界でマルチチャネル化が進んでいます。複数チャネルの運用によって顧客との接点が増え、商品やサービスを販売するチャンスが増えるのもメリットです。また、近年では顧客接点と顧客情報、商品や受注、在庫情報などを統合して顧客へアプローチするオムニチャネル戦略にも注目が集まっています。
オムニチャネル化によって、よりユーザビリティの高いサービスの提供が可能です。顧客はシームレスな購買体験ができ、顧客満足度も向上します。顧客は各チャネルを横断してサービスを受けられることから、企業は機会損失を回避しやすくなるメリットも生まれます。
まとめ
商品やサービスの質が高くても、顧客対応のクオリティが低いと企業の評価も下がります。他社と差別化を図り、市場における優位性を確立するためにも、顧客対応力の強化が求められます。
顧客対応力を強化するには、オペレーターのスキルアップが必要です。加えて、組織ぐるみで対応力の強化につながる環境や体制の構築を進めていくことも大切です。