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マルチチャネルとは?オムニチャネルとの違いやメリットも解説

マルチチャネルでは、ECサイトや実店舗、SNSなど、多くのチャネルを持つことで、集客力のアップや販売機会の増加などが期待できます。本記事では、マルチチャネルが企業にもたらすメリットやデメリット、さらにオムニチャネルとの違いについて解説します。

マルチチャネルとは?

マーケティング戦略におけるマルチチャネルとはどのようなものかを解説します。

そもそもチャネルとは

チャネルは、「集客に利用する媒体、流入経路」または「それにかかわる組織・業者」を指す言葉です。具体例としては、実店舗、ECサイト、コーポレートサイト(企業の公式サイト)、SNSなどが挙げられます。

企業が利益を得るには集客が欠かせません。より多くの利益を得るには集客力を高めなくてはならず、そのためには流入経路を増やして、販売に結び付くようなアクションを起こすことが大切です。たとえば、実店舗運営だけでなく、ECサイトでも販売を行う、Web広告から新規顧客を呼び込む、などのアクションを起こすことで、利益拡大が期待できます。

なお、チャネルは「販売チャネル」「流通チャネル」「コミュニケーションチャネル」の3つに分類できます。販売チャネルとは、商品やサービスを販売するための場所や方法のことで、実店舗やECサイト、さらに訪問販売や電話営業、マスメディア、テレビショッピングなどが該当します。流通チャネルは、商品やサービスが顧客に届くまでの経路のことで、商品の輸送を担う運送会社や卸売りを担当する卸売業者などを指します。そしてコミュニケーションチャネルは、顧客へ商品やサービスの情報を発信するための伝達経路のことで、SNS、メール、Webサイト・広告、テレビCM、ラジオ、キャンペーン、コーポレートサイトなどが該当します。

マルチチャネルのポイント

マルチチャネルとは、さまざまなチャネルがある状態のことです。実店舗やECサイト、コーポレートサイトなどのチャネルを活用し、自社の商品やサービスの情報を積極的に発信して、利益の拡大につなげます。

たとえば、「実店舗で商品を販売しながら、ECサイトでもオンライン通販を行う」「ECサイトでオンライン販売を行いつつ、カタログ通販も実施する」といったように、一般的に販売活動を行うチャネルを2つ以上持っている状態を「マルチチャネル」と呼びます。

このように多数のチャネルを運用することは、機会損失の防止に役立ちます。仮にSNSやコーポレートサイトで新商品の告知を行っても、インターネットを利用しない層には届きません。しかし、SNSやコーポレートサイト以外にも、DMやチラシなどのオフラインの媒体を活用すれば、インターネットを利用しない層にも情報を届けられ、機会損失を最小限に抑えられます。

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マルチチャネルのメリット

 顧客との接触する機会が増える

マルチチャネル化によって、顧客との接点が増えるのは企業にとって大きな利点です。各チャネルで顧客との接点が増え、より多くの顧客に情報を届けられたら、既存客にリピートしてもらいやすくなるだけでなく、新規顧客の獲得にもつながります。

たとえば、実店舗販売が中心の企業では、店舗の存在を知っている顧客のみとしか出会えませんでした。しかし、マルチチャネル化することでこれまで自社と縁がなかった顧客とも接点が持てるため、新規顧客獲得に貢献できます。

また、対面とオンラインのチャネルを上手に組み合すことで、さまざまな顧客に対して多角的にアプローチができるため、売上、利益拡大も期待できます。

顧客のより詳細な分析が可能になる

マルチチャネルではチャネルがそれぞれ独立しているため、顧客の購買行動を媒体ごとに細かく分析でき、それぞれの媒体に適した効果的な訴求が可能です。

たとえば、実店舗における顧客の行動を分析した結果、毎週月曜日の15~17時頃に来店が集中していることがわかったとしましょう。そこでこの分析結果をもとに、月曜日の15~17時により魅力的な商品を充実させる、従業員を普段より多く配置して接客品質を高める、といった施策を実行できるため、売上アップや顧客満足度向上が期待できます。また、ECサイトでも同様に分析から導き出したアクセスの多い日時にキャンペーンを実施することで売上アップに貢献できます。

マルチチャネルのデメリット

顧客情報に関する連携が困難になりやすい

マルチチャネルは、各チャネルで顧客情報を管理・運用しているため、チャネルをまたいでの情報共有や連携がしにくいのが難点です。

たとえば、顧客の情報が共有・連携されていないと、顧客はチャネルごとに個人情報やクレジットカード情報を登録しなければならず、購入ポイントがある場合も実店舗とECサイトでそれぞれ購入ポイントをためなければなりません。

また、顧客の情報が企業内で共有・連携されていないと、メールでクレームが入った後に電話でも問い合わせがあった場合、再度顧客に対してクレームの内容を聞く必要があり、顧客に不満を抱かせるだけでなく、業務面でも不便です。

在庫管理が困難になりやすい

チャネルが独立していることで、全体での在庫管理が困難になりやすいのも問題です。マルチチャネルでは、「ECサイトで売り切れだった商品が、実店舗にはまだある」「実店舗は売り切れだが、ECサイトには在庫が残っている」といった状況が起こる可能性があります。

適正な在庫管理ができないと、売り損じによって売上に影響が出てしまうだけでなく、企業としての信頼を失い、他社に顧客をとられる原因にもなりかねません。

コストがかかりやすい

運用するチャネルが増えるほど、コストも増大します。多数のチャネルを活用するということは、導入コストをはじめ、維持するために人件費や管理費、広告費などがかかります。

たとえば、新たにECサイトを開設したとしましょう。この場合、ECサイトへ集客するための仕組みが必要であるため、SEOやWeb広告の出稿といった施策が求められます。また、SNSを利用するケースでは、定期的に情報を発信する人材が必要であり、SNS広告も活用するとなれば広告費用もかかります。

チャネルを増やせば顧客との接点が増えるため、販売機会が増加して売上や利益の拡大が望めるものの、維持するにはコストが増えるため、新しいチャネルに参入する際には、注意が必要です。売上は増えたが出費も増加し、それほどの利益は得られなかった、といったことにもなりかねません。

マルチチャネルが進化した「オムニチャネル」

マルチチャネルは、数多くのチャネルを持つことで顧客との接触機会を増やし、販売機会の増加が見込めますが、顧客や在庫の情報の共有・管理が難しいといったデメリットがあります。そこで近年、「クロスチャネル」や「オムニチャネル」に注目が集まっています。

クロスチャネルは多数のチャネルを持ちつつ、チャネルごとの情報が一元管理されている状態のことです。つまり、各媒体のデータが統合管理され、リアルタイムで更新もされるため、機会損失を最小限に抑えられ、より顧客満足度向上に貢献できます。

しかし、クロスチャネルは各チャネルが自立しているため、サービス内容がそれぞれの媒体で異なります。そこでさらに進化させたものがオムニチャネルです。

オムニチャネルは、すべてのチャネルを連結した状態のことで、顧客は媒体の違いを意識することなく、シームレスな購買体験ができます。たとえば、実店舗でためたポイントをECサイトでのショッピングに利用したり、ECサイトで注文した商品を店舗で受け取ったりといったことができます。

クロスチャネルに比べてチャネルが統合されたことで、企業は一貫したサービスの提供ができ、顧客はひとつのブランドとして認識しやすくなるため、顧客ロイヤリティを高める効果が期待できます。

なお、オムニチャネルについてより詳しく知りたい方は、以下の記事へアクセスしてみてください。

オムニチャネルが実現すると

オムニチャネル化に興味を抱いたものの、実際どのようなことが実現できるのかイメージが湧かない方もいるのではないでしょうか。オムニチャネル化により、以下のようなことが実現できます。

顧客情報の統合

オムニチャネルはマルチチャネルと異なり、顧客情報を一元管理・共有できます。また、集めた顧客情報を細かく分析できるため、顧客満足度の向上やファンの創出に役立ちます。

たとえば、顧客の属性や直近の来店日時、これまで自社に費やした金額など、さまざまなチャネルから得られた情報を一カ所に集約し、どのような商品を好む傾向にあるのか、どれくらいの価格帯なら購入しそうか、といったことまで細かく分析できるため、より顧客の心に響く効果的なアプローチが打てます。

さらに顧客情報を統合することで「誕生日の1カ月前にメールでお得なクーポンをプレゼントする」「購入につながりそうな商品を提案する」といったこともできるため、集客力の強化やリピーターの獲得にもつながります。

ただし、顧客情報の一元管理・共有には、徹底したセキュリティ対策が欠かせません。万が一、個人情報が外部へ流出したとなれば、企業としての信頼は地に落ちます。そのため、オムニチャネルを実現するためには、安全に情報を運用・管理できる体制や環境の構築が必須です。

商品情報の統合

近年、SNSやアプリなど顧客との接点であるチャネルがどんどん増加しています。顧客はその中から商品の情報を入手するため、どのチャネルでも一定量の情報を提供できるようにしておかなければなりません。

たとえば、「コーポレートサイトに記載されている商品情報は充実しているのに、ECサイトでは十分な説明がない」「ECサイトには商品の写真が掲載されているのに、アプリはテキスト情報しかない」といったことがないようにしなくてはなりません。

このような商品情報は、商品番号や商品名といった基本的な「スペック」をはじめ、ブランドやメーカー、価格帯がわかる「カテゴリー」、商品の写真や動画などが該当します。

オムニチャネルでは、商品製造の際に必要な情報や購入時に必要な商品情報などをプラットフォームで一元管理でき、さらにどのチャネルからでも同じ情報を顧客に提供できるため、どのチャネルを利用しても一貫した情報が手に入ります。

受注・在庫情報の統合

オムニチャネルでは、実店舗やECサイト、アプリなどでの受注数や在庫情報を一元管理できるため、担当者の作業負担軽減につながります。

複数の販売窓口があるにもかかわらず、在庫情報を一元管理できないマルチチャネルでは、「実店舗に在庫があるのに、ECサイトには在庫がない」「ECサイトの画面では売り切れなのに、実店舗に在庫がある」といった状況が発生しやすく、注文のたびにほかのチャネルの在庫数を確認しなければならないなど、余計な手間がかかっていました。

しかし、オムニチャネルであれば受注や在庫の情報をリアルタイムで一元管理できるため、スピーディに状況を確認でき、作業負担の大幅な軽減が可能です。また、本来売れるはずだった商品が売れ残り、利益につながらないといった機会損失も減らせます。

オムニチャネルの実現を阻害する「サイロ化」

そもそもサイロとは、飼料などを貯蔵する貯蔵庫のことです。多くの場合、立ち並んで建てられますが、それぞれ独立した貯蔵庫になっています。このような状態から、企業内の部署やシステムなどが企業内のほかの部署やシステムと連携されず、独立した状態のことを「サイロ化」と呼びます。

システムやデータがサイロ化すると、さまざまな弊害が生じます。たとえば、顧客満足度の低下です。顧客情報がサイロ化している場合、必要なデータを取得するのに多大な時間を要し、顧客を長時間待たせてしまうおそれがあります。また、顧客情報が別部署などで更新されても、情報が共有されないため、古くなっていることに気づかずにそのまま使用し、クレーム問題に発展するかもしれません。

さらにサイロ化は、生産性の低下を招くおそれがあります。システムやデータが組織内で分断されて管理されている場合、データの収集に膨大な時間と手間がかかるため、組織全体の生産性が低下します。しかも、従業員は情報共有されていれば必要なかった無駄な作業に時間をとられるため、従業員のモチベーション低下にもつながります。

ほかにもデータの一元管理・共有が難しいサイロ化のままでは、国が推進している「DX(デジタルトランスフォーメーション)」の実現が難しく、市場変化のスピードが加速している昨今において、経営の意思決定も遅れやすくなります。そのため、ビジネスチャンスを逃しやすくなり、市場競争から取り残される可能性もあります。

サイロ化が起こる主な原因は、他部署との連携を想定しておらず、自部署の業務に適したシステム構築を優先したためです。それ以外にも組織自体が縦割り構造である場合、サイロ化が起きやすいです。縦割り組織は、部署間で競争が発生しやすいため、生産性がアップする、専門性に優れたノウハウが集まりやすいなどのメリットがありますが、その一方で、部署間とコミュニケーションをとる機会が減り、さまざまな情報の共有がしにくくなります。

このようなサイロ化は、オムニチャネルの実現も阻害します。オムニチャネルは、各チャネルの情報を連携しないと実現しません。場合によっては同一チャネルでも拠点やブランドでサイロ化が進んでいることがあるため、注意が必要です。

各チャネルを包括的に管理する仕組みが重要

サイロ化を防ぎ、オムニチャネルを実現するには、各チャネルを包括的に管理できる仕組みを構築しなくてはなりません。そこでおすすめなのが「SAP Customer Experience」の導入です。

SAP Customer Experienceは、スムーズなカスタマーエクスペリエンスを実現するプラットフォームです。顧客情報をひとつのプラットフォームに集約して管理でき、顧客の全体像が把握できるため、個々の顧客に最適な提案を行えます。

また、SAP Customer Experienceを活用することで、新しいチャネルに参入したり、新しいビジネスチャンスを見つけたりした場合に、スピーディに拡張できます。

SAP Customer Experienceは、世界中のさまざまな企業が導入している実績豊富なソリューションです。カスタマーエクスペリエンスの向上や売上の拡大など、導入による成功事例も多いため、この機会に導入を検討してみてはいかがでしょうか。

まとめ

複数のチャネルを運用するマルチチャネルは、顧客接点の増加によって売上や利益の拡大が期待できます。ただし、マルチチャネルは、個々のチャネルが独立しているため、顧客情報の連携や在庫管理がしにくいのがデメリットです。

近年は、マルチチャネルよりも進化した、オムニチャネル化へとかじを切る企業が増加しつつあります。オムニチャネルであれば、マルチチャネルの弱い部分をカバーでき、各チャネルを横断したシームレスな購買体験を提供できます。マルチチャネルで利益を逃していると感じている場合には、本記事で紹介したソリューションの導入を視野に入れつつ、オムニチャネル化に取り組んでみてください。

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